二、なあたんと美幼女モンスター、兄ハーピーに妹マーメイド7
「あら、掛橋絆さんと、そちらはボディガードのマーメイドではありませんか」
スライムのライムが、直ぐに僕らに気付いた。
顔は笑顔だけど、内心、何を考えているのか分からない。
ラミアのミアと、アラクネのクオン、そして妹のララを抱きとめたスキュラのユラは、硬い表情で僕らを見た。
笑顔のライムよりは、硬い表情のミア、クオン、ユラの方が真っ当な反応だろう。
だって、彼女たち四人と僕らは、先日死闘を繰り広げたばかりなのだから。
「あのね、ゆうたん。なあたんがララのこと助けてくれたの」
「なあたん? 誰のこと」
しゃがんで腕の中に抱いている妹にユラが聞き返した。
「なあたんは、なあたん」
ララは僕を見た。
そういえばさっきも同じようなことララは言ってたな。
「掛橋絆のことか」
ユラは事情を察したようだった。
「まあ、そうだったんですの。掛橋絆さん、私たちの仲間の妹を助けてくださっていたのですか」
「ま、まあね」
ライムは相変わらず笑顔のまま。
かえってこわい。
きっと僕の表情も、ミアやクオン、ユラみたいにこわばっているんじゃないだろうか。
鏡があったら確認してみたいところだけれど。
「おまえたち、なぜここにいるのよ」
マナの声には明らかに警戒の色があった。
当然の反応だよ。
二対四(ララをあちらに含めれば二対五だけれど……)。
戦いになったら、こちらは圧倒的に不利だ。
もっとも、人目もあるし、こんな高校の校舎の中で、戦いになるとは思えないのだけれど……。
「なぜということはないでしょう。人間の高校生として部活に参加しているのよ」
ラミアの言葉にマナが噛み付く。
「多くの人間や、絆ちゃん、私たちまで傷つけておいて……、いまさら人間の世界で暮らせると思っているの?」
ライムの表情から笑顔が消えた。
「あら、傷つけ合ったのはお互い様でしょう。先の戦いではこちらも大きなダメージを負ったわ」
「じゃあ、私たちのことはおいておいて……、人間たちを傷つけたことはどうつぐなうつもり?」
「つぐなう?」
ライムがおかしそうに笑った。
口調も敬語から普通の言い方に変わった。
「人間に対して何をつぐなうというの? そんなつもりは毛頭ないわ。マーメイド、人間の世界でしばらく暮らしている内に、感覚が人間に近くなってしまったようね」
「……」
マナは黙ってしまった。
「君たちはどうしてまた人間の世界に来ているの? まだ僕を狙っているの?」
「……」
あれ? 今度はライムが黙ってしまった。
「つぐないよ」
口を開いたのはユラだった。
「ユラ!」
ライムがユラを制するように声を出したが、ユラは構わず続けた。
「先の戦いで、私たちは強硬派の中枢から裁かれることになった。絆、勝手におまえを襲ったことが理由だ。人間たちも傷つけてしまったしな」
「それで……、どうしてそれが人間の世界にいることになるの?」
僕はユラに説明を求めた。
「人間の世界にいることがつぐないなんだ」
「人間の世界にいることがつぐない? どうして」
人間の僕にとっては当然の疑問なのだが……、それに対して今度口を開いたのはクオンだった。
人間の姿はスリムな女子高生。
髪を卵みたいな楕円のお団子に結んだのが頭に二つ。
「人間の世界なんか来たいものか! こんな場所で暮らさなければならないなんて、それだけでも十分な罰だというのに……」
「人間の世界で暮らすのが罰?」
「そうだ! だから私もユラも、こないだだって人間の世界には来なかったのだ。それなのに……」
「やれやれ、仕方ないわね」
ライムがあきらめたようにフッと溜息をついた。




