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ダンジョンサポーター  作者: Aramaki_mai
第四章 家へ戻る道
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第77話 同じ椅子

ダンジョンに潜る人たちの話です。

ライト文芸寄りのダークファンタジーです。


▼登場人物

エマ・ウォーカー     本小説の主人公

オスカー・ウォーカー   エマの弟

ローワン・ウォーカー   エマとオスカーの父 長らく行方が分からなかった

マルタ・リード      治療師 エマに治療を教えた

オルブライト・ケイン   白鹿のギルド長

ノル・ハーヴェイ     白鹿の探索隊長の一人

ニナ・クラーク      白鹿のギルド所属の前衛 エマの仲間

ガイ・ラザフォード    白鹿のギルド所属の前衛 特任契約者 実力者

ミレイ・アスター     白鹿のギルド所属の弓手援護 特任契約者 エルフ 


▼主人公について

白鹿のギルドで働く二十歳前後のサポーター。

元前衛だが、今は救護、素材回収、物資管理、食料と水の配分、退路確認などを担い、探索隊を生きて帰すために働いている。

白鹿の治療室には、夜明け前の匂いが残っていた。


酒精。薬草。血を吸った布。湯を張った桶。使い終えたスクロールの紙片。床は拭かれていたが、寝台の脚元や靴の縫い目には、白い石粉が薄く残っている。


エマは椅子に座らされていた。


座った覚えはある。けれど、自分で選んだ席ではなかった。マルタに肩を押され、リディアに外套を外され、気づけば膝の上に清い布を置かれていた。


使っていない布だった。


それを持たされていると、手が空いている気がしない。


「そこ、触るんじゃないよ」


マルタの声が飛んだ。


エマは自分の袖をつまんでいた指を止めた。


「汚れてます」


「汚れてるから触るなと言ってる」


「でも、ノルさんの手甲を」


「リディアが見てる」


マルタはガイの肩に布を当てたまま、こちらを向かなかった。


「今のあんたは、手を貸す側じゃない。手を貸される側にも戻りな」


エマは言い返しかけた。


その前に、視界の端でオスカーが動いた。


オスカーも椅子に座らされている。壁際の、灯りが直接当たらない場所だった。両足は床についていた。片方の靴底だけが、床を確かめるように何度か押されている。


杖は膝の横にある。


先に巻かれた布は、白い石粉と灰と血で固まっていた。館へ戻る道でも外さなかった。今も、そのままだ。


オスカーはエマではなく、治療室の棚を見ていた。


清潔な布の束。細い包帯。太い包帯。酒精の瓶。使い終えた布を入れる桶。走って持ってこられたらしい小箱が、棚の端に斜めに置かれている。


数えている顔だった。


エマは袖から指を離した。


リディアはノルの前に膝をつき、手甲の留め具を外していた。金具には、細い傷が入っている。針の先が当たった場所だけ、線のように削れていた。


「痛みは」


「押せばある」


ノルは短く答えた。


リディアは顔を上げた。


「押さなければ?」


「仕事には支障ない」


「仕事をさせるかどうかは、こちらで決めます」


ガイが寝台の上で笑いかけ、すぐに肩を押さえた。


「今のは俺でも怒られる言い方だな」


「あなたは喋ると血が増えます」


マルタが布を押さえ直す。


「増えてるのか?」


「増やしたいのかい」


「遠慮する」


ガイは素直に口を閉じた。


手甲の内側に、赤い点があった。


深い傷ではない。皮膚の表面が裂け、そこへ石粉が入りかけている。けれど、針だった。サイモンの針だ。


リディアは酒精を含ませた布で傷を拭った。ノルの指がわずかに曲がる。


「痺れは」


「ない」


「指を開いてください」


ノルは言われた通りにした。


「握って」


握る。


「反対の手も」


「そこまで見るのか」


「見ます」


リディアの声は硬くなかった。だからこそ、逆らう余地がなかった。


「ニナさんとエマさんが受けた毒を忘れていません。同じとは限りませんが、サイモンが持っていた針です。浅いから見なくていい、とはなりません」


ニナは隣の椅子で、頬に当てた布を押さえていた。六階層の毒を思い出したのか、左腕を胸の近くに寄せている。今回の傷は腕だけではない。手の甲、指、頬。どれも細いが、イレーネの刃は、残す場所を選ぶように入っていた。


