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僕の美少女モンスター  作者: 秋保嵐馬
Ⅵ.僕と美少女モンスターの人助け
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一、補習とデートとビル火災3

「キャーーーーーーーーーーーー!!」

 ハピは、ものすごい大声を出した。

 周りの見て見ぬ振りをしていた人たちもみな振り返らざるをえないような大声だ。

 その声の大きさに、ニキビもリーゼントも表情がひるんだ。

「助けてーーーーーーーーー! ちかーーーーーーーーん!! 警察呼んでーーーーーーーーーー!!!」

 ハピの絶叫は続く。

 今にも殺されそうな者が上げそうな悲鳴。

 周囲に人だかりができ始めた。

 ニキビ、リーゼント、ピアスの三人が、明らかにおろおろし始める。

「110番してーーーーーーーーーー! おまわりさーーーーーーーーーーん! HELP MEーーーーーーーーーーー!!」

 最後のヘルプミーは、本格的な英語の発音で、金髪青い目のハピが口にすると正に真実味があった。

 周囲がざわざわし始める。

 ガラの悪い男三人組に対し、中学生の男女三人。

 どう見ても、あっちが加害者、僕らが被害者という構図だ。

 ヤジ馬の中の何人かが携帯電話を操作しているのが見えた。

 本当に110番でもしているのかもしれない。

「く、くそ!」

「覚えてやがれ」

 実際に警官が現れたりしたらさすがにマズイと思ったのだろう、三人組は捨て台詞を残して走っていった。

 男たちがいなくなると、周囲の人垣も少しずつ崩れて、やがて普通に人々が行き交う、通常の路上風景に戻った。

「あ、ありがとう、ハピ」

「おやすい御用さ絆。あんな連中、まともに相手にすることはない」

「だけどびっくりしたよ……、ハピがあんな大声出すなんて」

「ははは。あれだけ大声出せば、周りの人たちだってさすがに無視できないだろうからね」

「そうだね、なるほど……。あ、血祭さん、大丈夫だった?」

 僕は冴に向き直った。

「……。別に問題は無い」

 冴はあいかわらずちょっと不機嫌そうな表情をしている。

「そう、じゃあ、良かった……。そ、それじゃあ――」

 僕はハピと一緒にその場を立ち去ろうとした。

「おい、掛橋絆」

「え?」

「……。おまえ、私と待ち合わせてこれから一緒に出かけるのだろう?」

「ええ? あ、でも、それは……、さっきあの場をどうにかするための方便というか……」

「なんだよ血祭冴。絆はボクとデートするんだぞ。割り込んでくるな」

 ハピが、僕と冴の間に割って入った。

「絆はこれから、同じジュースをボクと向かい合ってストローで飲むんだから邪魔しないでくれ」

 え、ハピ、いや、それは……。

「……。まあいい。取り合えず礼は言っておこう。――ありがとう」

 血祭冴からお礼を言われるなんて意外だ。

「え、ああ、いや、僕は……、どっちかというと、ハピのおかげだから」

「お礼はいいから、ボクの絆にちょっかい出すなよな」

 ハピが両腕で僕の腕にしがみつくようにした。

 ハ、ハピ、ちょっとそれだと胸が当たるんですけど……。

 周囲がなんだかざわざわし出した。

 なんだろ?

 さっきの三人組の男はいなくなったはずだし……。

 まさか僕とハピを見てざわついているわけではあるまい。

「見ろ、煙が出てるぞ」

「ビルが火事だ!」

「119番しろ!」

 周りがざわざわしているのはこれだったのだ。

 僕らも上を見上げた。

 ビルの一つから黒煙が上がっている。

 ガチャーンという音とともに窓ガラスが割れ、赤い炎がちらちら見えた。

「助けてーー」

 声が聞こえた。

 見ると、窓から子どもが顔を出している。

 取り残されたようだ。

「ハピ、大変だよ、助けないと」

「絆はここにいな。ボクが行く」

「でも、ここからハーピーの姿で飛んでいくわけにはいかないだろう? 助けに行くなら、ビルの中からだよ」

「分かった」

 ハピがビルに向かって走り出した。

 僕も追いかけた。

「絆は下にいなよ」

「ハピ、僕だって不死の力があるんだよ。少なくとも、僕の身の安全には気を遣わなくていい」

「分かった、一緒に行こう」

 僕らはビル内の階段をかけ昇った。

 上の階は、煙がもうもうと立ち込めている。

 僕は口にハンカチを当てた。

 廊下の行く手が崩れていてふさがれていた。

 取り残された子どもたちは、この向こうの部屋にいたはずだ。

 ハピは、モンスターのハーピー体に変身した。

 上半身が人間、下半身が鳥のモンスター、ハーピー。

 長い尻尾と鋭い鉤爪を備えた両足をもち、両肩からは腕の代わりに巨大な翼が生えている。

 顔と腕以外の上半身は、素肌の人間体のまま。

 胸は長い髪で隠れているけれど、ケイやマナやハピがモンスター体になると、いつも僕は目のやり場に困ってしまう。

「絆、ボクのはばたきで吹き飛ばすから、少し後ろに離れていろよ」

「わ、分かった」

 僕が数メートル離れると、ハピは巨大な翼を一振りした。

 崩れていた瓦礫が吹き飛ばされる。

 廊下が通れるようになった。

「絆、行くよ」

「う、うん」

 ハピはモンスター体のまま走り出した。

 僕はその後ろを追いかける。

 ハンカチで口をおさえ、煙にむせながらの僕と違って、モンスターのハピは煙の中でも平気みたいだ。

「絆、このドアの向こうだ。声が聞こえる」

 一つのドアの前でハピが立ち止まった。

 僕はドアノブを握ったが――。

「ハピ、開かない。鍵がかかっている」

「絆、離れろ」

 僕がドアから離れると、ハピは鋭い鉤爪の足で、ドアを蹴散らした。

 部屋に飛び込む。

 廊下より、部屋の内部の方が火の勢いが激しかった。

 どこに子どもがいるのか分からない。

「絆、あそこだ」

 ハピが翼で指し示した方に、子どもたちの影が見えた。

 いくつか瓦礫が行く手をふさいでいたが、例によってハピが翼一振りでそれらを吹き飛ばした。

「大丈夫かい?」

 四~五歳ぐらいの子どもが三人いた。

 女の子二人に男の子一人。

「三人か……」

 ハピがつぶやく。

「二人はボクの両足で一人ずつ掴んで連れて行けるけど、あとの一人は……」

 そうなのだ。

 ハーピー体のときのハピには両腕が無い。

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