17話 告解 前半
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学校はあれから即座に動いたらしい。
どちらにしてもここの地域から離れて引っ越す予定だったので引っ越す前にけりが付きそうで安心する。
そんなこんなで緊張しているマディソンとその父親が、
今現在心底低姿勢で謝罪に来ているってわけ。
一応教師も付き添いでいる。
あの言葉は許されない言葉だったと認め、今現在は落ち込んでいるように見える。
「お嬢さんにとっては、ただの嫌がらせのつもりだったのかもしれません。ですが、私の娘はこの冬休み、実際に命が失われていく現場のログを、涙を流しながら一日何時間も翻訳し続けてきました。その献身を『ピザを食べながらやりがいを感じられるなんて羨ましい』の一言で片付けられた娘の絶望を、想像していただけますか?」
パパはデスクの上の、アンジェラが作った資料を指先でなぞりました。
ミラー氏は、恐縮した様子で本当に申し訳ない。と何度も目をしっかり合わせながら謝罪をしている。
「なんにも知らなくて、あんなこと言って本当にごめんなさい・・・・・。」
「・・・・べつにいいわよ。」
「あれから、じっくり先生にもカウンセラーにもパパにもママにも怒られたし叱らました。」
頭を下げるマディソンに父親のミラー氏も一緒に頭を下げている。
パパがログを広げ、見せ始めた。
「……マディソン。これが、アンジェラが『ピザを食べながら』見ていた現実だ。君には、これと同じものを読む勇気があるかな?」
大量の現地の詳細な言語が英語に訳された、感謝と悲鳴惨劇の嵐の記録。
凍り付いたように目を閉じれず読み進めるミラー親子。
サエは、凍りついたリビングのテーブルに、
温かい紅茶と少しのクッキーを置きました。そして、一番小さくなって
震えているマディソンの隣に、ゆっくりと腰を下ろしました。
「マディソン。……怖がらなくていいのよ。
レナードも私も、あなたを責め立てて追い詰めるために呼んだわけじゃないわ」
サエの声は、いつものように落ち着いていて、それでいて芯が通っていました。
マディソンが恐る恐る顔を上げると、サエは慈愛に満ちた、けれど少しだけ悲しそうな微笑みを浮かべていました。
「あなたはまだ14歳だものね。学校という小さな世界が全てで、友達と楽しく過ごすことが一番大切だった。……それは、本来ならとても幸せで、守られるべき日常よ。だからサマンサ先生も一緒に来てくださってるの。あなたの年齢で、アンジェラが見たような『世界の裏側の悲鳴』を知らないことは、罪でも何でもないわ」
サエはそっとマディソンの手に自分の手を重ねました。
「でもね。知らないことと、想像しないことは違うのよ。
……アンジェラは、その幸せな日常を少しだけ脇に置いて、
苦しんでいる誰かのために自分の心を開く道を選んだ。
――だからこそ、あなたの言葉に……『ただぬくぬくしているだけだ』と思われてしまったことに、自分の魂まで否定されたような悲しみを感じたの」
マディソンの目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「マディソン。世界は、あなたの学校よりもずぅっと広いの。
そこには、言葉も宗教も違うけれど、あなたと同じように家族を愛し、今この瞬間も泣いている人たちがいる。……今日、アンジェラが繋いだこの記録を読んだことで、あなたの世界も少しだけ広がったはずよ。……ねえ、アンジェラに謝れたことは、あなたが一つ『大人』になった証拠だと思わない?」
アンジェラは、サエの言葉を静かに聞いていました。
昨日までの刺々しい怒りが、母の柔らかな言葉によって溶かされ、ずっと思ってたことが口に出た。
「……マディソン。もういいよ。……わかってくれたなら、
・・・あなたの言ったことは私以外にはいってはいけない言葉だけど、
私には妥当だと思うし。」
私が小さくそう言うと、マディソンは「……ごめんなさい、ごめんなさい……っ」と、声を上げて泣き出した。
泣いているマディソンに私は罪悪感から言葉が出てしまった。
「最後にアチェを助けるのが無理だと判断したのはわたしなの。」
「判断した?」
予想外の奇妙な言葉に疑問顔で見つめてきたミラー親子とサマンサ先生。
「12月24日どころかもっと前からわかってたし、知ってた。
インドネシアの所得額じゃ災害が来るってわかってても、
逃げられない可能性が非常に高い。
そう理由づけてフィールドワークに出向かなかったわ、知ってた?
マディソン?来航費と滞在費足しても私の数か月分のお小遣いなの。
本当はもっと全力をつくすべきだった・・・。」
「?そんなにもランドールさんの家はお小遣いが多いんですか?」
思わずと言った顔で、サマンサ先生が問いかける。
それに対して、軽く頷くことで両親か返した。
「アンジェラ・・・あなたのお小遣いは月1000ドル。
確かに数か月分貯めていれば滞在にはたりているが、だからと言ってフィールドワークで被災地候補を巡るのは違うでしょ?」
「そうだぞアンジェラ、君は14歳の中学生だ。
子どもが責任を持つことじゃない。?散々話し合ったじゃないか?危険な場所にはいかせられない、見たことのない他人よりも私は家族が大事だ。君が大事なんだ。いいか?歳は関係ない!君が大人になってても、現地に行くと言えば止める!なぜ命の危険があるとわかっている場所に送りたがる親がいると思う!パスポート申請だってだから却下したんだ!!」
パパがそっと手を肩に置いてハグをされる。
パパの気持ちもよく分かる。だって、私もそうだから。
だけど知ってたのは私たちだけだったんだからどうにかしなければならなかった。
「何度も何度もシュミレートしたわっ!でもどこにもなかった、
逃げられる場所なんかは建築の問題で横揺れや、津波の力には無抵抗な建物ばかり、バリ島のようにプーケットのように高級リゾート地ですらなかった。
どこにも・・・なかった。」
「確かに、インフラや情報、
そして土地のひらけた海岸から直撃することが容易に判断できる地形だった。」
パパが補強してくれた。だから判断した。
地図にシュミレートされて塗られていく海の青色の蛍光ペンの色。
ドンドン陸地が浸食されていく状況。
ボランティア活動の中で現地の状況を表すプッシュピンセットの色。
救助か死亡が100を超えると赤いピンから白のピンに変え、1000人死亡か救助にかわると透明に。
一人二人、じゃないあのなん百というピンのランクが変わるたび、みんなの視線がボードに向かった。
白のピンが透明に変わる場所が無数に増えていくにつれ、廊下へ、休憩所に駆け出す人が多くなった。
すすり泣きをしながら、目をこすりながらタイピングしてた。本当は逃げ出したかった。
だけど、一人でも多くが助かってほしいと願い、打つ手はとめられなかった。
祈り続けてた。
だけどだめだったの。
「だから、見捨てたの。
壊滅するってわかってたけど、どうしようもなかった。」
「おぼれて、気絶してそのまま死ねた人は恐怖で凍らなかった分まだましな死に方かもしれない。逃げる場所もなく朝ごはんを食べている状態で建物に押しつぶされ、気絶も出来ないままに死ぬ直前まで意識を保ってた人もいるでしょう…。」
「何が起こったのかわからいまま亡くなる。そんな17万から18万の人間を見殺しにしたのは私だわ。」
一応、AIと相談してみたり、地図を確認しては見たんですがどうしても被害が出てしまうと納得するまでかなり時間がかかりました。
ハッピーエンドにはなかなかならないものだなと書いていてもどかしく思ったものです。