ノルはそれ以上、急かさなかった。


リディアは傷を洗い、薄い布を当て、細い包帯を巻いた。


「今夜は様子を見ます。熱、吐き気、指の感覚の変化があれば、すぐに言ってください」


「ああ」


「本当に」


ノルはリディアを見た。


「言う」


それでようやく、リディアは手を離した。


マルタはガイの肩から赤く濡れた布を外し、桶へ落とした。重い音ではない。それでも、部屋にいた者たちの目が一度だけ集まる。


「骨は?」


エマが聞いた。


マルタは鼻を鳴らした。


「折れてたら、あんたの顔を見る前に怒鳴ってる」


「じゃあ」


「深い。だが、筋は切れてない。血も止まる。本人が余計なことをしなければね」


ガイは天井へ目を逃がした。


「余計なことの範囲が広いな」


「喋る、立つ、歩く、剣を振る、笑ってごまかす」


「ほぼ全部だ」


「そういうことだよ」


ミレイが短く笑った。笑ったあと、指を曲げようとして顔をしかめる。


「あなたもです」


リディアが言った。


「私は血は出てない」


「血だけが傷ではありません」


ミレイは返事の代わりに、壁へ立てかけた弓へ目をやった。弦を外して手入れをしたい顔だった。


ニナが頬の布を押さえ直す。


「短剣も、あとで見ます。鞘の中、石粉が入った音がしました」


「私も荷を」


エマが言いかけると、マルタの視線が飛んできた。


言葉はそこで切れた。


ガイが寝台の上から言った。


「荷は逃げない」


「傷は待ちません」


「こっちは待ってる」


「待たせたくない」


「なら、座ってろ」


軽口ではなかった。


エマは返す言葉を探したが、見つからなかった。


治療室の扉が開いた。


ケインが入ってきた。外套には、夜明け前の冷えた空気がついている。顔には疲れがある。けれど、歩き方は変わらない。彼が入ると、部屋の音が一段落ちた。


「処置は」


「死なせる傷はない」


マルタが答えた。


「ただし、動かすな。全員だ」


「分かった」


「分かった顔だけして、すぐ仕事の話を始めるんじゃないよ」


ケインは短く息を吐いた。


「先に釘を刺されたな」


「釘で済ませてやってる」


マルタはガイの肩の布を結び終え、軽く叩いた。ガイが声を出さずに顔だけ歪める。


ケインは治療室を見回した。


ノル。ガイ。ニナ。ミレイ。エマ。オスカー。


誰も欠けていない。


それを確かめる視線だった。


だが、空いた寝台の前で止まりはしなかった。止まれば、そこにいない人間を数えていると分かってしまう。ケインは、そういう見方を人前ではしない。


「監視所には伝えた」


ノルが包帯を巻かれた手を膝に置いたまま言った。


「封鎖は」


「続ける。領主側にも、白鹿の確認が終わるまで立ち入りを止めると通した。戻りの隊はいない」


「敵は」


「正面には出ていない」


ケインはそこで言葉を切った。


「抜けた道がある。あるいは、向こうだけが使える変わり道をまだ持っている」


ミレイが唇を噛んだ。


「逃がした」


「追えば、ここに並ぶ人数が減っていた」


ケインは責めなかった。


責められない方が、重いこともある。


エマは膝の布に目を落とした。


「白い扉の周辺は、白鹿が押さえる。神殿にも、領主にも、渡す情報は選ぶ」


「隠すんですか」


ニナが聞いた。


責める声ではない。けれど、飲み込めないものをそのまま置く声だった。


ケインはニナへ向き直った。


「全部を開けば、取りに来る者が増える」


「でも、隠せば」


