その41
お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
本当はあのまま「キス」したかった。
多分、メグちゃんも僕と同じ気持ちだったんじゃないかな。
けれども、そう簡単にはいかなかった。
僕達以外、誰もいなかった静かな住宅街が、遠くから急に騒がしくなってきた。
その音は早く近づいてきた。
「待て〜!こら〜!待て!待て!待て〜!」
声が聞こえる方を見ると、1人の男らしき人物が角を曲がって、こちら側に走って来る。
その後ろを、制服の警察官が2人追いかけている。
「待て〜!こら〜!待て〜!」
僕はメグちゃんに「ちょっと後ろに隠れてて!」と告げると、咄嗟に体が反応した。
走って逃げてくる人物に、横から腰めがけて体当たり。
ラグビーやレスリングの選手の様に、思いっきりタックル。
こんなことをしたのは、生まれて初めてだったけど、でも、今、やらねばならぬと思ったんだ。
ドン!ズサササササーッ!
上手く相手を倒したまま、僕は必死に相手にしがみつき「離すものか!」と、全身に力を込めた。
体がやけに痛い。
それでも、今、この手を離してしまったら、逃げてきたこいつがまた逃げてしまう。
警察官が追いかけているこいつ。
絶対に離すもんか!
どのぐらいの時間だったんだろう?
きっと、短い時間だったに違いないと、思うんだけど。
駆けつけた警察官が素早く、逃げてきた人物を更に押さえ込み、動けなくなったところで手錠をかけた。
そのタイミングで、駆けつけたもう1人の警察官が、逃げてきたやつを必死で掴まえている僕の背中を、軽くトントンと叩きながら優しく声をかけてくれた。
「ありがとう!もう大丈夫だから。犯人は無事に捕まえたよ。本当にありがとうね。君、怪我が…。」
そのまま、僕は到着した救急車に乗せられ、夜間救急の当番病院へ。
処置室で怪我の手当てをしてもらった後、頭を打ったかもしれないからと、念の為、脳のCTの検査などを済ませた。
ベッドで少しだけウトウトしてしまったらしい。
目を覚ました時、傍にメグちゃんとメグちゃんの両親、そして、僕の両親がいてびっくり!
「大丈夫?」
メグちゃんは涙顔。
「う、うん…大丈夫…てててて…。」
「怪我してるから、無理しないで…。」と、心配顔の母。
「錦、お前、すごいなあ!お父さん、びっくりしちゃったよ!だけど、ちょっと無茶したなあ。」と、笑いながら困った様な表情の父。
メグちゃんのお母さんが切そうな顔で「でも、ホント!住田君、すごかったのねえ。でも、もうあんな危ないことしないでね。お願いね。」と。
続けて、メグちゃんのお父さんが「住田君の活躍のおかげで、犯人も無事に逮捕できたって!良かったねえ!偉いなあ!住田君!」と言った。
「え?逮捕?」
聞くと、メグちゃんの家から程近いアパートの駐車場で、激しい口論をしていると警察に通報があったそうで。
通報を受けた警察官が到着すると、揉み合っているうちの1人が、いきなり刃渡り20センチほどのナイフを取り出し、暴れる様な形で相手を切りつけ、更に、駆けつけた警察官のうちの1人にも斬りかかったらしい。
その後、刃物を持ったまま、走って逃走。
その途中で、僕に横から激しいタックルを受けて、2人とも地面に叩きつけられた形で倒れ込み、そこへようやく追いついた警察官が、逃げた犯人に手錠をかけて逮捕となったって。
「えーっ!そ、そうだったの〜?あいたたたたた…。」
そう言えば、体中、ものすごく痛い。
見ると、あちこちが包帯だらけ。
タックルした際、犯人に肩を刺されたらしい。
だからかあ、痛い訳だ。
でも、僕はそれだけじゃないと気づいた。
花火大会の待ち合わせで、みんなと合流する寸前、横から飛び出てきたちびっ子を避けて、派手にすっ転んだことを。
あ…あの怪我も…。
この日は、このまま、病院で一夜を過ごした。
最後まで読んでくださり、本当に本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き読んで頂けたら、とってもとっても嬉しいです。どうぞ宜しくお願い致します。




