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ステージ4『涙雨』(13話)

にぎやかで、華やかな大きな街。

ゼノ、ライラ、イズの3人は夕暮れ間近にこの街に辿り着いた。

もうすぐ夜。

宿の確保を一番にした3人は、次に食事ができそうな店を探しながら、人ごみのなかを歩いていた。


「よっ!」


不意に3人の目の前に現れた銀の髪の青年。

一番に反応したのはライラだった。


「レック! レックじゃねぇか」

「元気そうだなライ」


思わぬところで知り合いにあったライラは、レックの首に腕をまわし、じゃれあうように片腕で抱きしめた。


「ぃてて……おいライ、いてえって」

「あ、わりぃわりぃ、つい嬉しくてな」

「お前変わった?」


手荒な歓迎を受けたレックが、ライラの腕から逃れながら尋ねた。

一瞬なにを言われたのかわからなかったライラだったが、すぐに“いや、変わんねぇよ”と笑う。


「ねぇ、ねぇライたん、誰、誰?」


二人が知り合いだということがわかり、ゼノが紹介してくれとせがむ。


「オレのダチで、レックってんだ」

「はじめましてレックさん。ボクはイズといいます」

「僕はゼノだよ」


ライラが紹介すると、二人も軽く自己紹介をした。


「ゼノって、まさかゼノ=クロノム?」


さすがは天界人。ゼノの名前に反応を示した。

レックの反応に、イズはいつでも動けるよう、気づかれないように緊張の糸を張る。

だがその緊張の糸もすぐに解かれることとなった。


「こいつはただの逃げ足の速いお子様だ」


くしゃくしゃと頭を押さえながらライラがゼノをかまう。


「ぶぅぅ~~、僕お子様じゃないもん。ライたんこそオヤジのくせに」

「オヤジだ。オレのどこがオヤジなんだゼノ!」

「だって立ったり座ったりするとき『どっこいしょっ』って」

「言うか!」


その場で思いついたでたらめを言うゼノに、ライラの拳が炸裂。

そのままいつもの言い争いが始まり、レックはめずらしいものでも見るようにライラとゼノの漫才もどきをじっと見ていた。


「プッ……やっぱライ、お前変わったよ」

「どこがだ、レック」


二人の言い争いの合間を探し、レックがようやく声をかけた。

しかもレックは大笑いをしながら。


「クッ、ハハハ……とりあえず飯でも食い行こうぜ。まだなんだろライ」


道のど真ん中で大人げない言い争いするライラとゼノに、レックが夕食にしようと言った。

確かにお腹もすいてきた。

4人は近くにあったレストランへと場所を移動した。

もちろんここでもひと騒動あったが、食事が終わる頃にはそれも落ち着いていた。


「それにしても酒、つええなゼノくんは」


食事を終え大好きなお酒を飲むゼノに、レックが感心したように言う。


「レッたんも強いね」

「……レッたん?」


妙な語尾つきで名前を呼ばれレックが椅子から落ちそうになる。


「気にすんなレック。名前に“たん”をつけるのはこいつの癖だ」


すかさずフォローというか説明したライラに、レックは“なるほど”と納得する。

ライたん、イズたん、そういえばさっきから二人のことをそう呼んでいたからだ。


「おっ、この地酒上手いぜ、ゼノくん」

「あっほんとだ。このなんともいえない香りとちょっと甘いのもいいね」

「そうそう、この香り。ゼノくんは酒がわかってるね」


隣同士に並び、ゼノとレックはどんどんお酒をあけていく。

机の上にはすでに多種多彩な12本もの空瓶があった。


「お前らいい加減にしろよ。酒ってのは限度ってもんがな……」


少しづつゆっくりとお酒を楽しんでいたライラが、二人のペースを注意をする。

が、


「お酒は楽しく飲むの。ライたんみたいにオヤジくさく飲まないんだよぉ」

「そうだ、そうだ。オヤジくせぇぞライ。ここは一気に……飲む」


注意したライラに文句を言いながら、レックが持っていたグラスのお酒を一気にのどに流し込んだ。


「レッたん、かっくい~~い。僕もするぅ」


一気飲みに煽られ、ゼノもなみなみお酒の入ったグラスを手にした。


「おい!」

「ゼノッ!」


大ジョッキよりも大きいかもしれないグラスで、一気飲みをしたゼノに、思わずライラとイズが声をあげた。

あの量を一気飲みなんて無謀なことをいままで一度もしたことがないゼノの姿に、ぶっ倒れるんじゃないかと、ライラとイズは心臓が飛び跳ねるほど驚く。


「ぷはぁ~~」


だが、そんな二人の心配も知らず、ゼノはにんまり笑顔でレックに“どうだ”と言わんばかりに胸を張る。


「ヒュー、これは参ったな」

「へへ」


自分の勝ちを認めてもらい、ゼノは照れながら笑う。

しかし、ライラとイズは笑える状況ではなく、安心したのと同時に寿命が縮まった気がしていた。まともにぶっ倒れると思ったから。

さすがにあれだけ飲めば、酔いが回ってきておりレックの顔が真っ赤に染まり、瞳も虚ろ、呂律も回らなくなってくる。


「ゼォくん……は、おもしゅれーのぁ」


机に肩肘をついて、半ばうつぶせ状態でレックがゼノにふやけ顔をみせる。

普通、あれだけ飲めばレックのように酔っ払い完成なのだが、


「僕って面白いの?」


顔も赤くならず、会話もしっかりしていて、きちんと椅子に座り、あれだけ飲んでいるのにも関わらず、さらに酒を煽る男がここにいた。


「おもしゅれぇ~ぞぉ」

「んとね、僕よりもライたんの方が絶対面白いと思うけど」

「おもれーのライって?」

「うん。すぐ怒るし、迷子になるし、オヤジでボスザルだし……」



バシッ、ドカッ・・・・・



ゼノの発言にすかさずきつ~い拳が振り下ろされた。

……まっ、言うまでもないがそれをお見舞いしたのは当然ライラだ。



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