「白鹿だけが握ることになる」


ニナは布を握った。


ケインは続けた。


「きれいな答えはない。だから記録は残す。名も、場所も、使ったものも、失ったものも。隠すことと、なかったことにするのは違う」


その言葉で、エマの指が布の端を握った。


ケインは小さな台へ歩いた。リディアが置いた帳面がある。治療記録ではない。白鹿の事故記録に使うものだ。表紙は古く、角が擦れていた。


「ローワンの件も、白鹿で記録する」


部屋の空気が、浅く変わった。


オスカーが棚から目を戻す。


ケインは筆を取り、インクに浸し、余分な黒を瓶の縁で落とした。紙の上で筆先が止まる。


「名を、空欄にはしない」


エマは帳面を見た。


空欄。


ローワンがいなかった年月。母の死。神殿。白骸晶。落ちた穴。冷たい手。寝台のそばに転がっていた、濁った白い石。


許していない。


それはまだ、どこにも行っていない。


遅すぎたとも思う。勝手だとも思う。戻ってきて、また置いていったとも思う。


それでも、空欄ではなかった。


エマは唇を開いた。


声はすぐに出なかった。


オスカーの手が、杖の柄に触れる。革が小さく軋んだ。


エマは紙を見たまま言った。


「ローワン・ウォーカー」


ケインの筆が動いた。


黒い文字が、白い紙の上に置かれる。


それだけだった。


リディアが使い終えた包帯を桶へ入れた。マルタは何も言わない。ノルも、ガイも、ニナも、ミレイも、書かれた名を見ていた。


オスカーは立ち上がろうとして、途中でやめた。


止めたのはエマではない。


自分だった。


彼は椅子に座り直し、棚へ向き直った。


「清潔な布が足りません」


唐突な言葉だった。


マルタが眉を上げる。


「何だって?」


「細い包帯もです。ノルさんの手と、ニナさんの指でだいぶ使いました。ガイさんの肩に太い布を回すなら、次に残る分が薄い。酒精も、一本ほとんど空です」


エマはオスカーへ目を向けた。


彼は気まずそうに口元を引いた。


「見えたので」


マルタは呆れたように棚を確認した。


それから、舌打ちした。


「合ってるじゃないか」


ガイが寝台の上で言う。


「ウォーカー家は、座ってても働くのか」


「働いてません。数えただけです」


「それ、うちでは働いたことになる」


「では、賃金をください」


ガイが笑った。肩を揺らさないよう、顔だけで。


ミレイが言った。


「生意気ね」


「褒めてませんよね」


「半分くらい」


「残りは」


「あとで考える」


ニナが頬の布を押さえたまま、かすかに笑った。


エマは立ち上がりかける。


「補充なら私が」


「座ってな」


マルタの声が飛ぶ。


「でも」


「今のは、あんたに言ったんじゃない」


マルタはオスカーを見た。


「そこの目のいい弟。数えるだけなら続けな。運ぶのは別のやつにやらせる」


オスカーは戸惑った。


「僕が?」


「棚を見たのはあんただろ。足りないものを言え。紙に書くのはピップでも誰でも呼ぶ」


オスカーはエマを見た。


エマは、休んで、と言いかけた。


無理しないで。


今日はもういい。


いくつも浮かんだ。どれも間違いではない。けれど、全部出せば、またオスカーを椅子へ縫いつける気がした。


エマは別の言葉を選んだ。


「数えるだけ」


オスカーの目が揺れた。


すぐに、少し細くなる。


「立って運ぶな、という意味ですね」


「そういう意味」


「では、数えるだけにします」


その声は、台所で鍋を見ている時と似ていた。


