五、キャッチボールで大騒ぎ1
今日は物置の片付けをしていた。
「絆~~、これはどうするの?」
僕といっしょに片付けを手伝ってくれているのは、金髪に青い瞳のスレンダーな少女。
身長は僕とほぼ同じだけれど、町を歩いていたら、おそらく外国人のモデルか俳優か何かに間違えられるに違いない。
名前は空守ハピ。
今は人間の姿をしているけれど、その正体は半人半鳥のハーピー。
ケンタウロスの陸守ケイ、マーメイドの海守マナに続く、僕の三人目のボディガードだ。
ハピは、三角巾をかぶり、エプロンを着けていた。
大掃除用の格好だ。
ハピの外見にすごく似合っていなくて、その似合っていないところががまた可愛い。
ハピは抱えていたダンボール箱を床に置いた。
「あ、それは……」
中の物を見て、僕は郷愁にかられた。
入っていたのは、野球のボールにグローブなど、小学生の頃、僕がたまに家に帰ってきた父さんとキャッチボールをするのに使っていた道具類だったからだ。
「懐かしいな。これ、父さんとキャッチボールをするときに使っていたんだ」
「絆のお父さんって、たまにしか家に帰ってこなかったんでしょう?」
「うん。一年のほとんどを外国で過ごしていたから」
「これって、どう使うの?」
「こうだよ」
僕はグローブの一つを、ハピの左手にはめて上げた。
自分も残った一つのグローブを左手にはめると右手にボールを持った。
「投げるよ? それで受け止めて」
「こ、こう?」
ハピはグローブの手のひらを上に向けて構えた。
僕は下手投げで、ゆるいボールをそっと投げた。
ボールは小さな弧を描いて、すぽんとハピのグローブに収まった。
「ね、簡単でしょ? ハピもこっちに投げてよこして」
「よーし、いくよーーーー」
言うなり、ハピは思いっきり振りかぶった。
昔の野球マンガのピッチャーのように土煙を伴いながら高々と足を上げる。
え?
なに?
ちょ、ちょ、ちょ、タンマ。
至近距離からものすごい豪速球が放たれた。
「ぐわあああっ!!」
ずばあんと音を立てて、胸に構えた僕のグローブにハピのボールが収まったが、それだけでは済まず、僕はそのまま後ろに飛ばされて物置のガラクタの中へ突っ込んでしまった。
「き、絆、大丈夫?」
ハピがあわてて僕を発掘にやってきた。
「ひ、ひどいよ、ハピ。手加減してよ」
「ごめんね、絆」
ハピが差し出してくれた右手をつかむ。
ハピはそのまま僕を引っ張って立ち上がらせてくれた。
「だけどハピすごいな。うちの中学のソフトボール部に入れば? きっと直ぐエースになれるよ」
僕の服についたホコリをぱんぱん払ってくれているハピに言うが、
「やだよ。そうしたら絆といっしょにいられないじゃない。ボク、ブカツなんかやらない」
「そ、そうか……、そうだったね」
ハピの気持ちはうれしいんだけれど、彼女の青春時代の時間を僕が奪ってしまっていいものだろうかとも思う。
「ねえ、絆」
「なに? ハピ」
「もうちょっと、このキャッチボールというのをやらない? 外でさ」
へえー、ハピちょっと気に入ったんだ?
「いいよ。じゃ、近所の公園に行こう。あ、でも今みたいなのはなしだよ。手加減してよ」
「分かってる、分かってる」




