四、ジョギングで大騒ぎ1
「マナ~、早くーー。行くよーー」
玄関先から、マナを呼ぶ。
「あ~ん、絆ちゃーん、待って、待ってーー。今、行くから」
マナが、とん、とん、とん、とんと、階段を降りてきた。
朝、ときどきこうして僕とマナはジョギングをしている。
海守マナ。
一見、普通の中学二年生の女の子だけれど、その正体はマーメイド、人魚だ。
ご存知のようにマーメイドは下半身が魚だから、足が無い。
マナは今は人間に化けているけれど、もともと足の無い彼女は、足を使うのが苦手だ。
特に走るのが遅い。
僕を守るボディガードとしては、人間体のときにもできるだけ速く走れたほうがいいということから、マナはこうやって自分から走る練習を始めたのである。
僕を守ってくれるためにマナがやってくれていることだ。
僕もマナに付き合っていっしょに走っているのだ。
早朝の町を走るのは気持ちがいい。
マナは足が遅いから、彼女のペースに合わせてゆっくり走ってやる。
それでも、日に日にうまくなり、走るのもだいぶ速くなってきた。
「マナ、だいぶ上達したじゃないか」
「ほんと? 絆ちゃんのおかげだね」
走りながら嬉しそうに微笑むマナ。
足は遅いけれど、息は切れていない。
やっぱり人間と違って体力あるんだな。
公園に着いた。
ここではいつも柔軟体操をしている。
お互いに背中合わせになり、両手を挙げ、手首を持って相手を自分の背中にかつぐ。
かつがれたほうは、体が上から下まで伸びて気持ちいい。
僕の身長は一六五センチ。
マナは一五〇だから、身長差は十五センチだ。
「あ、あ、あ~~ん、きくう~~」
僕の背中の上でマナが声を出す。
「マナ、ヘンな声出さないでよ」
「だって、気持ちよくて声出ちゃうんだもん」
「……」
僕はマナを降ろした。
今度はマナが僕をかつぎ上げる番なのだけれど……。
小柄なマナが大丈夫かなと思うが、これが大丈夫なのだ。
さっきも言ったけど、見かけより力がある。
「どう? 絆ちゃん、気持ちいい?」
マナが僕を上下に動かしながら聞いた。
「う……、う……、うん……、ほんとにきくなーー」
「絆ちゃんだって、ヘンな声出してるよ」
「う……、う……、だって……、分かった、降ろしてくれ~~」
マナが僕を降ろした。
「「ふーー」」
二人同時に息を吐く。




