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王宮の図書室にて 2

 『賢者の侵略事件』って名前からして物騒過ぎる。侵略ってなんだ、と思いながら恐る恐る読む。

 その『賢者の侵略事件』の詳細はこうだ。元々この大陸、フィリネス大陸しかこの大陸の人達は知らなかったらしい。しかし、二百年近く前にアースガルト大陸というのがある事が発覚した。その大陸では人体実験により獣人や竜族が生まれたらしい。……って、人体実験で生まれたのか。なんて恐ろしいことを……。

 この世界のエルフや獣人や竜族って、地球で見るファンタジー世界の竜と交わってとかそういう神話とかじゃないんだよな。エルフはハイエルフのアキヒサが人と交わって出来たって話だけど……獣人とかは人体実験だし。こういう歴史を全て知っていると思うと、『森の賢者様』ってすごいんだなと思った。

 昔エルフは迫害されていたらしい。それで獣人や竜族は同じように迫害されていたので、『森の賢者様』の元へ向かったらしい。その嘆きを聞いて、アースガルド大陸で力を見せつけた。……別の本には森にやってきた獣人や竜族が『森の賢者様』を怒らせて報復されたとも書かれているけどどっちが正解なんだろうか。その結果、アースガルド大陸でも『森の賢者様』は恐れられているらしい。

 ……二つの大陸で手を出してはいけないと認知されているって、ヤバい存在だとしか思えない。

「アースガルド大陸に私は行ったことがありませんが……、向こうの大陸からやってきた人達も『森の賢者様』のことは伝えられているようです。美しい見た目をしているが、とても恐ろしい存在だと。銀色の髪を持つ美しい女性がいたら、粗相を犯してはならないと」

「……凄いですね」

「ええ。凄い方です。色んな諸説はありますが、『森の賢者様』がアースガルド大陸で侵略事件を起こしたからこそ、現在獣人も竜族も平和に暮らすことが出来ています。結果として獣人や竜族を救った形になっているので、獣人や竜族たちにも敬われているようです」

「にもってことは、他の人にもですか?」

「はい。ハイエルフは……特に『森の賢者様』は魔術師たちにとっては信仰の対象です。またエルフに関してはハイエルフのことを祖先として敬っています」

 ……もはや神様か何かって感じなのかもしれない。魔術師たちに『森の賢者様』はとても敬われているらしい。それだけ凄い魔術を使えるってことなのだろう。そんなに凄い魔術が使えるのならば世界を渡ることだってできるんじゃないかと思ってしまう。

「最も、今は宗教はないですけどね。一度つぶされてしまったので、個人個人で信仰する形に変わっていますので」

「……つぶしたっていってましたもんね」

 そう言いながら『神の怒り事件』の項目を見る。この事件が、先日アラマさんが教えてくれたセイアーツ教がつぶされた事件のことだ。セイアーツ教にとっての神であった『森の賢者様』がセイアーツ教をつぶした事件。

 『慈愛の賢者様』と今は呼ばれているアレイシアは、その当時、ハイエルフだと知られていなかった。エルフに擬態して、聖地を出て旅をしていたらしい。髪の色で判断しているってことは、髪の色を変えられる魔術があるのだろう。そうなると、もしかしたら聖地から出てこない『森の賢者様』もエルフとして街にいることはあるのかもしれない。

 エルフにしては力があるとみられた『慈愛の賢者様』は後に夫となる人間の男を人質に取られて、セイアーツ教に軟禁された。それに怒った『森の賢者様』はセイアーツ教を徹底的につぶした。セイアーツ教の者達を殺したとされているらしい。皆殺しか……、怖いな。

 でも娘が軟禁されたら親として怒るのは当然だと思う。そういう意味では長く生きていても感情がないとかはなく、人間らしいと思った。

 その後百五十年、『森の賢者様』は表舞台に出てきてないらしい。数百年に一度、世界に響かせるような出来事を起こしているのか。

 ハイエルフのセイナとフランツの娘がアレイシアとつながりはあるわけだけど、このアキヒサというのはハイエルフと血のつながりはないのだろうか。同じハイエルフだけど、家族とかではないのだろうか……。あとセイナとアキヒサって名前は日本人だろうかと思えるけど、フランツに関しては明らかに外国の人だろう。昔いた王妃のアリサって人も日本人かもしれないし、日本人が多いのだろうか。

 それにアリサって人は人間として落ちてきて、俺はエルフになって、セイナはハイエルフになったって、どういう基準何だろうか。異世界に渡る時に何か秘密があるんだろうか……。

 本を読んだら、何だか沢山の事が気になってきた。これも『森の賢者様』に聞いたら分かる事なのだろうか。

「『森の賢者様』についてはこのくらいですね。次は『迷い人』についての本を持ってきますね」

 アラマさんがそう言って、本を探しに向かった。




 

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