再会③
「わ、お母さんいつからいたの?」
「アレイシアさん、どこから聞いていたのですか?」
ほぼ同時に俺とセーラさんはアレイシアさんに言う。
アレイシアさんは慌てた様子の俺達の反応に呆れたようにため息を吐く。……ま、マジで聞かれてた?? と俺は焦る。いやだって、ちゃんと聞かれていたなら俺がアレイシアさんに恋愛感情を抱いていることを知られたってことだ。
俺はアレイシアさんの事が好きだけど、アレイシアさんのことを置いていくことになる。
――俺は日本に帰ることを望んでいて、この世界で一生を終える気はない。……だから告白何てするつもりなかったのに、知られていたら……なんて考えていたら、
「どこからって、セーラが私の事をカグラに勧めているのは分かったわ。でもちゃんとは聞いてなかったわよ。盗み聞きになるし。ただセーラは馬鹿なことを提案しているからあわてて止めたのよ」
そんなことをアレイシアさんは言う。
その言い方に頭にハテナを浮かべていれば、アレイシアさんが俺の方を向いていった。
「カグラ、セーラの戯言に付き合わなくていいのよ。この子は、私に誰かと結ばれてほしいって思っているみたいで、たまにこういう事を言うのよ」
そして次にセーラさんの方を向いて続ける。
「セーラも、馬鹿なことをカグラに言うのはやめなさいね。貴方が私を思ってそう言う言葉を言ったのは知っているけど、好いてもない女と結ばせようなんてそんなのを勧めるべきではないわよ。
カグラはまだまだ若いし、目標があるのよ。それなのに私とそういう仲にならせようとするなんて」
呆れたような口調。
……ああ、アレイシアさんは本当にちゃんとは俺とセーラさんの話を聞いていなかったのだろうとそれで分かる。
それでいてセーラさんが無理やりそういう話に持っていったと思っているのかもしれない。俺がアレイシアさんにそういう気持ちを抱いているのでは……などとそんなことを欠片も考えていないのかもしれない。
そう思うと、何だか胸がズキズキした。
アレイシアさんのことが好きだとそんな気持ちが確かにあるからこそ、アレイシアさんがそんな風に言っているのを否定したい気持ちになった。……でも一緒にずっといるとそんな決意もない俺がアレイシアさんにそんなことを言っていいものだろうか。
セーラさんはもっと簡単に考えていいなんて軽く言っていたけれど、俺は……アレイシアさんを好きでも日本に帰りたいのだ。
そう思って、俺は口を開かない選択をした。
けど、アレイシアさんが続ける。
「というより、カグラはセーラと仲良しじゃない。寧ろ私は娘婿になるではないかって思っていたのだけど……。他の人よりもセーラはカグラによくしているし、気にかけているじゃない」
「えー、まぁ、確かに私とカグラは仲良しではあるよ? でもそういうのではないよ」
「何でそんな風に断言できるのかしら? 私はそうだと思って――」
「違います」
だけど、アレイシアさんとセーラさんの会話を聞いていたら、口を閉ざそうと思っていたのに思わずそんな否定の言葉が口から洩れてしまった。
アレイシアさんが「え」と言った顔をして、セーラさんは期待したようにぱあああと顔が明るくなる。
何を言っているんだ、俺は。ああ、でもアレイシアさんが俺とセーラさんが仲良しなのではとか、くっつくのではないかみたいなことを思っていたかと思うと、ものすごくもやもやする。それに、否定の言葉を口にしたあと、俺は止められなかった。
「俺はセーラさんにそういう気持ちを感じているわけではありません」
「まぁ、そうなの?」
「俺は……」
ああ、全くもって俺のことをそういう目で見ていなくて、俺のことを意識なんてしていないアレイシアさん。
俺のことを意識してほしいという気持ち、俺の気持ちを知ってほしいという願望。その気持ちが、そんな様子のアレイシアさんを見ているとあふれてくる。
「俺は……アレイシアさんのことが、好きです」
ああ、言ってしまった。
セーラさんが「頑張って」と口パクをして、出ていくのが見えた。アレイシアさんの目が見開かれるのが見れる。
ああ、やっぱり、俺がアレイシアさんに恋をしているなんて思ってなかったんだろう。
長い時を生きるハイエルフ。セーラさんのような二百年以上生きた娘がいるアレイシアさんからしてみれば、まだまだ俺は子供なのだろう。
それでも口に出してしまったからには、ちゃんと告げたかった。
「セーラさんが俺に先ほどのように勧めていたのは、セーラさんが俺の気持ちを知っていたからです。俺は、貴方が好きです。でも……俺は日本に帰ることを諦めていない。アレイシアさんに気持ちを告げても、いつかアレイシアさんをおいて日本に帰るのです。……そんな俺が言っていいのかって悩んでました。言わないでおこうって思ったのに……俺はアレイシアさんにセーラさんとの仲を疑われて、我慢できなかった」
ああ、なんて情けない。
どうせならもっとかっこよく好きだと口に出来たらいいのに。
「……あなたが好きです。アレイシアさん」
ただ俺は真っ直ぐにアレイシアさんを見て、そう繰り返した。




