国王への挨拶とか色々。
王都にたどり着いた俺は、グラニーさんと共に王宮に案内された。
王宮……なんてもの日本に住んでいた俺が行く事なんてまずないわけで、心臓なんてバクバクである。手と足が同時に出たりしてしまうレベルの緊張具合だった。
「……カ、カグラよ、そんなに緊張しなくていい」
なんて言っているグラニーさんも緊張した様子だった。グラニーさんは貴族の中でも下級に位置する貴族らしくて、王宮にはそうそう訪れないらしい。
……何だか俺だけじゃなくてグラニーさんも緊張しているんだと思うと、少しだけ落ち着いた。
豪華な客室に案内された俺は甲斐甲斐しく侍女さんに世話をやかれている。グラニーさんは別の部屋に案内されたようだ。このまま俺は王宮に泊まるらしい。
少し休んだ後に、王様への謁見ががあるとか言われた。……マジで不敬罪にならないかどうか不安で仕方がない。
身なりを整えられてから、謁見の場に案内される。
侍女さんに「『迷い人』であるカグラ様は緊張などしなくて大丈夫ですよ」と言われた。『迷い人』なので、少しぐらい無礼な態度をしてしまっても仕方がないと思われているらしい。
ドキドキしながらグラニーさんと合流して、謁見の場に入る。
「ふむ。そなたが『迷い人』であるカグラ・ドウモトか」
「は、はい」
王様はそれはもう、ザ・王様という感じの見た目をしていた。髪の色は薄暗いダークブラウンの髪で、いかにもな金髪とかではなかったけれど、服装からしていかにもな王様だった。何ともまぁ、地球で生きていた俺からしてみれば非現実的な存在である。
「―—緊張はしなくていい。『森の賢者様』の怒りに触れるような真似はしないので安心してほしい。長旅で疲れただろう。ゆっくり休むとよい。そしてこの世界でどう生きていきたいかを考えてほしい。我が王家で保護する事も出来るのでな」
王様の話はそれだけだった。
とても友好的な態度で、拍子抜けしそうになった。あと『森の賢者様』は本当にどれだけ恐れられているんだよと突っ込みたくなる。
グラニーさんにも王様は「『迷い人』を保護してくれて感謝する」といった事を伝えていた。
それから俺とグラニーさんは謁見の場を退出して、二人してほっと一息をつく。
その後は、侍女さんに確認を取ってからグラニーさんと少し話すことになった。その場には、この世界の事を教えてくれる侍女さんも一緒である。
「カグラ様、まずは、この世界の事をしばらく知ってもらおうと思います。それからこの世界でどう生きていきたいかというのを決めていただければと思います。それまで王宮に滞在するようにとのことです。フロデンタール様はどうなさいますか? 陛下はカグラ様が心配で残りたいのだったら、しばらくの王宮への滞在を許可するとおっしゃっておりましたが」
侍女さん――アラマさんはそう口にしてグラニーさんを見た。ああ、そうか、グラニーさんは俺の付き添いで来てくれただけなので、俺を連れてきたらもう帰っても問題がないのか。
グラニーさんをちらりと見る。
「そうだな。数日は滞在しようと思っている。領主としての責務もあるので」
グラニーさんはそう口にした。
グラニーさんが数日で帰ってしまうとなると寂しくなる。一緒にグラニーさんの屋敷に戻って生活をするのも選択肢の一つなのか。どうするか決めないと。
「……あの、本当に地球に帰る手段はないのですか?」
「そうですね。帰った事例はありません。ただ……以前、この国の元となった大国の王妃になった方が『迷い人』だったのですが、その方はチキュウに帰りたいと言って『森の賢者様』の元へ向かったというのは過去の文献に残ってますが」
「そうなのですか!?」
「はい。ただ、王妃となったその方は生涯をこの世界で終えています。なので、『森の賢者様』であろうとも世界を渡る事は出来ないのではないかと思いますが」
アラマさんはそういうけれど、もし少しでも希望があるのならば俺はその『迷い人』であるという『森の賢者様』に会いたいと思った。
「……あの、『森の賢者様』に会う事は難しいですか?」
「そうですね……。『森の賢者様』が住んでいるのは聖地と呼ばれる地で、人が踏み入れてはならない場所です。むやみに足を踏み入れれば『森の賢者様』のご不興を買うかもしれません。なのでもし『森の賢者様』の元へ向かいたいというのならば――『慈愛の賢者様』の元へ向かった方がまだ可能性はあるかもしれません」
「……『慈愛の賢者様』?」
俺は新たな単語を聞いて、その人が誰なのか分からずに問いかけた。賢者と呼ばれる人は何人かいるのだろうか。
「―—『慈愛の賢者様』は『森の賢者様』であるセイナ様とハイエルフの一人であるフランツ様のご息女であるアレイシア様の事です」
アマラさんはそう言い切った。




