らしくない
あの女が居なくなって1ヶ月は軽く越えた。
お祭りで逸れて、焦って探そうとした自分がいて驚いた。
何故、探さなきゃならない?あの女の煩さに ウンザリしていただろう。
このまま消えてくれて清々する。少し前の俺なら間違いなく すぐ考えていただろう。
情でも移ってしまったのか?そうとしか考えられんな。
あの時を思い返しても信じられん。
なんとなく あの女が使っていた、俺のベッドを見る。
何故、あの女が居ないのに まだ俺は長椅子に寝てるんだ?
馬鹿馬鹿しい。1ヶ月は経っているんだ。
間違いなく奴隷として捕まったに違いないだろう。
珍しい毛色だから高値で売れただろう。
ベッドに乱暴に横たわった瞬間、ふわり とあの女の匂いがした。
何だか気分が悪い。イライラする。
コトッ
玄関から物音がするとは珍しいな。
・・・・まさか・・?そんなはずはない。此処には船では近づけない。
バッと勢い良くドアを開けた。
アレは確か「キキリズムがなんでこんな所に?」
キキリズムは滅多に人に姿を見せない。懐くことさえしない。見た目の愛くるしさから愛玩として、貴族に好まれるが、3日として生きたためしがなく、絶滅危惧になったはず。
キキリズムは ジッとこちらを見てスイッと森の中へ消えていった。
ハッと気づく。
また、俺は何を黙って見ていたんだ?捕まえたら大金だっただろう。
一歩前へ出たが、今更 遅いだろう。
キキリズムは、物凄い瞬発力と速さを持つ動物だ。
ドアを閉めようとした一瞬、何かが目の端に映った。
「これは・・・」
香袋?
獣が嫌う香料が入った袋が何故ここに?
疑問に思いながら拾うと、香袋に小さな刺繍が入っている。
マオ
「・・・・・」
子供でもないのに、自分の持ち物に名前を刺繍する奴、初めて見たな。
今まで無かったこの香袋が、今ここにあるという事は、あのキキリズムが持って来たのだろうか?
いや。持って来たんだろうな。あの女の事だ。餌付けでもしたんだろう。
餌付けなんてされるわけないのにな。
凄いなあの女。どんな懐け方させたのか教えてもらいたいもんだ。
教えてもらいに行くのもいいかもな。
第一、アレは俺が拾ったんだ。
拾ったヤツのもんだろ?
盗まれたら、奪い返すのが俺だろ。
そろそろ つくね も食いたくなったしな。
手頃な麻袋に数日分の食料と金を入れて外へ出る。
あの女を探しに行くために、俺は家を出た。




