2.通り魔の正体は?
中学校の帰り、僕ら四人は倉橋が入院している病院へ行った。
倉橋は、頭と片腕、それと両足に怪我をしていた。
「よー、倉橋、元気か?」
「掛橋、見舞いに来てくれたのか……。見ての通りだよ。元気なわけないだろ」
「そういうわりには思ったより元気そうなんで、安心したよ」
「その子たちは?」
「ああ、僕の友達で、同じクラスの陸守さんに、隣のクラスの海守さん、空守さんだ」
「はじめまして」
「よろしく」
「たいへんだったね」
ケイ、マナ、ハピは、それぞれ倉橋に声をかけた。
「こんにちは。その子たちが、うわさの三人か」
「え、うわさ?」
やっぱ、他のクラスにもケイ、マナ、ハピたちのことは伝わっているんだな。
「掛橋がこないだから、いっつも女の子たち三人を連れて歩いているってことで評判だよ」
「そんな連れて歩いているだなんて……」
いろいろ言い訳しようかとも思ったけれど、まあ、いつもケイ、マナ、ハピと一緒にいるのは事実なので黙っていた。
倉橋は、それ以上女の子たちのことは話題にせず、僕らに椅子をすすめてくれた。
腰かけた僕に、倉橋は話し始めた。
「掛橋も気付いていると思うけど」
「うん?」
「犯人は名字に『橋』が付くやつを狙っている」
「やっぱり、そうなのか?」
「ああ……、俺、聞かれたんだよ。『……橋だな? ……橋だな?』って……」
「犯人にか?」
「ああ。よく聞き取れなかったんだけど……、俺、てっきり『倉橋だな?』って聞かれたんだとばかり思って『そうだけど?』って返したんだ。そしたら突然、襲ってきた」
「顔、見たのか?」
「いや、暗かったから顔までは……、だけど……」
「だけど?」
「警察にも話したんだけど、あんま信用されなかったみたいでさ、話したものかどうか……」
「なんだよ、教えてくれよ」
「犯人さ、女だったんだけど……、その……」
「その……、なんだ?」
「下半身がさ、蛇みたいだったんだよな」
「下半身が蛇ですって?」
ケイが反応した。
僕も一瞬にして悟るものがあった。
僕は目でケイに黙っているように合図を送り、倉橋の話を促した。
「警察は、襲われた恐怖で幻覚を見たんだろうってことだったんだけれど……、まあ、幻覚にしても妙にリアルだったんだよな」
「そうか……、もし、そんなモンスターみたいなのに襲われたんだとして……、倉橋、おまえよく助かったな? 大声で助けでも呼んだのか?」
「いや、腕とか足とか痛めつけられて……、最後に頭をやられたんだけれど、声を出すこともできなかった。気付いたら病院のベッドの上だったんだ」
病室には三十分くらいいただろうか。
あまり長居しても倉橋を疲れさせてしまう。
僕らは「お大事に」と言って、病室を後にした。
家への帰り道。
「ラミアね」
「ラミアって?」
僕はケイに聞き返した。
「あたしたちと同じ、半人タイプのモンスターよ。ラミアは下半身が蛇なの」
マナが代わりに答えた。
「ラミアが出てきたということは……、通り魔の狙いは、おそらく絆だね」
「僕なのか……、やっぱり……」
ハピの言葉を聞くまでもなく、病院で倉橋の話を聞いた時から、なんとなくそうじゃないのかなとは思っていたのだ。
「今回の相手は、絆君のことを詳しく知らないのかもしれない。知っているのは名字に『橋』が付くということだけ。だから、それに当てはまる同じ年頃の男の子たちを襲っているんじゃないかな」
「ケイの言う通りだとしたら、何だか僕は申し訳ないよ。僕のせいで名字に『橋』の付く人が襲われるなんて……」
「でも、それは絆ちゃんが悪いんじゃないわ」
「そうだよ。襲ってくるラミアのほうが悪い!」
「まあ、マナ、ハピの言うとおりであるかもしれないのだけれど……、でもなあ……」




