二、なあたんと美幼女モンスター、兄ハーピーに妹マーメイド5
その日は、ララも一緒に夕食を食べた。
カレーライスに、付け合せのラッキョウ。
ララは、ラッキョウを本当に美味しそうに食べた。
それからお風呂も一緒に入り、寝るのも僕と一緒に寝た。
ララのパジャマが無かったので、僕の持っているいちばんサイズの小さいTシャツを着せて、それを代わりにした。
お風呂に入ったり一緒に寝たりする時、ケイやマナやハピが「じゃあ、自分も!」と言ったけど、さすがにそれはダメでしょ。
小さい子はともかく、健全な中学生同士は男女でそういうのはダメだ。
と、僕はいつも人間としての理性を働かせるのであった。
正直がまんしている面もあってちょっとしんどいんだけど……、はっ! 何を言っているんだ、僕は! そんなことを言っちゃイカン!
次の日、僕はララを連れて出かけた。
別に僕は美幼女のモンスターと暮らしたいわけじゃない。
モンスターの世界に帰しても、自分の住所を言えないララが親元に帰れる可能性が何ともいえないと言うことから、家に置くことにしたのであって、僕だって本音はララに早く家族の元に帰ってもらいたいのだ。
そのための手がかりは、やはりまず僕がララと最初に出会った場所にあるのではないか……。
僕はそう思い、ララを、最初に出会った横断歩道のところに連れてきたのであった。
「ここが、絆ちゃんがララと出会った場所?」
そう僕にたずねてきたのはマナ。
マナが「一応、念のため」ということで、僕のボディガードとして一緒に来てくれた。
ララを真ん中にして、ボク、ララ、マナの三人が手をつないでいる。
僕はマナに「うん」と返事をしてから、ララを見た。
「ララ、この横断歩道には、どこから来たか、覚えている?」
ララは、くりくりした瞳で僕を見上げた。
「う~んとね……」
ララはしばらく考えていたが、「あっち!」と、僕と手をつないだまま、一方向を指差した。
「へえー、この子、ちゃんと覚えているんだ。ララ、かしこいじゃない」
マナが感心する。
「ララ、かしこい?」
ほめられて、ララも嬉しそうだ。
夕べ一晩一緒に過ごしたら、ララは、ケイ、マナ、ハピともすっかり仲良くなったのだった。
「うん、かしこい、かしこい。じゃあ、絆ちゃん。今、ララが指した方に行ってみるのよね」
「ああ」
しばらく、三人で手をつないで歩いた。
なんだか、僕とマナがパパとママで、ララが娘みたいだ。
まあ、中学生だから五歳の子どもがいるということはありえないんだけれど。
「ねー、絆ちゃん。あたしたち、ララのパパとママみたいじゃない?」
マナがなんだか嬉しそうに言う。
おんなじこと考えていたんだな。
頭の中で考えていたことを音声化されると、なんだかちょっと恥ずかしい。
「ララね、パパとママと……、あとゆうたんがいるよ」
ララが自分の家族のことを話し始めた。
もちろん、ララの家族なんだから、みんなスキュラなんだよな。
言うまでもないことだけど。
「ゆうたんって……、誰? お兄ちゃん? お姉ちゃん? それとも、弟? 妹?」
僕に聞かれてまた少しララは考え込んだが……
「ゆうたんは、ゆうたん」
とのことだった。
「絆ちゃん、そんな次々に聞かれてもララだって困るわよ」
「まあ、そうか」
しばらくすると、ララがある場所の前で歩みを止めた。
「ここ」
「え、ここ?」
そこは……、ある高校の前だった。
ララって、高校から来たのか?
幼女に見えて、実は女子高生とか?
「ララ、もしかして高校生なのかい?」
「絆ちゃん、そんなわけないでしょ。きっとこの高校の敷地内のどこかに、人間の世界とモンスターの世界をつなぐトンネルが開いていたのよ」
「そうか……、まあ、そうだよね」
それにしても困ったな……、高校の中に勝手に入るわけにもいかないし……
僕らの横を、男女の高校生が不審そうにじろじろみながら通り過ぎた。
「そうだ!」
マナはそう言うと、
「あの、ちょっとすみません」
と、今通り過ぎたばかりの男女高校生に話しかけた。
いぶかしげに二人が振り向く。
すると、マナは、小声で歌い始めた。
え、なになに?
マナ、こんなところでこの二人を眠らせて何するつもり?
マナの二人を聞かされた二人は、ぼうっとした様子で立っている。
「お願いがあるの。私たちを更衣室に連れて行って」
マナが言うと、二人は黙ってうなずき、歩き出した。
「絆ちゃん、行きましょ」
「え? マナ、行きましょって……」
「いいから」
マナがララの手を引いて歩き出した。
ララがマナに引っ張られ、ララと手をつないでいる僕も引っ張られる。
僕らは校内の更衣室に連れて行かれた。
そこで、僕は男子の高校生から制服を脱いで渡された。
着替えろということらしい。
男子高校生は持っていたバッグの中に入っていたジャージに着替えた。
更衣室から出ると、マナも高校の制服に着替えていた。
そして女子高生の方は、やはりジャージに着替えていた。
「マナ、これは……」
「絆ちゃん、私の歌は相手を眠らせるだけじゃないのよ。催眠術で操ることもできるの。今回は、ちょっと制服を貸してもらうことにしたのよ」
「でも無断でこんなこと……。ちょっとマズくない?」
「まあまあ、ちゃんと二人にはジャージに着替えてもらったし……、用が済んだら返せばいいんだから、大丈夫よ」
まあ……、怪しまれずに高校内に入るにはこれしかないか。
ちょっと二人には悪いけど、制服をお借りすることにしよう。




