王都への道中
現在王都へ向かっている。
馬車に乗るなんて経験初めてだった。馬に引かれる馬車に乗っていると、本当に此処は日本ではないのだと実感した。馬車は、日本で乗っていた車や電車よりも大きく揺れた。
「……カグラ、大丈夫か?」
「……すみません」
お尻が痛いやら、揺れすぎて気持ち悪くなるやらで俺は本当に王都に辿り着けるのだろうかと不安になるぐらいだった。王都までは馬車で五日ほどかかるらしい。飛ばせばもう少し短縮できるらしいが、今回は馬車が初めての俺がいる事もあってゆっくりと進んでくれているそうだ。とても助かる。
正直言って、飛ばされたらどうなるか分かったものではない。
地球にいた頃、そこまで乗り物酔いしていなかったのだが、馬車は本当に揺れる。魔術師がいれば何かしら対処が出来るらしいが、生憎魔術師はいないらしい。俺に魔力があるらしいから、真っ先に酔いをどうにかする魔法を覚えたいなと思った。
「グラニーさん……王都で、王族に会うんですよね?」
「そうだ。陛下に会う事になるだろう」
「……俺、礼儀作法など全く分からないのですが」
「それは気にしなくていい。ちゃんとカグラが迷い人だと陛下は把握している。迷い人に悪いようには絶対にしないから」
グラニーさんはそういうものの、やはり王族に会わなければならないっていうのは緊張する。まず一般人の俺にとって会う事などないだろう存在だ。『森の賢者様』を怒らせる事はしないから問題はないと言われているものの、不敬罪とか言われたらどうしようかなどと考えてならなかった。
「うっ」
「カグラ、吐くか?」
頭を動かしながら馬車に揺られていれば、より一層酔いが回ってきた。
馬車の中にいる侍女に差し出されたバケツの中に思いっきり戻してしまった。俺が馬車に慣れないから、休憩も多く取ってくれていて本当に申し訳ない。吐いてしまったのもあって、少し休憩を入れてくれた。
馬車の外に出て地面に座る。あたりを見渡せば、地球では見られないような自然豊かな光景が広がっている。
馬車の通り道は少しだけ整備されている車道だ。ただ、やはりすべてが行き届いているわけではなく、段差があったりと整備が完全に出来ているとは言えない。石が転がっているのを見ると、揺れても仕方がないと思った。本当に地球の道路って、ちゃんと整備されていたんだなーとか思う。
風が気持ち良い。
何にも汚染されていない、自然そのままの姿。
それがこれだけ残っているのだ。
「本当に、この世界は……自然豊かですね」
「精霊達が自然の中に宿っていると言われているんだ。『森の賢者様』は精霊と仲が良いと言われている。精霊の宿る自然をないがしろになど出来ない」
「精霊なんてものも、いるんですか」
「私には見えないがな。エルフの多くが精霊の姿をみえるそうなので、カグラも見えるかもしれない」
「……そうなんですね」
精霊か。
『森の賢者様』が仲よくしている精霊。人間には見えないが、エルフには見える存在。ちょっと見てみたい。それにしても、グラニーさんの口から『森の賢者様』という言葉はよく出てくる。
それだけこの国にとって『森の賢者様』は重要な存在なのだろう。
他の国ではどうか知らないけれど、一つの国でそれだけ重要視されているって本当に、凄い存在だ。
「精霊、見てみたいです」
「自然豊かなところに行けば見えるかもしれない。ただ昔、精霊をとらえて利用したりしていた人間もいたらしくて、人間の前には精霊はあまり現れないようになっているから人間の居ない所の方がいるかもしれない」
「……そうなんですね」
何だか本当、この異世界には当たり前なのだけど色んな歴史があるんだなと思う。人間が精霊をとらえて、利用していた。見える人が少ないというのに、そのたまたま見えた人が利用したという事だろうか。それで人間の前にはあまり姿を現さないと。
「セイナ様の住まう聖地には精霊がいると昔の文献には記されているらしいが」
……本当、地球出身っていう話なのに聖地に住んでいたり、これだけ恐れられてたり、『森の賢者様』という存在が気になる。
それから、しばらく休んでまた馬車に揺られた。
道中、何度か戻してしまったが、その度にグラニーさんは休憩を入れてくれた。
馬車で揺られている間も、休憩している間も、沢山の話を聞いた。その話の中で毎回のようにハイエルフの話が出てきたのだった。
そして王都にたどり着いた。
王都は、人にあふれていた。グラニーさんの領地よりも、整備されている。魔物が入ってこないように塀で囲まれていて、店も沢山並んでいた。遠くからでも王族たちが住まうお城が見えて、本当に今からそこに行かなければならないのだと思うと、少しだけ胃が痛くなってきた。
本当に、不敬罪とか言われないよな? 不敬罪とかで処刑とかならないかと、大丈夫だと言われてもハラハラしてしまった。




