12話 境界線
正直、情景とか書くの苦手なんですよね・・・みんなすごい。
12話 境界線
2004年12月26日午後3時20分。
先日は、クリスマス当日に電話してしまい、怒鳴られたので、きっちり今度はアポイントメントをとった。
ニューオーリンズの典型的なショットガン・ハウス、色の基調は白とミントグリーンの壁、左右対称のファサードには美しい装飾の伝統的な柄が施されている。
全体的に古風な印象を受ける家の前に車を止めてもらい、車内で深呼吸をして頭を切り替え少し待つ。
3分、12月の海のにおいがほんの少し混じった潮風を感じる中、道路の上を歩きドアの前へを辿り着く。
23分30秒、ドアのチャイムを鳴らす。
期待と切望と、ほんの少しの心の葛藤を抱えドアが開くのを待つ、
「はい・・・」
白いスクリーンドアから、白金色の髪と菫色の瞳を持つ少女が控えめに声を発した。
「私はクワンティコから、先日電話したリアム・ギデオン。お家の人は今いまいるかい?」
勤めて優しい声をかける。
「います。どうぞ、お入りください。」
今どきの子にしては言葉遣いも丁寧に感じられた。
この家の教育方針だろうか。
服装は青緑のカーディガンに白のワンピース、首元には金のネックレストップスは青い石。
この時期なので寒さ対策として柄の無いストッキングをはいているな。
どれも、清潔感がある服装。
家に入ると、廊下がないのですぐにダイニングに辿り着く。
ショットガン・ハウスの一般的な設計だ。
中には、大型のテレビと、落ち着いた色のソファにレコードプレイヤーとレコードの箪笥、大きな食器棚があった。
ソファの前に立っている紺色コーデュロイジャケットをカジュアルにだがピシッと着こなしている男が先日電話したレナード・マシュー・ランドールだろうその横がランドール夫人であるサエ・ランドールだろう。
「電話ではお話しましたが初めましてFBI行動分析家リアム・ギデオンと申します。」
「初めまして、レナード・ランドールと申します。こちらは妻のサエ、娘のアンジェラ。」
自己紹介の際中に紅茶を持ってきてくれ少女を見、
「ではこちらが・・・・くだんの・・・?」
予想外の幼さに驚いてしまった。
父親が頷き、
「クライム・ストッパーズの情報はお持ちですよね?」
情報の重要性を思い出し、心がざわつく。
「まずは・・・先日の情報の取り扱いについて申し訳なく思います。 せっかくお嬢さんが伝えてくださった情報を私たちは懐疑的にみて我々は最善をつくせませんでした。貴方の善意に対して行動出来なかった。」
3人とも目つきはきつく、手を握りしめている。私たちに怒るのも当然だ。
「ありきたりな謝罪はいりません。特にあなたには罪がない。私も先日は電話でどなってしまい申し訳なかった。それよりも・・・・FBIの情報分析部門の人からの謝罪じゃないのはなぜだ?」
それはそうだ。そもそも私はプロファイラーとして活動している。
それに本来は今言われた通り情報分析部門の問題だ。
だが、言わねばならない。
「ごもっともです。ですが、まず国は情報が確信できなかった・・・・。ウィチタの図書館は犯人に気づかれないよう、私服警官に調べていただきました。その後、すぐさま鑑識にわたり逮捕につながったわけですが・・・津波については・・・・。海洋プレートによる地震はむしろ教授のほうがお分りでしょうから、詳細は省かせていただきます。」
招聘した海洋物理学者と地震を専門に研究しているチームの人間たちが、こぞってプレートの極致的限界点やプレートの複雑な摩擦を日時を数学や計算で語るのは不可能とした・・・。
その結果をピンポイントで当てる?
