二、なあたんと美幼女モンスター、兄ハーピーに妹マーメイド9
「絆ちゃん、もういいじゃない。ララのことは、四人に任せておけばいいわ。私たちは帰りましょう」
マナが僕の袖を引っ張った。
マナの言う通りだ。
ララは家族に――、ゆうたんことユラに会いたがっていたし、それは果たせた。
あとはユラとララ姉妹の問題なわけで、僕が口を出すことじゃない。
確かにそうなんだけど……。
「でもさ、マナ」
「どうしたの?」
「ラキが言っていただろ。ララをモンスターの世界に返しても、自分の家に帰れるかどうかは分からないって。ユラやライムなら、ララを自分の家に帰すことができるのかな?」
「さあ、それは……」
僕も滅茶苦茶なことを聞いている。
そんなこと、マナにだって分かるわけがない。
「どうなの、ライム?」
帰りかけた僕は、振り返ってまたライムに聞いてしまった。
ライムがこの四人のリーダーのようなので、どうしても質問はライムにしてしまう。
「今の私たちには……、モンスターの世界に帰る手立てがありません。そのマーメイドはおそらく持っているでしょうけれど、私たちはモンスターの世界と人間の世界をつなぐ鍵水晶を与えられていないのです。あれば、勝手にモンスターの世界に帰れてしまうわけですから、罰を受けている今、持っていないのはまあ当然なのですけれど」
「じゃあ、ララはどうするの?」
四人の女子高生モンスターはしばらく黙ってしまったが――、やがてユラが口を開いた。
「ライム、クオン、ミア……、なんの事前の相談も無しで悪いんだが……、ララを私たちの住まいに置いてやってもらえないだろうか」
ユラが口を開いたのは僕に対してではない。
仲間の三人に対してだったのだ。
「ふふ、ユラ、いまさら何を。そんなの全然構わないですよ」
「ライム……」
「あたしたちもだ」
「ユラの妹なら、私たちの妹も同然だからな」
「クオン、ミア……」
マナが再び僕の裾を引っ張った。
「――だって、絆ちゃん」
「うん……」
これならとりあえず安心だ。
モンスターの世界に強制的に帰されても、ララは自分の家に帰れるかどうか分からない。
それよりは、ライム、ユラ、クオン、ミアたちにとっては本意ではないのかもしれないけれど、人間の世界でララもいっしょに暮らしたほうが絶対いい。
いつか、ライム、ユラ、クオン、ミアたちがモンスターの世界に帰ることが許されたら、ララもいっしょに帰れるはずだから。
「じゃあ、僕たちこれで帰るよ。ララ、またね。ゆうたんに会えて良かったね」
僕は、もう早くこの場から立ち去りたいオーラ全開のマナと共に、彼女らに背を向けた。
「あ、なあたん」
後ろから声が走ってきた。
声の主が、後ろから僕にしがみついた。
「ララ?」
「なあたん、行っちゃうの? また会える?」
「え……」
僕は言葉につまった。
マナの顔を見る。
やれやれという表情だ。
後ろの四人は……、まあ、見るまでもないか。
「また会えるよ、ララ」
「うん、約束」
「約束か……、じゃあ、指切り」
「ゆびきり……」
僕が差し出した小指を、ララが不思議そうに眺めた。
そうか、モンスターには指切りの習慣がないのか。
まあ、人間の世界の習慣といっても、日本など一部の国での習慣らしいから、モンスターが知らないのは当然といえば当然だろう。
「これに、指を巻きつけるんだよ」
「巻きつけるの?」
ララは何を勘違いしたのか、自分の蛸の足を一本伸ばすと、僕の小指に巻きつけてきた。
つるんとして柔らかい、ララの蛸の足。
「はは、じゃあ、これで指切りゲンマンな」
「げんまん? げんまん、げんまん」
意味が分かっているんだかいないんだか、ララは僕の小指に巻きつけた蛸の足を上下に振った。




