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僕の美少女モンスター  作者: 秋保嵐馬
Ⅵ.僕と美少女モンスターの人助け
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89/131

一、補習とデートとビル火災1

 夏休み前にくぐり抜けなければならない関門、一学期末テストが終わった。

 テストが返されてくる。

 僕の結果は……、国語82点、数学75点。

 休み時間、僕は自分の答案をしげしげと眺め、まあこんなもんかなと思い、しまおうとした。

 左隣の血祭冴は机の上に堂々と答案を広げているので、見ようと思わなくても点数が目に入ってしまう。

 ちなみにその点数は……、国語95点、数学98点。

 す、すごい!

 血祭冴って頭いーんだ!

「なんだ?」

 僕の視線に気づいた冴が僕のことをぎろっとにらむ。

「あ、いや、ごめん。つい目に入っちゃって……。けど、すごい点数だね」

「ふん。このくらい、どうということはない」

「どうということね……」

 僕は右隣の陸守ケイを見た。

 答案に顔をくっつけるようにしている。

「ケイ、どうだった?」

「え? あ、あたし?」

 ケイはあわてた様子で答案を机の引き出しに押し込んだ。

「き、絆君は?」

「僕? 僕はこんな感じ」

 僕はケイに、国語と数学の答案を見せた。

「す、すごい! 絆君って頭いーんだ!」

 さっき、僕が血祭冴に対して思ったのと同じことを、今度はケイが僕に対して口にした。

「いや。このくらい、どうということはないけど……」

「どうということね……」

 あれ?

 なんか、僕まで血祭冴と同じようなこと言っちゃった。

 ケイはいったい何点だったんだろう?

「それでケイは?」

「え、わ、私は……」

 ケイは赤い顔をしてもじもじしている。

「どらどらーー、あーー、ケイったら、国語38点の、数学35点だってーー」

 いつの間にか隣のクラス在籍のはずの海守マナが、ケイの隣に来ていた。

 右手に、ケイの二枚の答案を持っている。

「あーー、ちょ、ちょっと、マナやめてよ!」

 ケイが真っ赤な顔をして、手を伸ばした。

「いーじゃない、減るもんじゃなし!」

 マナが豊かな胸をまるで誇るかのようにそらして、頭上高く上げた答案を後ろにやる。

「もー返してよ、バカ」

 ケイが横から回り込んでマナから答案を取り返そうとするが、マナは反対側の手に答案を持ち変える。

「ちょっと、怒るわよ!」

 ケイが本気で怒り出しそうな気配を見せた時、

「よさないか」

 別の声がして、マナから答案を取り上げた。

 隣のクラス、マナと同じクラス在籍の空守ハピだった。

「マナ、悪ふざけはやめろ。ほら、ケイ」

 ハピがケイに答案を差し出した。

「……ありがと」

 ケイがちょっとぶすっとした感じで答案を受け取る。

「ケイったら、怒んない怒んない、ちょっとしたスキンシップでしょ」

 マナが悪びれもせずケイに言う。

「そんなスキンシップ、大っきらい」

 ケイはそそくさと答案をしまった。

「や、やあ、二人ともどうしたの?」

 僕はマナとハピに声をかける。

「どうということはないけど。単に遊びに来たのさ。いけないかい?」

「いやハピ、別にいけなくはないけど……」

「絆ちゃんは、テストどうだったの?」

「え、僕?」

「どらどら、絆ちゃんの答案はどこかな~~」

 マナが僕の机の引き出しを覗き込もうとした。

「や、やめてよ」

「あら、いいでしょ、減るもんじゃなし」

「それはそうだけどさ……」

「別にテストの点数で人の価値は決まんないわよ、ねー、ケイ?」

「ぷん」

 マナに言われたけど、ケイは赤い顔をしたままそっぽを向いてしまった。

 さっき、答案を取り上げられたのがよっぽど気に入らなかったようだ。

「で、絆は、何点だったんだ?」

「まあ……、国語82点、数学75点だったけど……。そういうハピはどうだったの?」

「ボク? ボクはおかげさまで両方100点だったよ」

 ハピはさらっと言った。

 ひゃ、100点?

 100点などという点数を取る人(まあ、ハピはモンスターだけど)が実際にいるんだなあ――と妙に感心。

「な、なんだと……」

 ん?

