再会④
アレイシアさんは俺が真っ直ぐ、その目を見て告げた言葉に驚いたような表情をしている。アレイシアさんは俺にこんなことを言われるなんて思っていなかったから、困っているのだと思う。困らせていると思うと、申し訳ない気持ちになってしまう。
「――アレイシアさん、突然こんなことを言ってごめんなさい」
「……いえ、気にしなくていいわ。私こそごめんなさい。まったくカグラの気持ちに気づかずに、セーラとそういう仲だと勘違いしてしまって……嫌な気もちになったでしょう?」
アレイシアさんはやっぱり優しい人だと思う。自分も俺に告白されて戸惑っているだろうに、俺に対して心を砕いてくれている。こんなアレイシアさんだからこそ、俺は素敵だと思うし、好きだと思うのだと思う。
「……カグラ。私は貴方の事をそういう目で見たことはなかったわ」
「はい。分かってます。アレイシアさんからしてみれば俺なんてまだまだ子供でしょうし」
「いえ、そういうわけではないわ。なんというか、ベス……セーラの父親を見送ってから、私にそういうことを言ってくる人なんていなかったのよ。そもそもハイエルフと他の種族では、寿命が違い過ぎる。私はお母さんの……『森の賢者様』の娘として世界を回っていた。あの『神の怒り事件』と呼ばれるお母さんが怒った事件で、私がお母さんの子供だと大々的に知られたもの。
ハイエルフである私にそういうことを言ってくる人っていなかったのよね。まだ寿命の長いエルフにとっても私って存在は神にも等しいハイエルフで……、そうやってセーラを育てながら生きてたら自分がそういう目で見られることがあることは忘れていたわ」
セーラさんの言う通り、特別なハイエルフであるからこそ、そういう目で見られないのだ。
ハイエルフと言う存在はそれだけ特別で、周りとは違う存在。そして寿命がないにも等しいほどに生き続ける――。そんな存在だからこそ、アレイシアさんは自分が女として意識されることを忘れていたのかもしれない。
相手はハイエルフである、という先入観が先にあればこの世界の人たちはまずアレイシアさんに告白なんて恐れ多いことは出来ないのだ。『慈愛の賢者様』と呼ばれる存在だからこそ……というそれが分かる。
「カグラのこともそれでそういう風に見た事はなかったのよ。でも……告白をしてもらえるのは嬉しいわね。好きだと言われることは嬉しいことだわ」
そう言う目で見た事はなかったけれど、嬉しいことだとアレイシアさんは笑う。
「けど、私がカグラのことをそういう目で見れるかは分からないわ。少しずつでも意識はするから……、今回のように百年かえってこないはなしにしてほしいわね。それだけあいていたら交流も出来ないわ。カグラはエルフだし、三百年程度しか寿命がないのだから」
「……はい」
アレイシアさんの言葉は、俺のことを意識するようにするという前向きなものだった。——でも、それで十分だと思った。
それだけでも、俺にとって幸せだと思った。アレイシアさんという好きな人がそんな風に前向きに思ってくれるというのはとても嬉しいことだったのだ。
これからも日本に帰るために大陸を回ることはするが、ちょくちょくこの場に俺は戻ってくることをアレイシアさんに約束した。俺のことを意識するにも、一緒に過ごす時間がなければ意識のしようもないからって。
……その後、アレイシアさんとの会話は少しだけ俺がぎくしゃくしてしまった。
戻ってきたセーラさんには「えー、くっついていないの? 勢いでがってやっちゃえばいいのに」とか言われてしまったが。……そして、アレイシアさんにセーラさんは「何を言っているの、セーラ」と怒られていた。
俺はそれから、十日ほどアレイシアさんの家に滞在した。アレイシアさんの傍で過ごせることは幸せで、もっとずっと一緒に居たいと、まるで麻薬のようにそんな感覚になってしまう。だけれども、日本に帰るんだと思うから、俺はまた旅に出るのだ。
十日の間に、魔力を持つ物体を使って、日本に渡る術を模索したいといったらアレイシアさんは喜んで協力してくれた。あとセイナさんにも一度会った。
セイナさんは俺が見つけた地球の人たちのことを話すと、「そう……」とただそれだけを告げた。セイナさんもやはり思う事があるのだろう。
それに、俺が日本に帰るための考えを告げたら「やるのは自由だし構わないけど、それで何か影響が起こるかもしれないことはちゃんと考えてやりなさい」とだけいっていた。特に俺の手助けをしてくれる気はないようだった。期待はしていなかったので、そのあたりに関してはまぁ、いい。
ただ影響を与えるかもしれない、っていうのは世界に対してってことだろうか……。魔力を持つ自然物と言うのはこの世界にはそれなりにあるから、それを使って帰ろうと考えていたけれど……それをすることで悪い影響も与えてしまうかもしれないのだろうか。そのあたりはもっと考えよう。
――この世界に何か影響を与えるとしても、それでも帰りたいと思う俺は自己中なのかもしれない。




