ニ、老人とみなしごモンスター9
ケイと蘭の激闘からしばらく経って……。
「じーちゃん、行ってらっしゃい」
「ああ、行ってくる。稔もしっかり学校に行くんだぞ」
「ああ、任しとけ」
アパートの一室から、老人と幼い男の子がこんな会話をしながら出てきた。
老人は牛雷重蔵さん。
そして男の子は、牛雷稔だ。
重蔵さんはいつものように工事現場へ。
そして、稔はモンスターの世界の学校に通うことになったのである。
先の戦いで、ケイと蘭が引き分けたことで、戦いの立会人だったラキとカナが妥協案を示してきたのだ。
稔がモンスターの学校に通い、自身の能力について学ぶことを条件に、今まで通り重蔵さんのもとで暮らすことを認めることにしたのである。
重蔵さんにいきさつを話すと、なんと重蔵さんは稔の正体を知っていた。
稔が赤ちゃんのころ、神社に捨てられていたのを拾って育てたのだそうだ。
そのとき、赤ちゃんの稔には牛の角が生えていたそうで、重蔵さんは牛頭(ごず――頭が牛で体が人間の妖怪)だと思ったそうだ。
妖怪とはいえ、捨てられているのを不憫に思った重蔵さんは、その赤ちゃんを稔と名づけ、男手一つで人間の子として育てていたそうなのである。
二人を少し離れたところから、僕とケイは見ていた。
「ケイ、これで良かったんじゃないか」
「……。そうね、稔君がきちんと自分の力について学ぶというのであれば、知らず知らずの内に力を発動させてしまって人間たちに迷惑をかけるということも無くなるでしょうし……。でも、絆君、」
「え?」
「なんで、私と蘭の戦いを止めたの? 私、蘭と決着つけたかったのに」
「ははは、ご免」
「私が負けると思った?」
「まさか。もちろん、ケイが勝つと思ったさ」
「ほんと? じゃ、なんで」
「いや、あのままじゃ、蘭が大怪我すると思って……」
「あ、絆君! 蘭のコト、心配してたんだ?」
「い、いや、違う違う、そうじゃなくてだな……」
言葉につまった僕は駆け出した。
「あ、逃げた! 待てーー」
ケイが僕を追いかけてきた。
また、僕の身の回りにモンスターの仲間が増えた。
稔は、生粋のモンスターだけど、僕同様、元は自分を人間だと思っていたモンスターだ。
僕はこれから「自分を人間だと思っていたモンスターの先輩」として、いろいろと稔の相談なんかにものってやろうと思っている。