 小さな声で血祭冴が言ったのが聞こえたような……。

「みーんなー、あったまいーんだねー。私なんか、これだよ」

 マナが自分の国語と数学の答案を出した。

 国語24点、数学5点。

「……、い、いやあ、なんと言っていいのか……」

「そんな、言葉もないほど感心されても困っちゃうんだけど」

「感心しているわけでは……、いや、ある意味感心しているのかな」

「まあ、こんなもんで、人の価値もモンスターの価値も決まんないから」

「マナ、声が大きいぞ」

「誰も意味なんか分かんないわよ、ハピ」

「あ、そうだ……」

 僕は大事なことを思い出した。

「40点未満の人は追試験なんだよ。ケイとマナは補習を受けたうえで追試を受けないとならないぞ」

「え、ホシュウ?」

「なーに、絆ちゃん、ツイシって?」

「補習は放課後授業を受けること。追試はもう一回試験を受けることだよ」

 僕はケイとマナに説明する。

「え、ほ、放課後も授業?」

「やだよ絆ちゃん、もうテストは」

「だけどそういう決まりだから……。人間の学校に通う以上はしたがってもらわないと……」

「「えーー」」

 ケイもマナも不満そうだ。

「ははは、しょうがないな。じゃあ、絆のボディガードは僕に任せておけよ」

「「ええええーーーー!?」」

 ケイとマナがますます不満そうだ。

「絆君、先に帰っちゃうの?」

「ハピ一人じゃ心配」

 二人は補習の間、僕に待っていてもらいたいらしい。

「失敬な。ボク一人でもちゃんと絆を守ってみせるぞ」

「「う゛~~」」

 ケイとマナはやっぱり不満げ。

「絆、せっかくだから、放課後二人でどこかへ行こう」

 ハピが僕の腕を取った。

「ちょ、ちょ、ちょ、ハピ、『せっかくだから』ってどういうことよ?」

「そ、そうよ。絆ちゃんとどこへ行く気?」

 ケイとマナがハピにかみつく。

「ははは、妬かない妬かない」

 キ~ンコ~ン~~。

 チャイムが鳴った。

「あ、チャイムが鳴ったわよ。マナもハピも自分のクラスに帰った帰った」

「分かったわよ。いいよね、ケイは絆ちゃんと同じクラスで」

「そうだよ。ケイは、ボクら二人より絆と一緒にいる時間が長いんだから、たまにはボクが絆と二人で過ごしたっていいだろ」

「あらハピ。それとこれとは別でしょ。そうしたら、私だけ取り残されちゃうじゃない」

「おい!」

 それまで黙ってみんなのやり取りを見ていた血祭冴がいらいらした様子で口を開いた。

「さっさと自分のクラスへ戻らんか! 先生が来てしまうだろう」

「分かったよーだ」

 マナは血祭冴に向かって「いーっ」という表情をすると、ハピと一緒にクラスを出ていった。

 次の授業が始まった。

 授業を受けながら僕はふと思った。

 ハピと冴って勉強できるんだな……。

 ケイだって後ちょっとで補習と追試をまぬがれたんだから、惜しかったよ。

 マナは天真爛漫でテストのことなんか気にしてないようだし。

 まあ、モンスターなんだから、人間界のテストなんか何点だろうと関係ないのかもしれないけど。

 そういえば……。

 僕は、離れた席に座っている普見蘭と大神浪子を見た。

 この二人もモンスターだけど、テストの結果はどうだったのかな?

 三人でチームを組んで僕のボディガードをしてくれているケイ、マナ、ハピと違って、血祭冴、普見蘭、大神浪子の三人は味方同士というわけではない。

 テストの点数だってお互い見せ合ったりもしてないみたいだし……。

 見るともなしに、蘭と浪子を見ていたら、鉛筆でケイにつつかれた。

「絆君」

「え? なに」

「放課後ハピと出かけちゃうの?」

「出かけちゃうって……、まあ、一緒に帰るだけだけど……」

「……」

「じゃあ今度はさ、ケイともどこかへ出かけるから」

「ほんと?」

 ケイの顔がぱっと輝いた。

「だったら、マナとも出かけないと不公平かな」

「えーー」

 ケイの顔が少々曇る。

「おい」

 反対隣の血祭冴が小声で言ってきた。

「そういういちゃいちゃするのはよそでやれ」

「なによ、いちゃいちゃなんかしてないもん!」

 ケイが僕の顔の前に、ずいと乗り出して血祭冴をにらみつけた。

「ふん、だいたい一緒に帰りたかったのなら、ちゃんと勉強してれば良かったろう」

 冴は鼻で笑うようにして顔をそむけた。

「く~~、ばかにしたあ……」

「ケ、ケイ、おさえておさえて」

 授業中であるにもかかわらず、ケイが立ち上がって今にも血祭冴につかみかかりそうだったので、僕は必死に押し留めた。

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