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僕の美少女モンスター  作者: 秋保嵐馬
Ⅳ.僕が戦う美少女モンスター娘四天王
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20.戦いの条件

 中学校入学を機に、僕と母さん父さんとは離れ離れに暮らしている。

 一年以上会っていなかった母さんとの再会がこんな形で実現するなんて……。

 母さんは全身に包帯を巻いた状態で、半透明なドロドロの粘液に囚われていた。

「その包帯……、まさか母さんに怪我などさせていないだろうな?」

「あら、なにかの冗談? あなたのマミー(母親)はマミー(ミイラ女)でしょ。包帯は元からよ。怪我はさせていないわ。四人のモンスターの子たちと一緒。眠っているだけ」

「母さん!!」

 叫んだけど、母さんは反応しなかった。

「この沼の成分は私の体の成分と同じ。いわば、この沼全体が私自身のようなものなのよ。あなたのお母さんを……、そしてケンタウロスを助けたかったら、この私を倒すことね」

「その前に確認しておきたいんだけど」

「また? 確認事項がやたら多いわね」

「勝負事は、勝ち負けのルールをはっきりさせておかないとね」

「ルール?」

「そうだよ。どうなれば、僕の勝ちで、どうなれば君の勝ちかということさ」

「意味不明ね」

「分からないかい?」

 僕はこちらに余裕があるように笑って見せた。

 それまで余裕綽々だったライムの顔色が若干険しくなる。

「マミーの息子である僕は不死身なんだ。君に僕を倒すことはできない。君はどうやって僕に勝つつもりなんだい?」

「むう?」

「また、逆にどうなれば僕は君に勝ったことになるんだい? 君が僕の命を奪わなくても勝てるというのならば、僕が君の命を奪わなくても勝ち――ということが、当然成り立つはずだろう?」

 ライムは大声で笑いだした。

「ほほほほ……。何を言い出すかと思えば――。マミーの息子の掛橋絆さん。あなたには冗談のセンスもおありのようね」

「おほめにあずかり、どうも」

「確かに先日のセイレーンたちとの戦いにおいて発覚した、あなたが不死身であるという情報は、私たち強硬派モンスターの知るところとなっている。人間との共存をよしとしない我々強硬派にとって、モンスターと人間とのハーフであるあなたはあってはならない存在」

「……」

「だから亡き者にしようとしたのに、それができないのですからね。まあでもあなたさえ居ないことになれば、別に生命を奪わなくてもいいのです」

「じゃあ、どこかに永遠に閉じ込めておくとか? 僕を捕まえれば勝ちということかい」

「ほほほ……、捕まえる? まあ、簡単に言えばそういうことになるかもしれませんわね」

「ならば、僕の場合も同じ。僕が君を捕まえたら、僕の勝ちということだ」

「話の流れで、なんだかあなたが戦うみたいになっているけれど……、今度はこちらが確認させていただくわ。私の戦う相手は誰? まさか、掛橋絆さん、あなたご本人なのですの?」

「そうさ。見ての通り、ハピとマナは傷ついて戦えない。動けるのは僕だけだ」

「絆! ボクなら……」

 言いかけたハピを僕は「いいんだ」と制し、ライムへの言葉を続けた。

「スライムのライム。僕と君とで戦って、相手を捕まえた方の……、自由を奪った方の勝ちとするのはどうだい?」

「ふふふ……、いったい何を考えているのか相変わらず意味不明ですわ。身の程が分かっていないようね!」

 突然、沼の表面が盛り上がり、僕に対して覆いかぶさってきた。

「!」

 僕は「あっ」と言う間もなく、沼のドロドロに顔だけ出した状態でくるまれてしまった。

「ほほほ……。私はこのように、あなたを一瞬にして捕まえることができるのよ。これでは勝負にならないのではなくて?」

 僕をくるむ液状の物質は、じわじわと僕を締め付ける圧力を増した。

 息が苦しくなる。

 死なない体の持ち主とはいえ、苦痛は普通に感じるし、いったん命を絶たれれば、復活には時間がかかるのだ。

「う……、タンマ……、ちょ、ちょっと待ってよ。まだ、戦いの開始の合図をしてないだろう?」

「合図? いちいち面倒ね」

 ライムは僕の拘束を解き、僕の体を覆っていたドロドロを沼に戻した。

「ふー。じゃあ、ライム、あらためて勝負開始といこうよ。ところでさ、一つ条件があるんだけど」

「今度は何かしら?」

「体格のハンデを無しにしてほしい」

「体格のハンデ?」

「見ての通り僕の身長は一六五センチ。体重は五十五キロ。でも、君は沼の分まで含めると、いったい何キロあるんだい? 結構あるだろ」

「レディに体重を聞くなんて失礼よ」

「まあ、そこは勘弁してよ。だから君も体の大きさは五十五キロ以下にしてほしい。そうしないと、この沼全体である君を捕まえるなんて不可能だからね」

「ふうん?」

 しばらく間が開いた。

 スライムは何かを考えているようだった。

「いいわ。ではあなたのお望みどおりにしてあげましょう」

 ライムはそう言うと、沼の表面に両足首をめり込ませたままの状態で岸まで移動してきた。

 岸辺まで来ると、ゆっくり片足ずつ沼のドロドロの表面から抜き、地上に立った。

 青く透き通った半透明な体。

 僕とスライムのライムは至近距離で向かい合った。

 ライムの身長は僕より低い。

「ここには秤がないから体重は正確ではないけれど……。少なくともあなたより多いということはないわ。これでいかが?」

「いいよ、ありがとう」

「さっき言っていた、勝負開始の合図とやらはどうする気?」

「そうだね……」

 いろいろ口から出任せでここまで物事を運んできた。

 といっても、まったく策がないわけじゃない。

 一つだけ、試してみたいことがあるのだ。

 さて、それはそうと、開始の合図はどうしよう?

 誰かに出してもらわなければならないけれど……。

 こちらの味方であるハピやマナが合図するというのでは不公平だとライムが承知しないだろう。

 でもここには他に、合図を出してくれる者はいない。

「あの……、よろしかったら、合図は私がお出ししますが?」

 聞き覚えのある声がした。

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