15話デジタル・パスト
15話デジタル・パスト 意味は届かぬ過去 不通
休憩所には温かい湯気とともにシチューの香りと爽やかなスパイスの香りが漂っていた。
ニューオーリンズのヴィーガンとかでなく普通に食べられる人にはシチューを、野菜だけの豆入りのカレーはインドネシア諸国の宗教上お肉が難しい人にサンドイッチとセットで配ってくれた。
「温かい・・・・。」
「あなたのお名前は?どこから来たの?」
教授の夫人から穏やかに声をかけられ私は呆然と答えた。
「アイシャ・ヌルザマ、今回の地震のアチェの出身・・・・。おそらく家族は助から・・・ないです。生きてたら、パソコンのメールで必ず今の時間なら連絡があるもの・・・・・。正直母以外は大っ嫌いだったけど、母のことも涙が出てこなくて。」
薄情だが、本当にこころががらんとしてニュースを見ても涙が出てこない。
チャットに自分から情報を載せてそれからずっと情報を集めつつみてるけど、みつからない。
「・・・・・」
「このスパイスカレー、ほっとしますね。家の母親も甘くしたものにたくさんのスパイスを加えて鳥を焼くのが好きだったので。」
なぜか、遠い故郷の味を思い出す。
私の好きな. アヤム・タンカップ。
「・・・・・甘いの?塩味とかじゃなくて?」
普通に質問をされて思わず母の味付けを思い浮かべた。
「ええ、ココナッツウォーターを・・つかって、独特の、甘みが・・・・・もう食べられないのかぁ‥‥っふ。もっと、ごはん、作るの・・てつだっておけばよかった・・・・・っ」
本当、厳格な父親だけどいつも厳しい言葉の裏には私への愛情があったのを知ってる。
お父さんにも
「一度でいいから大好きって言っておくんだった‥‥っ!」
ペンダントを握りしめながらもプレゼントされたときの照れくささを思い出す。
反抗期っていう理由付けで邪険になんてしないで、もっと親孝行するんだった。
もらったペンダントだって、子どもっぽいって怒ってたけど大事にしてるよって伝えておけば、もっといっぱい、お母さんにもメールなりなんなりすれば――。
後悔に心を浸しているとフッと他の人の会話が入ってきた。
「こんなことなら掲示板やチャットで騒がれてた予言を信じてもっと言っておけばよかった。私は一応連絡して高台に散歩しに行ってッてお願いしたよ?そしたら家族はそうね、お散歩なら毎日その時間おばあちゃんがしてるから私たちもついていってみるわって・・・なのに!なんでまだ連絡が無いの?!」
予言?高台?
もしかして・・・・・知ってた?
「ディア、落ち着いて。もしかしたら電池が無くなってしまっただけかもしれないでしょ?高台に散歩しに行ってたんなら助かってるはずよ。」
コレットが一生懸命になだめている。
でもそんなことよりも、
「予言?掲示板って何?なんでもっと早く教えてくれなかったの!ディアあんたこの間一緒にご飯食べに行ったよね?なんで!?伝えてくれなかったの!!」
「嘘情報だと思ったんだもん!でも心配だったから散歩してってお願いしたの・・・。」
「・・・・どんな情報だったの?」
「12月のはじめらへんからスマトラ沖地震の情報で・・・どこが被害に会うのか、地名が乗ってた。私の実家が、あるとこ。笑ってるやつらみんな人殺しだからなって!!だから頼んだのに!・・・・みんな波にのまれてたらどうしよ?」
震える声で、不安を口にするディア。
「やめてくれ!!俺だって心配だ!ニュースで流れてた!俺の故郷が瓦礫の山と津波で・・・・・・うぅっ。死者のカウントだって、追いつかない状態じゃないか‥‥なんでこんなとこにいるんだ俺?家にかえりたい。クラビーの青い海に戻りたい・・・・!!」
彼の故郷であるタイのクラビー、私の故郷と違ってすぐに海だったきがする。
でもそんな遠くまで?
インドネシアの場所からタイまで・・・・教授の世界地図を参考にするなら何百キロも離れてるのに。それでもあんな瓦礫の山になってる。
そしたら、私の故郷はどうなってるの?
