21.ハーフモンスター掛橋絆VSスライムのライム
声のした方を見る。
誰もいない――と、思ったら――。
地面からぴょこっと芽が出た。
たちまち双葉が開き、本葉が開き、大きな花のつぼみが出来上がり……、きれいなピンク色の花が地表に咲いた。
そしてその花の中心からは女性の上半身が生えた。
さっき、ハピやマナを癒すエキスをくれた、アルラウネのルネだった。
「君はルネ」
「おまえはアルラウネ」
僕とライムは同時に声を出していた。
「アルラウネ、何のつもり? 横から手だし、口出しは無用よ」
僕に対しては敬語だったライムが、ルネに対しては強い物言いをしている。
「スライム。私は中立の立場です。聞けば勝負開始の合図を出す者が必要な様子。よろしければ、私がそれを出して差し上げますが?」
「おまえが合図を?」
「ええ。及ばずながら、審判役というところでしょうか」
「出過ぎた真似を……。まあいいだろう。どうせ勝負は一瞬でつく。審判など必要ないがな」
ライムは勝って当然の口ぶりだ。
勝負は一瞬か……。
確かにその通り。
僕が試してみたいある方法も、一瞬しか使えない。
「では、お二方の勝負を始めます。私が自分の葉を一枚、宙に放ります。それが地に着いた瞬間を戦いの開始ということでがいかがですか?」
ルネの提案に、僕もライムもうなずいた。
「それでは――」
ルネは、葉を一枚、宙に放った。
葉はゆらゆらと左右に揺れながら、ゆっくりゆっくり下降していった。
葉が地に着いた!
同時に、ライムが僕に跳びかかってきた。
おそらく、僕自身を自分の体で覆って自由を奪う気だろう。
僕はポケットからある物を取り出した。
それは母さんの包帯の切れ端。
『伸びろ! そしてライムの全身を包んでしまえ!』
僕は念じた。
僕が一か八か試してみたかったという秘策はこれなのだ。
ハピやマナの手当てをするにあたり、母さんの包帯の切れ端は、僕の思い通りに伸びたり巻いたりできた。
だからこれを、戦いに応用できないかと考えたのだ。
といっても、使い道は伸ばしたり巻き付けたりするだけだから、僕は話をうまくもっていって、相手を捕まえて自由を奪った方の勝ちという勝負をするように仕向けたのである。
包帯は、ものすごいスピードで伸びた。
僕の攻撃の意思を汲み取ってくれているようだ。
予想外の出来事に、ライムの顔が「あっ」という表情で固まる。
次の瞬間、伸びた包帯はライムの顔と言わず手足と言わず、胸も腹も腰も、全身をあっという間にくるんでしまった。
人の形となった包帯が、地上に落下した。
「く……、な、なんだ、これは、出られない?」
人の形の包帯が、じたばたと地面でもがく。
包帯だから、スライムの粘液が布の隙間から染み出してくるんじゃないかと不安だったんだが杞憂だった。
実は、捕えられている母さんを見た時、ドロドロの粘液の箱の中に捕えられていたのにも関わらず、母さんの体に巻かれている包帯が濡れていなかったのに気付いていたのだ。
母さんの包帯は、スライムの粘液を通さないのかもしれない。
そこに賭けた。
そして、僕のヤマは的中したのだ。
やった! 勝負に勝ったぞ!
「お、おのれ、掛橋絆! 人間の分際で小癪な真似を」
「ライム、残念ながら僕は純粋な人間じゃない。半分は君たちと同じモンスターなんだ。特別な力をもっていたって不思議じゃないだろう?」
「おのれ~~、茶番に付き合うのは終わりだ!」
ライムは僕に対しても敬語を使わずに叫んだ。
敬語は余裕の表れだったのだろう。
今のライムは必死ということだ。
沼の表面が盛り上がり、巨大な波の形となった。
それはどんどん岸辺に接近し、僕に対して覆いかぶさらんと襲ってきた。
そんな!
ライム、約束が違うじゃないか。
いくらなんでも、この何千トンだか何万トンだか分からない沼の全量を包帯でくるみ切ることはできないだろう。
ど、どうすれば!?




