その23
お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
午前中、1人、水中メガネをつけてバシャバシャと激しい水しぶきをあげながら、下手くそながらも必死にクロールの練習をしていた一文字。
途中、何度かフロートに寝そべってぷかぷかと漂っていた、ベルウッドのところで休んでいたけれど、相当疲れていたようで、お昼を食べた後、テントの中で爆睡していた。
「あんなに泳いでたから、よっぽど疲れちゃったんだね。」
起こさずにそうっと出掛けて戻ると、全身汗だらけの一文字は、何を思ったか再び海で泳いでくると、水中メガネを装着すると、テントから一直線に海へ。
「あいつ、大丈夫かねえ。」なんて、タープの中からもう半分以上なくなってしまって、ほぼ色のついた甘い水になってるかき氷を食べながら、みんなで様子を見ていると、陸に対して横に泳いでいた一文字の動きがどうもおかしい。
「ヤバいんじゃない?」
誰かがそう言うか言わないかのタイミングで、男ヤマシタがテントから飛び出した。
僕達もすぐさま後を追って海の中へ。
かろうじて足がつく場所で、一文字は何か必死にもがいている。
「どうした?大丈夫か?」
なんとか水面から顔を出している一文字は、出せるだけ精一杯の声で「足攣った!」と。
ええええええ〜〜〜〜っ!
大変!大変!えらいこっちゃ!
あたふた動揺している僕らをよそに、男ヤマシタはスッと一文字の脇の下に入ると、肩を貸す形で、そのままやつを連れて陸へ泳ぎ出した。
僕らも何か手伝えないものかと思ったけれど、特に何も手伝えそうなことはなかった。
男ヤマシタ1人で、十分だった。
テントまで無事に辿り着くと、すぐさまベルウッドが荷物の中からスプレー式の湿布をシュー!
いっぱい泳いで、いっぱい食べて、いっぱい寝ちゃって、汗かいて…そのせいで、体の水分が足りなくなって、足が攣ったらしい。
坂口メグちゃんが、ベルウッドのクーラーボックスに入っていた水を渡すと、一文字のやつ、痛みで顔を歪ませながらもごくごく喉を鳴らして一気飲み。
「大丈夫?シンゴ君。」
「あ、ありがとう…メグちゃん…多分、平気…。」
みんなは「あ〜、よかったあ」って安堵したけど…僕だって、確かに安心したさ。
だけど…だけど、ちょっとだけ…坂口メグちゃんが、一文字のこと「シンゴ君」って言って、やつに優しくしてるのが…いいんだけど、いいんだけど…なんか、ちょっぴりムカついてしまった。
それと一文字のやつ、水を受け取る時、坂口メグちゃんの手、ちょっと触ってたよね。
それに「メグちゃん」って馴れ馴れしく呼んで。
あの場合、しょうがないんだろうけど…でも…なんか…ちょっと…ヤダなって思った。
なんでかな?
他のやつだったら、全然気にならないのに。
なんでだろう?
泳いでる途中で足が攣って、一文字だって痛いし、辛いだろうけど。
坂口メグちゃんの態度も、なんだかちょっと嫌だった。
一文字に接するその優しさが、なんだか見るのも嫌だって思った。
そんなこと思うのは変だってわかってるさ。
酷いって、自分でも思う。
そんなのわかってる!
わかってるんだけどさ。
だけど、なんかわからない黒いモヤモヤが、僕の心の奥の方で小さくいやらしく疼くのだった。
最後まで読んでいただき、本当に本当にありがとうございました。お話はまだまだ続きますので、引き続き読んで頂けたら、とってもとっても嬉しいです。どうぞ宜しくお願い致します。




