一、掛橋豪快とマミーのマミ4
翌日、豪快は、マミとその両親と共に家を出た。
ジャングルを戻り、マミが“お昼寝”していた場所に向かうのだ。
「マミ、なんであんなとこで寝てたんだ?」
「なんでって……、お昼寝すると気持ちいいでしょう? あそこはちょうど日当たりも悪いし、じめじめしているし、私たちマミーがお昼寝するには絶好のポイントなのよ」
「ふーん、やっぱモンスターなんだな」
「うん……、こんなモンスターなんか、人間から見たらいやだよね」
「……」
豪快は答えなかった。
両親も何も言わない。
やがて、一つの洞穴の前に着いた。
この洞穴の奥が、マミが“お昼寝”していた場所になっている。
豪快とマミが出会った場所だ。
マミは手に水晶を持っていた。
「これは鍵水晶。これを使い、モンスターの世界と豪快さんがやってきた人間の世界をつなぎます。豪快さんは、このままこの洞穴を逆戻りしてください。そうすれば、元の世界に帰ることができます」
「……」
豪快は無言で動かない。
「豪快さん?」
「決めたぜ」
「え?」
「マミ、俺はおまえに惚れた。俺と結婚してくれ!」
「ご……、豪快さん……」
マミの頬がみるみる赤くなった。
それを覆い隠すように、包帯の巻かれた両手が頬にあてがわれる。
「親父さん! お袋さん!」
豪快は叫ぶと、勢いよく両膝を地に落とし、次いで両手をつき、最後に額を地にこすりつけた。
マミの両親のミイラは、突然のことにどう反応したものか分からず言葉も出ない。
「俺はマミに惚れた! 一目惚れだ! 頼む、マミを俺にくれ!」
しばらく間をおいて後、マミの父親ミイラが豪快の前に膝を付いた。
「顔を上げてくれ豪快君」
「親父さん……」
「あんた、もしかして、夕べの私らの話を聞いてたんじゃないのか?」
「……」
「そうか、やはりな……。豪快君。悪いことは言わん。今の話は聞かなかったことにする。このまま人間の世界に一人で帰りたまえ。モンスターと人間が結ばれた例は、神話の時代以降、一つもない。なぜだと思う?」
「……」
「幸せになれないからだ」
「……。親父さん」
豪快は顔を上げた。
「だったら俺が、神話の時代以降最初の、モンスターと人間が結ばれた例、最初の幸せな例になってやるぜ」
「しかしだな……」
「マミ!」
豪快は、ひざまずいたまま、マミを見た。
「俺と一緒に来てくれ。昨日、初めてお前を見た瞬間から、俺はお前に魅入られちまったんだ。ミイラだけにな。おっと、別に今のは駄洒落でも冗談でもないぜ。本気なんだ」
「で、でも私モンスターだし……」
「そんなの関係ないだろう。モンスターだろうと、人間だろうと、マミがマミであることに変わりはないじゃないか」
豪快はその力強い眼差しで、マミを見つめた。
マミは……、いや、もうマミの心も決まっていたのだ。
昨日、自分を四枚羽根の怪物の急襲から救ってくれたあの瞬間から、マミもまた、豪快という人間の大きさ、優しさに魅かれ始めていたのである。
「お父さん、お母さん」
マミは両親を見た。
その強い決意の現れた表情に、父親はもう何も言わなかった。
母親が口を開いた。
「お行きなさい。あなたが豪快さんと出会ったのは運命なのでしょう。幸せになるのですよ」
「約束するぜ、親父さん、お袋さん!」
豪快は立ち上がり、マミの横に行くと、その手を取った。