「僕も戻りたい・・・・スリランカの農耕地なんだ・・・あそこは貧しいけれどみんなが必死に生活してる、勉強していっぱい働いて家族に楽をさせてあげたいんだ。約束したのに・・・・」
「たしか、アンパーライ?だったっけ・・・。お前の実家は。——高台とかすぐそばに山は?」
「ない・・・ないんだ。」
「!じゃあ、高層ビル・・・」
「僕の家は農地を持ってて、野菜を育ててる。ずっと――さきまで――田んぼばかりの美しい場所なんだ。・・・・すまない、もしかしたら近くのちょっと高い場所にある(仏教寺院)ヴィハーラに駆け込んでるかもしれないし、まだ――わからないよね。そうだ、僕の家族は信心深い・・・助かってるはずなんだ。」
ディヴィンダはスリランカの留学生、私と同じ苦学生なのよね。
インドネシアの中で学べることが限られていたから、私も援助や親の協力の元留学させてもらってたけど・・・。
「リヴァン・バギャ、君のところも地震の影響で大変かもしれない・・・けどネット環境が宝石商の仕事上整ってるだろう?なにか連絡はあったかい?」
ディヴィンダとリヴァンは同じスリランカだっけ?学んでる分野が違うから一緒にいるのは珍しい気がする。
というか今の言葉から察するにリヴァンの実家は宝石商を営んでるのね。
「僕も掲示板のことで友達から聞いて、自分で確認した後に家族にお告げかもしれないって、連絡した・・・・・。高台に持ち運びできるように宝石を移動して自分たちの水や防災グッズを整えてその日だけでも――避難しろって。」
リヴァンもディアと一緒だったのね・・・。
「・・・家族はわかったから安心しなさいって言ってたのに――連絡がまだないんだ。ディヴィンダ、君のことについてさっきメールで送っておいた・・・。状況が分かるのは先かもしれないけど、来たらすぐにいうよ。」
いつもうるさいくらいに明るいリヴァンがこんなにも輪郭が薄くなるなんて。
「僕は三男だから――自由にしていいって言われて留学したけど、こんなことになるなんて思ってもみなかった。」
「リヴァンあなたも?掲示板読んでたの?どうしてみんなに教えてくれなかったの?」
同じ被災者かもしれないけど、どうして教えてくれなかったの。
「うん。スマトラ沖地震のことでかなり詳しく載ってた…・正直、半信半疑だったから、これでもあの情報を精査するためにもレナード教授に確認したくらいだしね。危険だということは認識してたんだ。」
「リヴァンも?私も聴きに行ったわ。そしたらもういつ地震が起きても不思議ではないって言われたの。だから家族に電話したのだけど、日時までかいてあったでしょ?だからそこまでの信ぴょう性がないかもしれないし、取り敢えず家族にだけお願いしたの。」
ディアとリヴァンは教授に確認までしてたのね・・・・・。だけど日時までは信憑性がないかもってことで言えなかったって事・・・・。
「僕はネットが好きだからね。ヤフーチャットだったら世界中の人間と関わりあえるからよく見てたよ。今回も必死な文面だったから、家族に言ったんだ。ベルワナの僕の地元は海に面している地域だし、チャイナ・フォート地区は特に港があって入り組んでるんだ。今回は、高い山の上にある別荘に運び込まれてるはずなんだ。お告げだと言えば大体通るからね、真面目な内容なら、きちんと避難しているはずなんだ・・・・」
ああ、私は夢にも予言にも選ばれなかった‥‥。ただの一言も逃げて、と言えなかった。
もう、お母さんにただいまって言えないかもしれない――。
デジタル・パスト 意味は届かぬ過去。
当時、あちこちの地域でインフラは崩壊し、水道の水も、井戸もあちこちの水が汚染され深刻な状況でした。ドクターは消え、または、お亡くなりになり、どころか、病院や役所必要なお店などいろいろな場所が津波によりまたはその前の地震によって壊れたそうです。
、モスクも頭の部分だけは綺麗に残っていたが、一階にいる人たちは泥に埋まってしまいまたは周囲の瓦礫にあたり悲惨であったと想像できます。本当に写真に載っていましたがほとんどの家が建物が無くなっていて、言葉が出ませんでした。