火を強くしすぎたエマを止める時。塩の瓶を机の端へ移す時。帳面に豆と油を書き足す時。


白い扉の前ではなく、家の中で何度も聞いた声だった。


ケインはそのやり取りを見届けてから、オスカーの名を呼んだ。


「今日は記録係にはしない」


「分かっています」


「だが、見たものは後で聞く」


オスカーは杖の柄に指を置いた。


「はい」


ケインはそれ以上、何も言わなかった。


夜が薄くなり始めた頃、エマとオスカーは家へ戻された。


馬車ではなく、白鹿の小さな荷車だった。厚い布が敷かれ、揺れが少ないようにしてある。エマは歩くと言ったが、マルタに見られて黙った。オスカーも、歩けるとは言わなかった。言えば同じ顔をされると分かっていたのだろう。


通りには、まだ人が少ない。


市場の戸板は閉じている。魚屋の前に水は流れていない。豆屋の台も空だった。石畳の隙間には、夜の埃が残っている。朝の町は、昨日の騒ぎを知らない顔をしていた。


白鹿の見張りが二人、離れてついてくる。


家の前で荷車が止まった。


エマは先に降りようとして、足元を探した。差し出された手があった。


オスカーだった。


杖を片手に持ち、もう片方の手を出している。


エマはその手を見た。


借りるのが怖かった。借りれば、オスカーが本当に立っていると分かってしまう。分かってしまえば、別の怖さが来る。


それでも、エマは手を取った。


オスカーの手は温かかった。


強く引かれたわけではない。支えられただけだった。けれど、それで足は床を探せた。


「ありがとう」


「どういたしまして」


オスカーは視線を横へ逃がした。


「言われ慣れてません」


「私も言い慣れてない」


「そこは慣れてください」


「努力する」


「姉さんの努力は、信用が難しいです」


「ひどい」


「実績です」


家の扉を開けると、火の落ちた匂いがした。


台所は片づいていた。出かける前のままではない。ニナか、白鹿の見張りか、誰かが最低限整えてくれたのだろう。鍋は洗われ、伏せてある。棚には布が畳まれ、机の上には水の入った器が二つ置かれていた。


椅子は二つ。


それだけだった。


エマは玄関で足を止めた。


三つではなかった。


誰かが気を利かせて増やしたわけでもない。減らしたわけでもない。ここには、もともと二人で使ってきた椅子があった。


戻ってきた二人のための椅子。


戻らなかった人の椅子は、ここにはない。


オスカーは杖を壁に立てかけようとして、やめた。


椅子の横へ置く。


いつもの場所だった。


エマはそれを見てから聞いた。


「もう、なくても歩ける?」


聞き方を間違えた気がした。


けれど、オスカーは怒らなかった。


「歩けます」


そう答えた。


それから、杖の先に巻いた汚れた布へ目を落とす。


「でも、捨てません」


エマは理由を聞かなかった。


全部は分からない。分かった顔もしたくなかった。


ただ、頷いた。


「残していい」


オスカーは何も言わず、椅子に座った。杖を手元へ引く。床に置くと、鈍い音がした。乾いた石を打つ、いつもの高い音ではなかった。


「先を替えないと」


エマが言う。


「替えます」


「今?」


「今は、座ります」


「ならいい」


オスカーは自分で言った通り、座ったままだった。


エマも向かいに座る。


台所の窓から、薄い光が入っていた。夜明け前の光は弱く、机の傷を浅く見せている。ここで何度も食べた。喧嘩もした。言えないことを飲み込んだ。豆を煮た。塩を増やそうとして止められた。


