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ステージ4『涙雨』(17話)

◆◆◆

まだ薄暗い朝、レックは天界に戻ると言い、二人は一緒に店を出て再開を誓い別れた。

朝もやがたちこめる静かな林。

レックは地に両膝をついて地面を見下ろしていた。


「お前は、……本当に天界を敵に回しちまったんだな」


ここに来るまで、ライラを見つけるまでは裏切りなどないと信じていた。……だが、ライラは世界が生んだものを守りたいといい、共にいた。

その事実は紛れもない真実であり、天界の敵となったことをレックに確信させた。


「……信じてたのにな……でも、全然裏切られた気がしねぇ……ハハ……おかしいよな」


乾いた笑いを浮かべたレックは、両膝を崩して前かがみに突然その場にうずくまった。


「く……はぁ、まだだ。あと少しだけ俺を喰らうのは待ってくれ」


苦痛に顔を歪めレックはもがくように心臓あたりを必死に鷲掴む。

握りつぶされそうな心臓の痛みに、レックは必死に抗う。


「……ぐ、っ……頼む、あと少しだけ……」


荒い呼吸を繰り返しながら、苦痛を抑え込むように蹲るレックは、何かに訴えかけながらその痛みを抑える。

徐々に痛みが引いていき、なんとかやり過ごしたレックはその場で仰向けに倒れた。

もうすぐ夜明け。

深い青色の空にオレンジの光が溶け込む空を見上げて、


「ライ、お前を見世物、……罪人なんかにさせねえからな」


瞳に強い光を宿して、手を空へと伸ばす。


「俺が、……一緒にいてやるよ」


高い高い届かぬ空を掴むように、レックを伸ばした手で空を掴んだ。






──────

「聞いたかお前、裏切り者はライラ=トーズって話だぜ」


いつもと同じように食材を天上閣へ運んだレックは、帰り際に聞こえてきた言葉に耳を疑った。

とっさに物陰に隠れ耳を澄ます。


「それなら俺も聞いたぜ。ここは今その話で持ちきりだからな」


あまり大げさにできないのか、こそこそとその二人は声を潜めて話していた。


「まったく恩知らずにもほどがあるぜ」

「だからよ、あいつを捕まえたら公開処刑だって話だぜ」

「まてまて、俺が聞いたのは一生牢獄拷問暮らしだって話だったぞ」

「まっ、当然といえば当然だろう。なんってたって裏切り者だしな」

「ああ、どっちにしろ面白い見世物がみれそうだな」


騎士団のなかでやっかいもの扱いだったライラが、罰を受けるのがそんなに嬉しいのか、二人はにやにやと笑いながら職務に戻っていく。

その二人のうしろ姿でさえ視界に入らず、レックはその場を動けなくなった。


「なんだよそれ……。なんであいつが裏切り者なんだよ」


世界が生んだとされる者を偵察しにいく指名を与えられ、天界から間界に送り込まれただけ。

すぐに帰ってくるとレックに約束してライラはここを離れた。

ただそれだけだったはず。


「……お前は俺を裏切ったりしない。なあライ、俺は信じてもいいよな」


握りこぶしをぎゅっと固くつくり、歯を噛み締めながらレックは遠く離れてしまったライラに届かない問いかけをした。

答えなど返ってこない質問。

レックは信じると決め天上閣を飛び出した。






◆◆◆

「相変わらず木ばっかりだな」


ゼノ、ライラ、イズの3人は相も変わらず緑豊かな森を歩いていた。


「間界は自然豊かですからね、大陸のほとんどが森や林なんですよ」

「森ばっかりなの?」

「そうですね……他の世界と比べると断然多いですね。それよりも……」


さわさわと風に葉が揺れ、少し暗い森を眺めながら、イズは木々の合間から空を探してそう答える。


「それよりなにイズたん?」

「なんだか雲行きが怪しくなってきましたね」


やっと空を探せたイズが困った様子でゼノに返す。


「いっとくが、雨宿りできそうなところなんてねぇぞ」


次にイズが質問してくるだろう言葉を先読みしたライラは先に答える。

360度普通の森。洞窟らしきものなど見当たらない。

できることならずぶ濡れになるのはごめんだ。つまり次にやるべきことは一つしかない。


「走りますか?」

「名案だ」

「わぁ~い、かけっこ、かけっこ」


3人はなんとか次の町か村まで進もうと、勢いよく走りだそうとしたのだが、ここで思わぬ人物に引き止められた。


「待てよ」


森の奥から聞こえた聞き覚えのある声。


「ああっ~~レッたんだ」


姿を確認するなりゼノがおもいっきりはしゃいだ声をだして、近寄っていく。

レックはそのままゆっくりとゼノの隣を通り過ぎながら、ぽんっと軽く肩を叩く。


「あいつを変えたのはゼノくんだ。感謝してる……」

「レッたん?」

「お前のこと……俺も嫌いじゃない。だから邪魔すんなよ」


小さな、小さな声でゼノにだけ聞こえるようにレックはそう言うと、ゼノの隣を通過していく。

寂しく、悲しい笑顔をつくって。



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