【肆】夏祭り妖怪デート<急>
その時、僕らの背後から、反対向きに風が吹いた。
風と風とがぶつかり合い、相殺された。
「?」
風の吹いてきた方を振り向く。
翼を振り終えた体勢で、ハーピーの姿になったハピが立っていた。
その隣には、マーメイドの姿となり、Jの字となって立つマナがいた。
嵐を司る能力をもつハピが、天狗の女の子がうちわで巻き起こした風に対抗して風を起こし、相殺させたのだ。
「絆、ケイ、大丈夫?」
ハピが僕とケイの頭上をひと羽ばたきして飛び越え、前に降り立った。
「えーい!」
天狗の女の子がもう一度うちわを振った。
ハピも翼を振り返す。
再び風と風とがぶつかり合い、相殺された。
「まだやる?」
「う……」
ハピに力を見せつけられ、天狗の子がたじろいだ。
一つ目の女の子が、単眼でこちらを睨みつけてきた。
「ハピ! 見てはいけない」
「え……?」
ケイが叫んだが、遅かった。
「う……、動けない!」
ハピは、一つ目の子の術中にはまり、僕同様動けなくなってしまった。
「びっくりさせてくれたわね」
「もうこれでこっちの勝ち~~」
「さあ、楽しく遊ぼう、お兄ちゃん、お姉ちゃん」
天狗の子、一つ目の子、ろくろ首の子たちが、ゆっくり近づいてきた。
♪~~
歌が聞こえてきた。
人魚の歌だ。
マナが歌っていた。
「う……」
「な、なに……」
「これは……」
マナの歌声に、今度は女の子たち三人が動きの自由を奪われた。
「ケイ! 今よ」
「オッケー!!」
マナの声に、大地を蹴ってケイは宙を跳んだ。
そして、動きを奪われた三人の女の子たちの前に降り立つと、矢を突きつけた。
「勝負あったよ」
「ごめんなさい、お兄ちゃん、お姉ちゃんたち……。私たち、人間と仲良くなりたくて……」
「それも私たちのことを妖怪と知ったうえで仲良くなってくれる人がほしかったの」
「そうしたら、人間でもモンスターでもない独特のにおいをもったお兄ちゃんが現れたから、つい……」
天狗の子、ろくろ首の子、一つ目の子は、それぞれ人間の姿に戻って草の上に座り、僕らに詫びた。
「ついって……、それで絆君にちょっかいかけたわけ?」
「うん……。お姉ちゃんのことは直ぐに人間じゃないって分かったんだけど、そのお兄ちゃんのことは判らなかったから、つい正体を確かめたくて……」
一つ目の子が、やはりこちらも人間の姿に戻っているケイを見上げた。
一つ目の子、今は顔半分が髪で隠れている。
「絆君には私たちがボディガードとしてついているんだから、今後はもうこういうことはやめてよね。今度やったら許さないわよ」
ケイは厳しく釘を刺した。
「ボディガードの割には、お姉ちゃん、けっこう私たちのこと見てびっくりしてたよ」
「に、日本の妖怪というかオバケは、どうも苦手なのよ」
ろくろ首の子に指摘に、ケイはあたふたする。
「君たち、名前はなんて言うんだ?」
ハピに問われ、妖怪の女の子たちは順々に名乗った。
「一瞳」
「首長ロコ(しゅなが ろこ)」
「天狗楓」
三人とも悪気があったわけではなさそうだ。
「瞳ちゃんに、ロコちゃんに、楓ちゃんか。僕は掛橋絆というんだ。実は僕は人間とモンスターのハーフでさ。君たちが僕に感じた独特のにおいって、だからじゃないかな」
「そうだったんだ……、どうりで」
首長ロコが首を伸ばして驚いた。
「ろくろっ首って首だけ伸びるんじゃないんだね」
「うん、手だって足だって、私、体のどこだって伸びるんだよ」
首長ロコが首に加え四本の手足を伸ばして見せた。
「わ、分かった、分かった……」
ま、まだちょっと慣れないかな。
「三人とも僕でよかったら友達になるよ。君たちが妖怪であることをちゃんと理解したうえでの友達にね」
「ほんと!」
「うれしい!」
「ありがとう、絆お兄ちゃん!」
一瞳、首長ロコ、天狗楓が目を輝かせて、僕に飛びついてきた。
「もう、絆ちゃんのことを“お兄ちゃん”だなんて……、ちょっと馴れ馴れしい感じい~~」
ぷーっと頬を膨らませたマナに、僕にまとわりついたまま瞳、ロコ、楓が言う。
「あ、人魚のお姉ちゃん、妬いてるの~~?」
「私たち、これから絆お兄ちゃんといっぱい仲良くするんだもんね~~」
「うん、絆お兄ちゃん、いっしょにお墓巡りとか霊場巡りしようね~~」
い、いや、お墓や霊場巡りはちょっと……。
「や、や、や……、妬いてなんかいるもん!」
マナが僕におぶさってきた。
「じゃあ、ボクも!」
ハピが僕の首にかじりついてきた。
「やーん、私の場所が残ってない~~」
い、いや、ケイまで来なくていいから!
そんなわけで、夏祭りの夜、僕に三人の妖怪の女の子の友達ができたのだった。