この言葉を言うべきか、言わざるべきか・・・・。だが、ここまで来たのだ。
「完全予告警報なぞ、・・・・不可能です。
言わせていただくと・・・国土安全保障省や情報分析部門も、技術的に専門家を招聘して意見を参考させていただきました。」
だけど、聞かねばならない。
「ですが、本当になぜ?このようなことがわかるんです?専門家のチームの意見としては近い未来において、数式や技術的な部分をブレイクしてもしかしたら、予言に近い予測が建てられるかもしれないとっ・・・・ですが今の技術では不可能だと断じられました。」
この世の中にまだ偶然という奇跡以外災害予測を100%的中させるなんて不可能だ。
その行いは神かあるいは――
「先月に・・・娘は学校で頭を打って脳震盪になったんです。医療記録からもしかたら、そちらはもうすでにご承知でしょうか。」
レナードの言う医療記録は私も見た。
先月の11月だったな。確か・・・・・。
「その後に、 娘が元日本人で2025年に21歳で亡くなったと言ったんです。 それからというもの 娘 は・・・・・・。」
サエは息を詰まらせたように、苦し気に続きを話そうとした。
「今年の12月のスマトラ沖地震のことを話しました。 最初は、私は半信半疑でした。ですが・・・・11月の日本の誘拐事件についても知っていて、事件が起こる前に説明をされました。だから信じたんです。正直、スケールの大きさに胸が痛かった。」
そう話す夫人の肩を抱きよせ、レナードがローテーブルの上に置いてあった新聞記事のコピーをさしだして説明を始めた。
「娘が未来のことを話し、いろいろと彼女にとっては過去で私たちにとっては未来についてはなしてくれました。
彼女はアンジェラは2025年に亡くなったに 日本人だと。2004年の11月26日に生まれて。災害が多く、興味を持ったそうです。それで覚えてた事柄を私たちに教えてくれました・・・・ですが情報が大きすぎて我々の処理能力がオーバーワークでして・・・・。」
怪しいところなど何も出てこなかったし、カルトにはまっている友達と付き合うだとかそういったこともなかった。
なのに、なんだこれは?!
「でも 2025年にはまだなっていないんです。 なのに、 死んで。 過去に戻ってきた。 普通 転生っていうものは過去から未来に来るものなんじゃないんですか。」
混乱しているのだろう、アンジェラの両親は転生についての審議に入りかけている。
こっちはとっくに処理落ちしているというのになんていう不思議ワールド。
というか、こっちはいっぱいいっぱいだというのに、この内容をどうーー上に報告すればいいのだ?
「こういうのは、逆行転生っていう分類だと思うけど?」
「逆行転生?」
「私が日本人だったときに、読んでた二次作品やオリジナルを投稿するサイトでよく見かけた設定だね。主人公が過去に戻って全く別人になってる話・・・武家の娘になって、未来の自身の化粧品知識で成り上がったり、過去の偉人に成り代わって、マリーアントワネットして処刑台を回避したりするはなし。」
「「「処刑台?化粧品????」」」
初めて聞いた情報なのか私とご両親の驚きがシンクロした。
シンクロした言葉にはっと した。
趣旨が子がずれていると、 自身で気づき結局ここに来た理由を思いだした。
少しでもきちんとした情報を持って帰らねばと。 再度確認事項の言葉を紡ぐ。
「未来の情報をお持ちということは、
他にも――いや他の情報もご存知ということでしょうか?」
今までの情報を思い出しゴクリと喉がなる。
「正確には2025年11月までの情報を持っているというのが正解ですわ。ギデオン捜査官」
サエ夫人が素早い立ち直りをみせ、にこりと笑って、いや目が笑っていないな。これは非常に激怒している。
「でも、簡単に娘の情報を手に入れられると思わないでくださいまし?このひと月ずっと一人でも救いたい一心で毎日、パソコンに向き合い、インターネットから情報を発信し続け、
クライム・ストッパーズにも藁にも縋る思いで電話した――」
