表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/23

ステージ2『毒』(2話)

トスッ

それは音になるには小さすぎたが、受けた者はわずかな痛みを確かに感じた。


「――ッ」


足に虫に刺されたような痛みを感じ、ライラは声にならない声を出した。

痛みの元は小さな針。

倒された男が咄嗟に放った吹き矢から放たれたものだ。殺傷能力などないも等しい一本の細い針だったが、男は笑っていた。


「油断……したな……」


まだ意識(命)のあった者がライラに向かって不適な笑みでそう声をかけた。ダメージ的にもうすぐ自分の世界に戻されるだろう者の最後の悪あがき。


「その針には毒が塗ってある。……お前の命もあと1日だ」

「なっ!」


小さな針に仕組まれた罠にライラが目を見開く。当然あとの二人も息を詰まらせる。


「てめぇ!」


足に刺さるその針を地に捨て、ライラが倒れる者に掴みかかった。


「……くぅ……裏切り者には死を……」

「――!!」


胸倉を掴んで持ち上げれば、男はライラに「裏切り者」と言った。男はライラの素性を知っているのだろう、それを聞いたライラは唾を吐き捨てる。


「勘違いするな、俺が裏切ったのは、あの人だけだ」


天界を裏切ったのではなく、ただ一人の人物を裏切っただけだと言い切り、眉間に皺を寄せた。天界になど忠誠を誓ったことなど一度もないと、ライラは苛立ちを露にしたが、掴んでいた男の命が尽き、男は光と共に自分の世界へと転送された。


「ライラ!」

「ライたん」


ここでようやく2人が動く。


「上等だ」


まるで今消えた者にでも挑戦するかのように、ライラは口角を上げてニヤリと笑った。


ジジジ……


布を乱暴に引き裂く音がし、イズが毒を受けたライラの足の付け根をきつく縛る。


「応急処置にもならないとは思いますが」

「わりぃ」

「とにかくあまり動かないでくださいね。毒の回りが早まりますから」


冷静さを保つイズだが、その瞳はけして穏やかではない。それをわかってかライラは大人しくイズの言葉に従った。

今のところなんの異常も現れてはいないが、毒というのは徐々にその脅威を振るう。

それがわかっているだけに、イズは早く、早くと気持ちだけが先走りそうになるのを必死に抑えて冷静さを保った。


「村か町だねイズたん」


次にすべきことを見極め、ゼノが高い木に飛び登る。

少なくとも人が住んでいる場所なら、なにかしらの解毒剤がある。それを先読みしたゼノは1番高そうな木に登りそれを探す。


「イズたん! あっちに煙が見える」


地上にいるイズに大声を上げて叫んだゼノは、しっかりとその方向を頭に叩き込んだ。




◆◆◆

「すみませんっ」


めずらしく大声をあげて、少々乱暴に民家のドアを開けたイズが倒れこむように中に押し入る。

ゼノが見つけた煙の出所は野中に一軒だけの民家。


「誰だ!」


室内にいた老人が押し入るように入ってきた突然の訪問者に声をあげ、身構える。

本来ならばここできちんと名前を名乗り、挨拶くらいするのが常識ではあるが、ことは一刻を争い、イズにもゼノにもその余裕はなかった。


「毒を受けたの。なにか解毒剤はない?」


ゼノが老人に迫るように詰め寄る。


「毒?! 蛇にでも噛まれたか」

「……そんなところです」

「効くかどうかはわからんが今探してやるから、とにかくそいつをベッドに寝かせろ」


老人の好意に、イズとゼノの二人で抱えてきたライラをベッドに寝かす。

先ほどより顔色は悪く、全身からは大量の汗が噴き出ていた。

あれからどのくらい経ったのだろう。徐々にライラの身体を蝕んでいった毒はついに意識を奪い、今は荒い呼吸を繰り返し、うなされているかのようだった。

自分たちではどうすることもできないと、ゼノとイズはただライラを心配することしかできず、静かに傍に立つ。

そんな二人に老人から声が掛けられた。


「これを」


奥の部屋から戻ってきた老人は、小瓶を開けるとその中身をライラの口の中へと流し込んだ。


「……ゴホッ……ッ」

「頼むから飲んでくれ」


流し込まれる液体をライラは受け付けようとしない。咳き込むように吐き出してしまう。


「おじいさん、僕にかして」


無意識のまま薬を飲んでくれないライラに、ゼノが飲ませると老人から小瓶を受け取る。


「ライたん、ごめんね」

「ゼノ?」


小瓶を手にしたゼノが唐突に謝罪。そして薬をライラの口の中に強引に流し込んだあと、あごをもってその口を強引に塞ぎ、そのうえ鼻までしっかりと摘まむ。

しかもかなり長い時間。


「ンン――ッ、……ゴクン」


当然呼吸ができなくなったライラが、暴れながら口に入っていた薬を飲み込んだ。

確かに飲み込んだ音はした、けれどゼノは本当に飲んだのか不安になり、もうしばらく呼吸を止めていた。

口と鼻を塞がれ、呼吸困難に陥ったライラが生死をさまよいながらうっすらと瞳を開けば、ゼノが鼻を摘まんでいる姿が視界に入った。


「……うッ、はぁ、ぁ……ぜぇぜぇ、てめえはなにしやがる」

「だってライたんお薬飲んでくれないんだもん」

「オレを殺すきか!」


毒のせいで動くのも辛いはずなのだが、ライラはゼノの胸倉を意地でも掴むと、強引に引っ張った。

怒りは毒よりも強し?

そして、ゼノはとんでもないことを言い出す。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