表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/40

王宮の図書室にて 1

 『慈愛の賢者様』と呼ばれる存在の元へと向かう意向を王に告げたものの、すぐに出発することは出来ない。『慈愛の賢者様』は特別な存在なので、会いにいくのには準備が必要なようだ。

 そのため、準備が終わるまでの間に王宮の中にある図書室で本を読ませてもらうことにした。王宮内の図書館は許可を得ているものしか入ることが出来ず、なおかつ貴重な資料も多いらしい。そこに入る許可をもらえているのは俺が『迷い人』であるかららしい。……『迷い人』であるというだけで、この国の人達は良くしてくれている。

 幸い文字も不思議と読めるので、本当に助かっている。

 案内をしてくれたアラマさんは、俺が読みたい本を一緒に探してくれている。

「『森の賢者様』や『迷い人』、あとはエルフについてや魔術についての本ですね。まずは、『森の賢者様』についてのものを探しましょうか。最も『森の賢者様』に関するものはあまり数がありませんが。あとは考察なども多くあるようなので、話半分で読んだ方がいいかもしれません」

「そうなんですか?」

「はい。『森の賢者様』は表舞台にあまり出てこないのです。基本的に聖地から出てこないので……。それは『慈愛の賢者様』以外のハイエルフの方々、全員に言えることなのですが……」

 『慈愛の賢者様』以外のハイエルフはほとんど出てこないので、本当ではないことも書かれている可能性があるらしい。それにしても長い間、ずっと同じ場所に留まっているって飽きないのだろうか。俺はまだ十数年しか生きていないからそんな風に長く生きている人の気持ちは分からない。

 まずは『ハイエルフについて』という本を手に取った。これは十数年に一度新しい版が出されているらしい。それが此処では初版からそろっているようだ。

 ハイエルフはエルフの上位種である。エルフが人間の三分の一の速度で成長していき、三百年から四百年生きるのに対し、ハイエルフは寿命がないにも等しい。

 ハイエルフは『森の賢者様』セイナ、そしてその夫であるフランツ、エルフの祖である『守護神』アキヒサ、『慈愛の賢者様』アレイシアの四人のみであるということ。

 詳しくは解明されていないが、『森の賢者様』は一時期『魔女』と呼ばれていることもあった。『聖域認定事件』と『賢者の侵略事件』、『神の怒り事件』が『森の賢者様』を語る上で欠かせない事件である。

 まず『聖域認定事件』とは、500年ほど前の出来事らしい……。この国の前身であった王国は帝国で戦争を起こしていた。その中でハイエルフであったフランツとアキヒサを国が利用してらしい。戦争の道具に利用され、そのことに怒ったセイナが恐怖を植え付けたらしい。その教訓を踏まえて、この国では『迷い人』を利用するべからずとなっているようだ。

 戦争で利用されるとか、なんて物騒な。国を震え上がらせたことに関してはどんだけだよと思っていたけれど、そういうことを起こしてくれなかったら、俺は利用されていたのかもしれないと思うと感謝しかない。それに仲間のために怒って行動を起こすということは、良い人なのではないか、優しい人なのではないかとも思った。実際がどうかは分からないけれど。

 でもそうか、寿命がなくて強い力を持っている。そんな存在、利用したい人間は多かっただろう。『森の賢者様』は他のハイエルフが存在するより前からこの世界にいたようだし、たった一人だけのハイエルフって孤独だったんじゃないかと思った。俺だったら突然、異世界にやってきて寿命がないにも等しいってなったら孤独で自殺でもしそうだ。

「―—この事件で聖域と認定されたんですね」

「そうですよ。その一件が起きたことで私たちはハイエルフには手を出してはいけないと実感したのです。手遅れになる前に学ぶ事が出来て良かったと思います。ハイエルフの方々はやろうと思えば私たちのことを簡単に殺せますから」

 ……簡単に殺せるとかさらっと言われると恐怖しかない。この世界は本当に人の死が軽いんだと思うと、少しだけ怖くなった。

「……そういえば、元となった国の王妃様が『迷い人』だったっていうのは、それの資料があるんですか?」

「随分昔のことなので資料も残ってないのですが、その王妃の日記の一部があるんですよ。ただ王妃であったアリサの主観が含まれているようですが……、『森の賢者様』の元へ行ったという記録があるんです」

「それって見れますか?」

「はい。ただ、古いものなので禁書庫の方に置いてあるので……、それは陛下にまた許可をもらってからになるかともいます」

「そうなんですね」

 『迷い人』としてこの世界に落ち、王妃となって、生涯を終えた人。……その人が『森の賢者様』の元へ向かった時、『森の賢者様』は何を思ったのだろうか。そして本当に俺は此処から帰れないのだろうか。

 帰れなかったらどうしようかという不安をぬぐうために首を横に一度振った。

 そして『賢者の侵略事件』の項目を見ることにした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