何も変わっていないものがある。


何も同じではないものもある。


オスカーが机の上の器に触れた。


「湯、冷めてますね」


「飲める?」


「ぬるいです」


「ぬるいなら飲める」


「味の話ではありません」


「体に入れば同じ」


「それで何度、変な食べ方をしたと思ってるんですか」


エマは器を持った。


ぬるい湯だった。


喉を通る。味はない。けれど、酒精でも薬でもないものが体に入るだけで、家にいる気がした。


オスカーは棚へ目をやった。


「豆、あります」


エマの指が器の縁で止まった。


「あるの?」


「前に買った分です。袋の底に残してました」


「知らなかった」


「知っていたら、多めに使うでしょう」


「信用がない」


「ありますよ。別のところに」


エマは返せなかった。


オスカーはゆっくり立った。


エマの体が先に動きかける。


オスカーはその気配だけで、こちらを見た。


「台所までです」


「分かってる」


「顔が分かってません」


エマは椅子の縁を握った。


立たなかった。


オスカーは杖を取った。立つためというより、歩く音を自分で選ぶためのように見えた。巻かれた布のせいで、床を打つ音は鈍い。昨日までの乾いた音ではない。


それでも、音はあった。


一歩。


また一歩。


棚まで行き、豆の袋を取り出す。小さな袋だった。紐はきちんと結ばれている。オスカーはそれをほどき、器をもう一つ取った。


「明日、煮ます」


エマは机の向こうから聞いた。


「今日じゃなくて?」


「今日煮たら、途中で寝ます」


「私が見る」


「姉さんも寝ます」


「寝ないかも」


「寝てください」


オスカーは器に豆を入れ、水を注いだ。


豆が底で小さく鳴る。


ころ、ころ、と乾いた音がして、それから水の中で静かになった。


エマはその音を聞いていた。


市場の石畳に散った豆。


拾えなかった豆。


作れなかった煮込み。


帰りたくなかった日。


別の帰り方を差し出された日。


どれも消えてはいない。


それでも今、目の前の豆は、水に浸かっている。


明日、火にかけるために。


オスカーは器を棚の端へ置いた。落ちない場所。手が当たりにくい場所。エマが寝ぼけて塩と間違えない場所。


「そこ、遠くない?」


エマが言うと、オスカーは振り返った。


「姉さん用の配置です」


「私、そんなに信用ない?」


「あります。だから遠くに置きます」


「意味が分からない」


「分からなくていいです」


その声には、皮肉が戻っていた。


エマは笑えなかった。


でも、泣きもしなかった。


オスカーは椅子へ戻った。杖の先が床を打つ。布に包まれた鈍い音が、狭い台所に残る。


座る前、彼は杖の先を見た。


「あとで、布を外します」


「分かった」


「洗えるものは洗って、駄目なところは替えます」


「手伝う」


「では、一緒に」


言い合いになりかけて、そこで止まった。


オスカーは杖を膝の上に乗せた。


固まった白い粉を、無理に剥がさない。古い布で包み、端から湿らせる。灰と血と石粉が混じった汚れが、布へ移っていく。きれいには落ちない。


それでも、オスカーは手を止めなかった。


エマは、歩けるようになった足ではなく、その手を見ていた。


鍋の縁を拭く時。破れた袖を縫う時。帳面の角を直す時。暮らしが崩れないように、小さなところから整えていく手。


白い扉を押さえた手と、同じ手だった。


オスカーは杖の先を拭き終えると、布を畳んだ。汚れた面を内側にする。


「これは、あとで洗います」


「一緒に」


今度は、エマが先に言った。


オスカーは少し迷ってから、頷いた。


外の空が明るくなり始めていた。


朝の光が、机の傷をはっきり見せる。椅子の脚の古い擦れ跡も、棚の端の欠けたところも、杖の先から落ちた白い粉の粒も見えた。


オスカーは杖を椅子の横へ戻した。


乾いた音は、まだ戻らない。


布を巻かれた先が床に触れ、鈍く、小さく鳴った。


オスカーは、その音を消さなかった。



本作品は未完成な部分や表現に納得できない箇所が随所にあります。なので、随時修正します。

シナリオや展開を変えるつもりはありません。

ご容赦ください。

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