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006




花音「私、大変な事をしちゃった…


ただパパに私だけを見て欲しかった、

それだけなのに…どうしよう。


このままじゃパパが死んじゃう。」



花音の感情とは裏腹に

左腕の脈拍が速まる。


花音は血だらけの手でぎゅっと掴んだ。



父「花音。今のその気持ち、絶対に

忘れちゃだめだ。やってからでは

もう取り返しがつかないんだよ。


パパが死んだら悲しいと思うように、

他の誰かを刺したらその家族は悲しむ。


だからもう、絶対にこんな事するな。


その腕、そうだ…その腕が悪いな。

パパの腕時計を肌身離さず付けなさい。

花音が悪いことを考えた時、

パパがその邪念を抑えてやる。


いつもパパがそばにいる。

その事を忘れるな。約束だぞ。


花音、葉子。愛してる。」




父はその言葉を最後に、

息を引き取った。



救急車のサイレンと、

母の泣き叫ぶ声が響き渡る。




花音は耳を塞ぎ、座り込んだ。












二人は父との約束を守り、


正当防衛だったと主張した。



母は最愛の夫を娘の手によって

失ったショックと、


事実を話せないストレスで

記憶喪失になってしまった。





記憶喪失の母は、


夜になると

「誰か化け物を殺して…」と

毎日泣きながら言うらしい。




花音は適切な過程を経て、

児童自立支援施設に行く事になった。




支援施設へ向かう車内で、

窓の外を眺めながら

父の最期を思い出していた。



左手につけたパパの腕時計の文字盤を

ゆっくりと、何度も撫でる。





花音「パパ…私、頑張るね。」と


小さく決意を呟くと、


花音を乗せた車は

真っ白な紫陽花がうんと咲き誇る

寺を通過した。



花音「真っ白な紫陽花…初めて見た。」



そう言うと、花音の右耳から


『白は真っ赤に染めないと。』と


恐ろしく低い、知らない男の声がした。




花音は思わず右耳を抑える。



その声は


『本当はあの時、赤く染まっていくのを

綺麗だと思っていたくせに。』



と、花音に言い放った。

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