4.僕のボディガードは……?
翌日の午後。
約束通り、ケイ、マナ、ハピは、名字に「橋」が付く昨日の三人――一年の本橋、二年の大橋、そして三年の上橋先輩――のボディガードに回ってくれた。
といっても、別に彼らと連れ立ってペアになって帰るというわけではなく、少し離れてついていくというような感じにすると言っていた。
僕は久しぶりに一人で帰る――はずだったのだけれど……。
「あ、あの、血祭さん?」
「冴」
「あ、そ、そうだったね……、じゃ、じゃあ、その、冴」
「なんだ」
「あ、あのう……、どうして僕と一緒に帰るのでしょうか……」
「別に一緒に帰っているわけではない。どうせ、途中までは同じ方向だろう」
「まあ、そうだけど……」
僕は隣を歩く、黒髪ツインテールの女の子を見た。
血祭冴。
同じクラスで僕の隣に座っている。
先に、ケイも僕の隣の席だと言ったけれど、つまり、僕の両隣が、陸守ケイと血祭冴なのだ。
「今日は、あの、うるさいケンタウロスたちもいないしな。ちょうどいい」
「え、ちょうどいいって、何が?」
「な、なんでもない! お、おまえ、人間のくせに耳いいぞ!」
「耳いいもなにも……、けっこうおっきな声でしゃべっていたよ」
「う、うるさい!」
「うるさいって……、冴のほうが声おっきいと思うんだけど……」
そんなやりとりをしながら僕と冴は歩いていた。
「掛橋絆」
「なに?」
「おまえ、カチューシャなんか付けているのか」
「あ、ああ、これ……。ケイたちに付けろって言われてさ」
僕のSOSをケイ、マナ、ハピに発信する大切なアイテムだ。
ただ、人目のあるところでは襲われないだろうから、僕は学校では外していた。
下校する時こっそり付けたのだけれど、冴には気付かれてしまっていたようだ。
「あいかわらず、ケンタウロスたちとは仲がいいのか」
さっきから、冴がケンタウロス、ケンタウロスと言っているのは、ケイのことだ。
僕のボディガードの陸守ケイ。
普段は普通の人間の姿をしているけれど、その正体は半人半馬のモンスター、ケンタウロスなのだ。
「まあ、普通というか……、普通に仲良くしているよ」
「なんだそれは」
「冴とだって……、普通に仲良くしたいと思ってるんだけどな」
「な、な、な、何を言う! バカを言うな!」
「わ、分かったよ……。いいだろ、そんな真っ赤になって怒んなくても……」
冴が歩みを止めた。
「?」
前を見る。
知らない女の子が立っていた。
この辺りは、家がまだ建てられていない空き地ばかりで、昼間でもあまり人通りがない。
夕方だとなおさらだ。
今、この場には、僕と血祭冴、そしてその女の子の三人だけだった。
その女の子は近くの高校の制服を着ている。
背が高く、ウェーブのかかった長い髪だった。
毛先をところどころハネさせているのは、そういう髪型だからなのだろう。
前髪で右目は半分くらい隠れている。
口元にはうっすらと笑みを浮かべ、だが、その目は対照的に、まるで獲物を狙う蛇のように鋭くこちらを睨んでいた。
ん?
蛇のように……?
「掛橋絆、さがっていろ」
「冴?」
「こいつはモンスターだ」
冴が僕の名を呼んだのを聞き取ったのだろう。
その女子高生は、うっすらと笑みを浮かべていた口を開いた。
「かけ……橋、かけ……橋か?」
小声でよく聞き取れない。
「橋」と言っているのは分かった。
この女子高生が、連続通り魔に違いない!
女子高生の体がボワンと煙に包まれた。
この煙!
ケイや、マナ、ハピがモンスター体に変身する時と同じものだ!
煙が消えると――。
そこには上半身が人間の女性、下半身が蛇となったモンスター、ラミアの姿があった。




