【肆】夏祭り妖怪デート<破>
少し歩くと、しゃがみこんで泣いている浴衣姿の女の子を見つけた。
年の頃は、やはり小学校の三、四年生くらいか。
「君、どうしたの?」
「首が……、首が痛くて……」
「首が? 見せてごらん」
僕に言われ、女の子は首を押さえていた手をどけた。
けれど、辺りが暗い上に、浴衣の襟や髪の毛で隠され、女の子の首がよく見えない。
「よく見えないなあ。もうちょっと首を伸ばしてくれる?」
「首を? こう?」
女の子は素直に首を伸ばした。
首は五センチ伸び、十センチ伸び、三十センチ伸び、一メートル伸びって……、えっ?
女の子は首をどんどん伸ばして僕の周りを一周し、正面に自分の顔をもってきてにっこり微笑んだ。
「これでいい?」
僕とケイはまたまた悲鳴を上げた。
「「ぎゃああああっ!!」」
例によってケイは僕の腕をひっつかんで走り出した。
だ、だから、ケイ~~。
あまりのスピードに僕の体が浮いてます~~。
腕が抜けそうですう~~。
ますます森の奥深くに来てしまった。
「ケ、ケイ、ここどこ?」
「分からない。それより絆君、さっきのあの子たち何かな?」
「いやあ……。あれは日本のオバケ、妖怪だよ。一つ目に、ろくろ首だな」
「一つ目にろくろ首……。こないだのお岩さんの映画もそうだけど、私日本のオバケって苦手……」
「モンスターのケイたちが実在するんだから、日本のオバケだって実在するってことだよな……」
「ふふふ、そういうことよ」
僕の言葉に答えた声があった。
声の方を見ると――、さっきの一つ目の女の子に、ろくろ首の女の子、さらにもう一人女の子がいた。
ショートパンツで活発そうな印象を与える子だ。
その女の子は付けていた楓型の髪飾りを外した。
その髪飾りはあっという間に大きくなり、まるでうちわのようになった。
「お兄ちゃん、なんか変わってるわね。遊んであげる!」
うちわの子は、そう言うと、持っているうちわを振った。
そのとたん、ものすごい風が吹いた。
僕とケイはその風で、上空高く巻き上げられた。
「わわわーーーっ!?」
「絆君!」
空中でケイの全身がボワンと煙に包まれた。
その煙も直ぐに風で吹き飛ばされ、ケンタウロスになったケイの姿が露わになった。
「ケイ!」
空中で僕が伸ばした手をケイがつかんだ。
ケイは僕を引っ張り寄せて馬の背に乗せ、着地した。
「おまえたち、何者?」
ケイは僕を降ろし、前に立ちはだかって三人の女の子たちに対峙した。
「くっくっくっ……、私は『一つ目』」
「ろくろ首」
「そして私は『天狗』よ。お兄ちゃん、お姉ちゃん、遊びましょ」
一つ目の女の子の単眼が怪しく光った。
「は! いけない、絆君。見てはダメ!」
戦士としてのケイの勘が咄嗟に叫ばせたのであろう。
でも、一足遅かった。
僕は、単眼の放つ怪しい光に魅入られ、動けなくなってしまったのだ。
「ほらほら、ケンタウロスのお姉ちゃんも、私の目を見て」
ケイは片腕で自身の視界を遮っている。
そのケイに、ゆっくり一つ目の女の子が歩み寄ってきた。
「く……っ!!」
ケイは高く跳躍した。
「逃がさない!」
ろくろ首の女の子の両手が、びよーんと伸びた。
伸びるのは首だけじゃないのか!
腕の一本はケイの上半身に、もう一本は馬体の下半身にぐるぐると巻き付き、空中でケイをとらえた。
「ふふふ……、つーかまえた♪」
二本の腕に巻き付かれ、ケイは空中で身動きが取れない。
ケイは両手に弓矢を出現させた。
すばやく空中で弓に矢をつがえると、ろくろ首の女の子めがけて放った。
上空からびゅんっと音を立て、ろくろ首の女の子めがけて矢が飛ぶ。
「はっ!」
ろくろ首の女の子は、ケイの束縛を解くと、すばやく後ろに跳躍してその矢をかわした。
着地したケイが、再び僕をかばうように前に立ち、三人と対峙した。
相変わらず僕は動けない。
天狗の女の子が、再びうちわをふるった。
ケイは、吹き飛ばされないように両腕で僕を抱え、馬の四本足で踏ん張った。
風は吹き続けている。
向かい風の中、三人の女の子たちが、ゆっくり歩み寄ってきた。
僕をかばっている今のケイは手が離せない。
まずい!




