一、掛橋豪快とマミーのマミ5
「すてき……」
話を聞き終えたケイは、顔の前で両手を組み、瞳をうるうるさせた。
「お二人にそんなエピソードが……」
マナもうっとりと母さんの顔を見た。
「ボクもいつか誰かにそんなふうに言ってほしいな」
ハピは母さんの、続いて僕の顔を見た。
「そして、やがてお二人の間に絆君が生まれたんですね、お母様」
「そうね」
ケイが嬉しそうに僕を見る。
「よかったね、絆ちゃん」
「う、うん……、そうだよね」
もちろん、マナが言う通り、二人が出会ってくれたから僕が生まれたわけで、それは良かったことなんだけど……。
なんだか、両親の馴れ初めを聞かされるのって照れくさいものだな。
「お母様は素顔を見られたことがきっかけで、お父様と結ばれたんですね」
「そうよ、ハピちゃん」
「よーし、いいこと考えちゃった」
「あたしも」
「私も」
ハピ、マナ、ケイが何事か思いついたようだった。
一体、何を思いついたんだろう……?
その日の夕食の時間になっても、三人は二階から降りてこなかった。
「きーくん、三人ともどうしたのかしら? もうご飯だから呼んできてくれる」
「うん、分かった」
僕は二階へ上がった。
二階には大中小の三つの部屋がある。
小は、物置みたいになっていて、中が僕の部屋、大はケイ・マナ・ハピが三人一緒に使っている部屋だ。
僕は大の部屋のドアをノックした。
返事は無い。
「三人とも寝ちゃってるのかな? 入るよ~~」
僕はそぉーっとドアを開けた。
三人ともタオルケットをかけて、川の字になって横になっていた。
お昼寝中か?
僕は音を立てないように近付いた。
三人の顔を見て……、びっくり!
だって、三人とも顔が包帯ぐるぐる巻きなんだもの。
しかも、枕元にはご丁寧に
「素顔を見ちゃダメ」
のメモが。
「あ、あの~~、三人とも、それ何のマネ?」
少し間を置いて、包帯の下から、くぐもったマナの声が聞こえた。
「絆ちゃん、今お昼寝中なんだけど?」
「あ、ああ……、あの、それは見れば分かるんですけど……」
「絆、素顔を見ちゃダメって書いてあるでしょ?」
今度はハピの声がした。
「はあ……、あるね……」
「見ちゃダメって言われたら、逆に見たくなるものじゃない? 絆君、早く包帯取って!」
ケイが僕をせかした。
「いや、だって、もう三人の素顔知っているし……」
「「「それでもいいから!」」」
同時に三人のくぐもり声がした。
じゃあ包帯を取ってやるか……、あ、でも待てよ、ここで三人の内、誰の包帯をいちばん最初にほどいてやったかで新たな揉め事が起きてしまうかも……。
うーむ、ここはどうすれば……。
しゅるしゅるしゅるっと、三人の顔の包帯が解かれた。
「やったー、私の包帯がいちばんに解かれたわ!」
「何言ってるの、あたしよ!」
「違うよボクだよ!」
ケイ、マナ、ハピが三人同時に上体を起こした。
顔を見合わせ、お互いの素顔が出ていることを確認し合う三人。
三人が同時に僕を見た。
「や、やあ……」
僕の手には、母さん譲りの包帯の切れ端。
僕の意思で伸縮自在、自由に操れるスグレモノ。
これを使って、三人の顔の包帯を同時に解いてやったのであった。
「あー、絆君、それ使ったのね!」
「もー、誰がいちばんに包帯ほどいてもらえるかやってたのにぃ~~」
「絆、もう一回やり直して! 今度は手で」
三人が僕に向かって迫ってきた。
「ご、ご飯だから、それはまた後にしよう!」
「「「だめーー」」」
僕は逃げ出した。
三人が追いかけてくる。
それほど広くない我が家の中を、あちこち逃げ回る僕と、それを追い掛け回すケイ、マナ、ハピ。
「先に食べてるわよ。ほんとにみんな元気。若いっていいわね……」
母さんは、包帯の合間から一つだけ出ている目で優しく微笑みながら食事を始めた。
そ、そんな、母さん!
食べてないで助けてよ~~!!




