二、なあたんと美幼女モンスター、兄ハーピーに妹マーメイド8
「私たちは罰としてモンスターの世界から人間の世界に来させられてしまったのです。そして人間の世界で善行を積むまで、帰れないことになってしまいました」
「へえ、そうだったんだ」
今まで黙っていたミアが舌打ちをした。
ミアは四人の中でいちばんの長身だ。
一六五センチの僕より背が高い。
「ちっ、ライムもクオンも要らないことをべらべらしゃべるな。おい、掛橋絆、用が済んだのなら、とっとと帰れ」
ミアの言いように、またまたマナが噛み付いた。
「ちょっと何よ、その言い振り。絆ちゃんが助けたあげなかったらララは車に轢かれていたのよ。もっとちゃんとお礼を言ったらどうなの?」
マナの声にユラが驚いてララの顔を見た。
「ララ、本当なのか?」
「うん。こわかった。でも、なあたんが助けてくれたから大丈夫」
「怪我はしなかったのか」
「うん」
ユラが立ち上がった。
「掛橋絆。ララのことはありがとう。礼を言う」
まじめてまともにお礼を言われた気がする。
「いや、いいよ。とにかく、ララは家族の元に帰りたがっていたから……、お姉さんの君の所に戻れて良かった。――あ、ところでさ」
「? なんだ」
僕はさっきからちょっと気になっていたことをたずねた。
「その……、君もだけど、クオンもライムもミアも……、戦ったときの怪我は大丈夫なの」
「絆ちゃん、こいつらは敵なのよ」
マナが少々あきれた様に言う。
「そうだけど……、でも怪我はどうだったのかと思ってさ。特にユラはマナが足を切っちゃっただろ」
マナの起死回生の鱗カッターで、ユラは八本の蛸の足を全て切断された。
でも、今のユラにはちゃんと足がある。
人間の姿だから、その姿は二本と、六本少ないけれど……。
「ふん、あたしのことを心配してくれるの?」
ユラがそっぽを向く。
ユラの丸いほっぺがちょっと赤い。
頬を紅潮させるほど怒らせちゃったのかな?
「スキュラの足は時間が経てば再生するのです。ユラの怪我はもう大丈夫なのですよ」
代わりにライムが答えた。
「ユラ、せっかく掛橋絆さんが心配してくれたのです。元気な姿を見せてあげたら?」
「ふん、掛橋絆。別におまえのために見せてやるんじゃないぞ。スキュラの姿になれば、ララも喜ぶからな」
言葉が終わると同時に、ユラの姿がぼわんと煙に包まれた。
煙の中から姿を現したのはスキュラ体のユラだった。
緑の髪に、ダークグリーンの八本の蛸の足。
なるほど、確かに八本とも足は完全に再生されていた。
蛸の八本の足での立ち姿は、なんだかロングのフレアスカートをはいているように見える。
「あ、ゆうたんが、ララと同じになった! わーい!」
ララは喜びの声を上げると、自分もスカートをぬいで、八本の足をあらわにした。
「本当だ。怪我が治ったんだ。良かったねユラ」
「絆ちゃんたら……」
僕の言葉に、隣のマナはあきれ顔だ。
「ララと同じ♪ ララと同じ♪」
ララはすっかり喜んでいる。
「あ、でも、もう人間の姿に戻った方がいいんじゃない? 誰かに見られたら……」
「言われなくてもそのつもりだ」
再び煙を放ち、ユラは人間の姿に戻った。
「ほら、ララもスカートはいて……」
ユラは妹にスカートをはかせ、蛸の足を覆い隠す。
「ララは人間の姿になれないんだね?」
「ああ。変身術を身につけていないからな」
スカートをはかせながら、ユラが答えた。
「私たちはモンスターの学校で変身術を習うの。もとから変身できるわけじゃないのよ」
マナが補足した。
「モンスターの中には、先天的に人間への変身能力をもつ者たちもいるわ。ヴァンパイヤの血祭冴や、人狼の大神浪子がそうね。私やケイやハピ、それにこの四人も、変身能力は後天的に身につけたの。煙が出るでしょ? あれが後天的な変身能力のしるし」
「へえーー」
いろいろ新しいことが分かったな。
「ねえ、あのさ……」
「まだ何かあるのか」
ミアがうるさそうに僕をにらんだ。
背が高いミアから上からにらみつけられると、ちょっとこわいよ。
半人半蛇のラミアのモンスター体になると、更に体長が伸びるわけだけど。
「その……、君たち四人は罰で人間の世界に来たってことだけど……。ララは? ララも罰でここに来たわけ?」
「ララは違う! 妹は罰を受けるようなことなどしていない」
「ユラ、落ち着きなさい」
「ライム……」
「掛橋絆さん。仰る通り、ララは私たちとは別です。先頃、モンスターの世界が不安定になり、人間の世界とイレギュラーにつながってしまいました。ララはそこから人間の世界に迷い込んできてしまったのです。たまたまこの高校の校舎内部にトンネルが開き、ララは私たちと会えたのですが……、ちょっと目を離した隙にいなくなってしまいまして……。心配していたのですよ。だから、あなたがララを保護してくださっていたのは本当に幸運でした」
「ライム、ララはどうなるの?」
「それは……」
ライムが言いよどんだ。




