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僕の美少女モンスター  作者: 秋保嵐馬
Ⅱ.僕のボディガードの美少女モンスター娘
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三、プールで大騒ぎ3

「ケイ、だいぶ上達したね。ちょっと休憩にしようか」

 僕はケイを待たせ、いったん男子更衣室に戻ってロッカー内の自分の財布から硬貨を取ると、ケイといっしょに飲み物の自動販売機のところに行った。

「飲み物買おう。ケイ、何がいい?」

「えーー、どれにしようかなーー」

「僕はコーラにするよ」

 僕は硬貨を入れ、ボタンを押した。

「ねえーー、絆君。このキャロットってなーに?」

「キャロット――、ああ、にんじんだよ」

「にんじん!」

 ケイが目を輝かせた。

「私、これがいーー」

 そういえば、「馬ににんじん」とか言うけど、半人半馬のケンタウロスだけに、ケイもにんじんが大好きなようだ。

 ベンチに並んで腰かけて飲んだ。

 プルタブを開けて、ケイがキャロットジュースを一口飲む。

 ?

 ケイの肩が震えていた。

「ど、どうしたケイ?」

「……いしい」

「へ?」

「おいしい~~よ~~、絆君!!」

 ケイは、キャロットジュースのあまりの美味しさに、体が震えるほど感動したらしい。

 頬は赤らみ、目は涙ぐんでいた。

「そ、そう? それは良かったね」

 喜んでくれたのは、すごく嬉しいけど、この人並み外れた喜びように(まあ、人じゃないんですけど)若干引く。

 あと少しで僕のコーラが飲み終わるというとき、ケイが話しかけてきた。

「ねえ、絆君」

「ん?」

「私、コーラも飲んでみたい。絆君の、一口ちょうだい。私のも上げるから」

 ケイがにこにこしながら、僕にキャロットジュースの缶を差し出してきた。

「え……」

 僕は一瞬戸惑った。

 それって……、か、か、か、間接キッスじゃないか!

 そ、そんな、いいのか僕!

 健全な男子中学生にあるまじき行為なのではないだろうか。

 で、でも、ここで拒否ったら、ケイが悲しい顔をするのは目に見えている。

 ここは人助け、いや、馬助けだと思って――。

「い、いいよ」

 僕も持っていたコーラの缶をケイに差し出した。

 緊張してちょっと声が上ずっちゃったよ。

「ありがと」

 ケイがにこにこしながら缶を交換した。

 何のためらいもなく、ケイはコーラを飲んだ。

 僕は、今、自分の手にあるキャロットジュースの缶を見た。

 たった今まで、ケイがこの缶に口をつけてジュースを飲んでいたのだ。

 な、なんだか不必要にドキドキしてきたぞ。

 い、いかん、落ち着け、僕。

 ケイはすごく自然に飲んでいたじゃないか。

 そういうふうに、自然に飲めばいいんだ、自然に。

 僕は、ゴクッと一気に飲んだ。

「!」

 飲んだ瞬間、僕はあることを思い出した。

 僕……、にんじん苦手だったんだよ……。

「絆君、コーラも美味しいね」

 ケイったら、ほんとににこにこ上機嫌。

「あ、ああ、そうだね。こっちも美味しかったよ……」

 僕は目尻に涙をにじませながら微笑んだ。

「やっぱりいいーー? 絆君もやっぱ感動したでしょーー!」

 ケイは、僕がケイ同様、キャロットジュースの味に感動して涙を浮かべたとすっかり勘違いしたようだった。

 二人分の空き缶を捨てて戻ってくると――、ベンチに座っているケイの前に二人の男が立っていた。

「なーー、君、一人なの?」

「俺たちと遊ばない? 楽しいことしよーよー」

 ナンパだ!

 大変だ、ケイがナンパされている。

 年齢は高校生くらいか。

 ガラが良くは見えない。

 こわい。

 け、けど、これは放ってはおけない。

「ケ、ケイ、お待たせーー」

 僕はきわめて自然な感じを装って、声をかけた。

「あん、なんだてめーは?」

 二人の内の一人、頭を針の山みたいにツンツンに尖らせた男が僕をぎろりとにらんだ。

「と、友達です。じゃ、じゃあ、僕たちもう帰るんで……」

 僕はケイの腕を取って立ち上がらせようとした。

「おい、てめー。俺たちは今、この子とお話し中なんだよ。勝手なことすんじゃねーー」

 もう一人のロン毛の男が僕を突き飛ばした。

 僕は、よろめいて尻餅をついた。

「帰るんなら一人で帰んな」

「この子は後で俺たちが、ちゃーんと送っていってやっからよ」

 二人の男はへらへらと下品に笑った。

「……に、なにすんのよ」

 ケイが何かつぶやいた?

「絆君に何すんらーーーー!」

 ケイはそう叫ぶと、ツンツン頭の男の顎に強烈なハイキックをくらわせた。

 あわれ、ツンツン頭は、弧を描いて宙を舞うと、頭からドボーンと水中に落下した。

 人間の姿をしても、正体は半人半馬のケンタウロス。

 「馬に蹴られて死んじまえ」という言葉があるが、馬だけに、ケイの蹴りは強烈だ。

「わ、わ、わ?」

 ロン毛がびびって数歩後ずさりした。

 その男の腹に、ケイはローリングソバット(空中後ろ回し蹴り)を炸裂させた。

 蹴り飛ばされたロン毛は悲鳴も上げられず水面を何回か跳ねた後、沈没した。

「ケ、ケイ、やり過ぎだよ~~」

 近づいた僕を、ケイがぎろっと見上げた。

「やりふぎ? なんへ?」

 はい?

 ど、どうなっているの?

 なんだかケイは頬を紅潮させ、焦点の定まらない目付きになっている。

 これってまるで……、酔っ払ってるみたいじゃないか。

「あいふらが、わういのよ。きすなくんに、らんほーするから」

 きすなくんて……、だめだ、ろれつが回っていない。

 ケイったら、完全に酔っ払っている。

 でも、なんで?

 お酒なんか飲んでないし……、も、もしかして今飲んだ、キャロットジュースかコーラが原因なの?

「きすなくーん。わういやふらは、おっはらいまひた。さあ、およきのれんすーひまふよ」

 な、何を言ってるのか分からない。

 と、とにかく酔っ払った状態で水泳なんかよくないよ。

「あ、あのね、ケイ。ちょっと落ち着こうね」

 僕はケイをベンチに座らせた。

「きすなくんは、なにがあっへも、わらひがまもうから……」

「あ、ありがとう。感謝するよ。でもさっきみたいに人間相手に本気にならないで」

「……」

「ケイ?」

 ケイの首がかくんと揺れて、僕の肩に乗っかってきた。

 あ、あれ?

 静かな寝息が聞こえてくる。

 も、もしかして寝ちゃったのーー?

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