録音の内容が思い出される・・・
「14歳の中学生の子供の時間は安くありません。勿論わたくしたち家族も。」
「ですから是非、娘の言葉を肝に銘じて考えてくださいませ。」
「私たちは監視なども受け入れるし、保護も受け入れる。ただし、相応の金額でお願いするよ。」
「そうね、未来の――何年後くらいまでか知らないけど災害情報が役に立つのなら十分私たちに支払う金額は元が取れると思う。違いますか?」
血反吐を吐く思いで・・・・
確かにこの家族全員貧乏というほど困窮していないのは、とっくに事前調査で判明している。
即ち、この顔色の悪さ、顔の細さはこのひと月の地獄をカウントしていた日時が彼らをここまで変化させたのか。
壁際にある数か月前の写真を見てギデオンは内心頷く。
藁にも縋りたくなるほどの強迫観念が、彼らを国という・・・権力に対して宣戦布告するくらいには追い詰められているとみて間違いない。
実際に彼らは何一つ犯罪を起こしていない。
クライム・ストッパーズに対しての電話でも全て事実。
どこで聴いたのか判明しなかったうえ、スマトラ沖地震の詳細な出来事まで話していたし掲示板やチャットに書き込んでいた。
タイ国王の孫娘がタイの南部でジェットスキー真っ最中に津波に襲われるなんて普段なら冗談でも確認しない。
だが、実際に今までの言動は全てにおいて現実だった。
一家惨殺事件の犯人も捕まり、外務省のリスクヘッジも動いた。
『念のための安否確認とスケジュール照会』という偽装で確認したと説明を受けたな。
あちら側への連絡内容も聴いたが、さっくりとした内容だった。
『海洋物理学者の情報筋から、近々スマトラ沖で大規模な地殻変動の兆候があるという極秘レポートが入りました。念のため、王族の方々が沿岸部に滞在される予定がないか、ご確認いただけますか?』
結局――その「何気ない確認」こそが、王族のスケジュールを変更させ、ジェットスキーを止めさせた。
少女は確実に、国王の孫娘だけでなく、そのSP、パーソナルアシスタント、現地の連絡員、その他大勢の部下や友人20~30名が――あの電話で確実に沈む人生から救ったのだ。
「こちらが、今回の報奨金としていただきたい金額ですね。情報を開示している分だけのものになります。」
といって出された書類には1億1000万ドルの請求金額。
口から魂が飛び出そうな金額に唖然となるが、流石に高すぎると思い目を向けると、
「まだ安いほうですわよ?何ていっても初回割引と一緒に特典付きですから。」
目がまだ凍ったままの状態で見つめられて正気に戻った。
「特典?」
「私が今回のスマトラ沖地震で覚えてる限りの、環境悪化や遺体の確認速度、様々な被害地域の詳細な・・・スマトラ沖地震の被害予測と支援データと言っても記憶のものだけだけど・・・・・はぁ・・ひとまず酷い地域は覚えている限り書き出した被害データ。こちらを差し上げます。これからまだ海兵隊やら陸軍やらが行って事態の収拾と支援復興に役立つと思うので。」
ポケットから差し出されたのは最近発売したばかりのUSBメモリーカード、私は馴染みがないが最新の機器で最近売り出されたニュースにはセキュリティの問題を定義されていた。
何せ小さいから持ち運びに便利でかつ、情報が大量に入るとあっては悪夢だ。
しかし、今現在差し出された小さなメモリーカードにはもしかしたら、もしかすると奇跡が入っている可能性がある。
「72時間のデットライン、助けられる命なら助けたいと思いませんか?」
喉がなるのを押さえ、じっと対価の金額を眺める。
この情報を持って帰ったら即座に契約が締結するのであれば私には残念ながら権限がない。
「もしも、褒賞金が下りないのならこうお伝えください。」
丁寧だが、淡々と脅迫を受けているかのような圧力。
「私が知ってる未来で貴方が不幸に見舞われないようお祈りください・・・ってね。」
いや違った!まごう事なき脅迫だった。
激しい怒りを感じる言葉だ。
血の通った人間であることを認識すると一気に親近感が湧くが。
