月日は流れていく。
月日は流れていく。
俺はアレイシアさんに告白したあとも、この世界から地球に帰るためだけに、行動を起こしていた。大陸中を回り、良質な魔力を帯びた石などの自然物を集めていった。結果的に俺が日本に帰れるかどうかは分からないけれど、出来るだけのことをやりたいと思った。
エルフのいる大陸で、まだ見れてない場所を見て回る。俺が見過ごしている『迷い人』のことを探る。この大陸は、ハイエルフがいるからか、精霊という存在が溢れているからか、自然物が魔力を宿っていることは多いのだ。だからそういうものが探しやすい事は良いと思う。
もう一つの大陸は、正直精霊がいるかも俺には分からない。俺にはセイナさんやアレイシアさんのように精霊を見れるわけではないから。何かいるようにはちょっとわかる時はあるけど、正確には分からない。
そして俺はアレイシアさんの元にも期間をなるべく空けずに戻っていた。アレイシアさんには告白してしまったし、アレイシアさんへの気持ちは隠さなくなった。アレイシアさんが俺のことを考えてくれるといってくれたから、是非とも俺のことを意識してくれたら――って思うから。
俺が日本に帰ろうとしていることは事実だし、アレイシアさんを置いていってしまうことは事実だけども――アレイシアさんもセーラさんも特にそのことは気にしていないようだった。アレイシアさんにとっては、それはいつものことだからということだった。ハイエルフである彼らは、ハイエルフ以外の種族においていかれる……。それが彼らにとって当たり前なのだ。ああ、でも、アレイシアさんは生まれた時からハイエルフだから余計にそれを当たり前として受け入れられるのかもしれない。
――けど、セイナさんたちは、元地球人のハイエルフたちにとっては色々と思う所があるのかもしれない。そんな風に思った。
「――私も、カグラのことは何だかんだで好きだと思うわ」
アレイシアさんがそう答えたのは、数十年ほど経過した時のこと。セーラさんの寿命が、あと数十年でお
そらく終わるであろうというその時だった。
最初、アレイシアさんに言われた台詞は分からなかった。けど、アレイシアさんは俺とそういう関係になっていいと思っているぐらいは、俺に好意を抱いてくれていたらしい。——俺は素直にそれが嬉しかった。
好きになった相手が自分のことを好きと言ってくれたことが嬉しかった。同じ気持ちを返してもらえることは奇跡に等しくて、その事実に気持ちが高揚した。アレイシアさんは、俺と恋人になってくれた。この世界にも夫婦という概念はあるようだし、街では日本で言う婚姻届けみたいな届は出来るらしいけど、まぁ、街に定住していないアレイシアさんには関係ない話であった。
アレイシアさんと恋人になってからは、心が満たされた気持ちになった。好きだなという思いが溢れて、一緒に居たいって思えた。俺は満たされた気持ちになった。けど、心の奥底で俺はずっと日本のことを思っていて、日本に帰ることを諦められなかった。
ずっとアレイシアさんの傍にいたら、俺は此処での生活に満足して、帰ることを諦めたかもしれない。——けど、俺はそうすることを選ばなかった。
セーラさんには「お母さんと恋人になったらずっとここにいたらいいのに」と言われたけど、俺は日本に帰りたいこの気持ちを諦めたくなんてなかったから、そう告げた。
セーラさんには「頑固ね」と言われたけど、自分の心には嘘はつきたくなかったから。俺の日本への熱は、異世界にやってきてどれだけたっても冷めることはなかった。やっぱり、自分の故郷というのはいつまでも忘れられないものだ。
――そうして帰るために色々回りながら、時々アレイシアさんの元を訪れる。気づけばまた時間が経ち、セーラさんの寿命がきた。
目の前で人が死ぬこと。親しい人が亡くなること。
それは怖かった。悲しかった。アレイシアさんも悲しんでいた。けど、アレイシアさんにとっては、誰かが自分をおいていくことは当たり前で、セーラさんがアレイシアさんよりずっと先に亡くなることは当たり前のことだった。俺の方がショックを受けていたかもしれない……。
セーラさんは寿命で眠るようになくなり、俺がアレイシアさんの元を訪れる時にもうその姿がないことが悲しかった。
けど、死というものはどうすることも出来ない。あらがえないもの。——ああ、俺もエルフという種族になって寿命は延びたけどいずれ寿命がくる。
セーラさんは寿命を全うして、この人生に満足して死んでいったようだった。アレイシアさんに「今までありがとう」っていって、笑って亡くなったのだ。俺にはそうする道もあるのだ。アレイシアさんの傍で、アレイシアさんと笑いあって、そして好きな人の元で亡くなる道が。
けど、やっぱりそれを選べなくて、俺はずっと帰る道だけを探していた。
―――そして、俺は自分の寿命が尽きる前に、日本に帰るための準備をなんとかこぎつけた。




