二、なあたんと美幼女モンスター、兄ハーピーに妹マーメイド10
「ふーん、そうだったのか」
僕の説明を聞いてラキがうなずいた。
僕の家のリビング。
ケイ、ハピ、ラキ、カナに対し、僕とマナが今日の出来事を説明し終えてのことだ。
「あの、四人、そんなことになっていたのね……」
「まあ、妥当な処分だろうな」
ケイとハピ。
「じゃあ、ララは人間界に残るということで……、私とラキの使命も終わりですわね」
「カナとラキはこの後どうするの?」
マナの問いは当然だろう。
二人はこの後どうする気なのか。
「なっくんを守るように指令を受けているケイ、マナ、ハピと違って、僕らの使命は人間界への迷いモンスターをモンスター界へ連れ戻すことだ。使命が終わった以上は帰らないとな」
ラキの言葉に、マナとハピの表情がちょっと曇った。
やっぱり家族と別れるのは辛いよな。
こないだ、せっかく再会できた母さんが、再び外国に行くときも僕はつらかった。
でも、母さんが安心して旅立てるよう、顔には出さないようにしていたけれど。
「じゃあ、姉様、私たち帰ります」
カナとラキが立ち上がった。
「もう帰るのかい? ゆっくりしていけばいいのに……」
僕は二人を引き留めたけれど、
「いや、あまり長居しちゃ別れが辛くなるからな」
ラキは胸の内ポケットから鍵水晶を取り出した。
「ラキ、君たちが今回人間の世界に来るときに使ったトンネルはどこに開いているの?」
「ああ、それね。狭い空間ならトンネルにできるから……」
玄関に向かってラキとカナが歩いていく。
見送りに、僕、ケイ、マナ、ハピもついていく。
ラキが茶色い革靴を、カナが飾りの付いたピンクの可愛い靴を、それぞれ履いた。
「じゃあ、みんな元気で」
「ちょくちょく遊びに来ますわ」
ラキとカナが僕らに手を振った。
ラキがキークリスタルを掲げた。
掲げられた鍵水晶が輝く。
「じゃあ、行こう、カナ」
「ええ」
ラキはドアに手をかけ……、って、あれ?
ラキが手をかけたのは、玄関ドアじゃなくて靴箱の扉だった。
僕の家の靴箱は、天井までの高さの作り付けなのだが、その扉を開けたのだ。
開けた先は……、強い日差し、力強く輝く青空、原色の花々、生命力にあふれた木々、空を飛ぶ、あるいは地を這う、見たこともない生き物たち……、モンスターワールドだった。
「えー! トンネルって、僕んちの靴箱だったの?」
「あ、そうだよ。言わなかったっけ?」
あっさり言うラキに、僕は
「聞いてないよ」
「ははは。ここなら、直ぐなっくんの家に来られるからな」
「って言うか、既に僕の家なんですけど」
「そーかそーか、じゃ」
「姉様、絆様、皆様、さようなら」
靴箱の扉が閉まった。
ラキとカナは帰っていってしまった。
再び靴箱の扉を開けた。
中は、靴が並んでいる、普通の靴箱に戻っていた。
「帰っちゃったんだね……」
ケイ、マナ、ハピを見る。
彼女たちも、本当はモンスターの世界に帰りたいんじゃないのかな。
穏健派の中枢から指令を受けて、いきなり僕のボディガードにさせられてしまったケイ、マナ、ハピの三人。
女子高生モンスターの、ライム、ユラ、クオン、ミアは言っていた。
人間の世界でなんか暮らしたくないと。
やっぱりモンスターはモンスターの世界の方が居心地がいいのだろう。
三人に「帰りたい?」と聞きたかったけど聞けなかった。
聞けば、三人がなんと答えるかは想像がつく。
きっと笑顔で「僕のそばにいる」と言ってくれるのだ。
それが心の底からの本心なのかどうかは正直分からない。
本心を知るのもこわい。
父さん母さんが外国に旅立ち、中学生から一人暮らしを始めた僕。
でも今は、ケイ、マナ、ハピが加わって四人暮らしになった。
一人のままだったら平気だっただろうけど……。
いったん四人になって、この四人からまた一人に戻るのはさびしいよ。
ケイ、マナ、ハピがいなくなっちゃったら、どうしよう。
そう考えると……、こわい。
「じゃあさ、夕食の支度しようか」
ケイが言った。
マナもハピもちょっとさびしそうだったから、ケイがひときわ元気に言ったような気がした。
「そうだね、そうしよう」
「今日はさ、四人でいっしょにやろう。絆もいいでしょ?」
「う、うん……、もちろん!」
その日は四人でわいわい夕食を作った。
いつもは当番制だから、誰か一人が作るんだけれど、たまにはこういうのもいいよな。
翌朝。
今朝の食事当番は僕なのに、僕は寝坊してしまった。
「いけない! ケイもマナもハピもおなか空かしているぞ!」
僕は急いで階段を降りた。
あれ? なんかいいニオイがしてくる。
ケイかマナかハピが、気を利かせて朝食用意してくれたのかな?
キッチンに行って……、僕はびっくりした。
「よお、なっくん」
「あら、絆様、おはようございます」
なんと、ラキとカナがいるじゃないか!
朝食の準備をしてくれていたのはラキとカナだったのだ。
「あ、あれ? どうしたの二人とも? 帰ったんじゃ……」
「あれ? って……、言わなかったっけ? ちょくちょく遊びに来るって」
「だから、さっそく今朝から来ましたの」
ラキもカナも、とーぜんといった笑顔だった。
「あれえ、ラキとカナじゃない」
「カナ、戻ってきたの?」
「兄さん、どうしたのよ」
お馬さん模様パジャマのケイ、お魚さん模様パジャマのマナ、小鳥さん模様パジャマのハピもやってきてびっくりしていた。
その日は、六人で朝食。
そして……、
それからというもの、ラキとカナは毎日のように僕の家にやって来るようになった。
なんでも、人間世界にやって来て悪さをするモンスターを懲らしめたり連れ戻したりするようにといった指令が新たに出たとか。
ラキとカナは、夜はきっちりモンスターの世界に帰っていくので、まあ「通い」なんだけれど、なんだか六人暮らしになったみたい。
ますますにぎやかになっちゃって……、僕としては嬉しいな。