「だが、私自身この金額は即決できない。上に報告を挙げなければ。」
自身は非常に惜しいと思うが、おそらく不可能だろう。
「当然でしょう・・・・ですからこちらに条件を書いた書類を準備させていただいた。」
レナードが、スッと差し出してきた書類にはこう書いてあった。
その一、契約金は 災害予知一件に1億ドル。
支払いは分割でも構わないが、即座に運用可能な信託口座を開設すること。
その2からは一般的な国民の自由を保障してもらうことになっている。
その際警護の時は都合上、家は政府側が用意し、支払える場合はランドール一家が負担したり、経費での曖昧な部分での都合をかいてある。
特にプライバシー保護が重点となっておりトイレやお風呂、寝室などでの自由、つまり監視などしないでくれって書いてあった。
重要なのはここだろう。
【技術的清掃および物理的不可侵の担保】
「合衆国政府は、アンジェラ・ランドールが国内外で滞在するあらゆる施設(宿泊施設、住居、移動手段等)に対し、本人の入室に先立ち、最新の機材を用いた**『技術的清掃(盗聴器、隠しカメラ、GPS等の完全な探知・除去)』**を完了させる義務を負う。
・本作業は、本人のプライバシーを侵害しないよう、入室前の無人状態において隠密に行われなければならない。
・万が一、本人の入室後に未発見の監視機器が露呈した場合、政府は重大な過失責任を認め、直ちに所定の損害賠償を支払うものとする。
・政府は、本人の私的空間における『電磁的遮断』や『プライバシー保護デバイス』の提供を、本人の要請に応じて無償で行うものとする。」
あとはなぜか、この文章・・・・検閲の時に免税しろって書いてあるかと思えば、違って、政府よりも航空会社などに対するものだった。
アンジェラ・ランドールもしくはランドール夫妻の所有の物品に対する検閲・取り扱いに際し、故意または過失を問わず、物品に損壊(微細な傷、凹み、色あせを含む)を与えた場合、政府または会社、扱ったチームは当該物品1点につき一律100万ドルの損害賠償を即座に支払うものとする。
物品の内容を確認しないだとか、そいういったプライバシーについてのことかと思えば、思った内容と違い思わず唖然としてしまった。
通信設備の提供。 私たち夫婦と娘が情報を発信し、かつ趣味を謳歌するための最新インフラ
趣味ってなんだ。それに予算つぎ込むって、あんだけ報奨金をもらえるように手配してるんだから自分で買いそろえて・・・・あっ。
無理かもしれないな。護衛が付いたらそりゃあ、自由にお買い物できないかもだな。
納得し次の項目へ目を移す。
資産の保護。
本契約に基づき支払われる一切の対価、およびそれを用いて取得した資産は、国家安全保障上の理由を含むいかなる行政的・司法的措置(没収、凍結、課税の強制徴収など)の対象外とする。これらは『国家の功労者に対する特別免責資産』として永久に保護される。」
ようするに、国が捏造した罪などでも財産を取り上げられないようにっていう配慮だな・・・・。
まぁ、こういった条項も結局は国家の胸三寸だが、ないよりはあったほうが安心だろう。
それから、続きを読むと一般的な心身の保護と政府や医療機関からの実験体扱いを免れるものだった。
当然か・・・
予知能力が本物となれば解析したいと大勢が押し寄せるだろう。
彼女は普通の人生を歩む権利がある。
「・・・・よく考えられていますね。」
「ひとまず、私の大学で今現在被害者のリストを作製しています。
Yahoo掲示板等のデータ収集・整理のアルバイトを12人、その際に大学には他の名目を伝えていますが、実際には現地の情報を拾ってもらうためにこの日程で組んでいました。実際の道路情報や、民家がどれほど被害を受けたか確認できるチャンスですよ。一緒にきませんか?」
「・・・お願いする。車の中で上司に電話をさせていただいても?」
鷹揚に頷くこの家の主人たちに私は完敗したが、妙に清々しい。
一先ず車内にて携帯電話で連絡することにしよう。
おかねかせぎでがっぽり。
ちょっとロマンがあると思いませんか?




