再会②
アレイシアさんと心を通わせたいと思わないか、そんな問いかけをされて俺はすぐには答えられなかった。
俺はアレイシアさんのことを好きだと思っている。アレイシアさんが俺のことを好きだと思ってくれたらなんて幸せなんだろうとそんな気持ちも当然ある。
だけれど、俺はアレイシアさんと心を通わせて、自分が地球に帰ることを諦めてしまうのではないかと怖かった。
「俺はアレイシアさんのことが好きだし、アレイシアさんと結ばれることが出来たらッて思いはもちろんあるよ」
「なら――」
「でも俺は地球に帰りたいという気持ちをまだ失っていない。アレイシアさんのことは好きだけど、アレイシアさんと結ばれたら俺は地球に帰りたいという気持ちを無くしてしまうかもしれない。それが怖い。それに例えば、俺がアレイシアさんに告白して、アレイシアさんがその気持ちを返してくれたとしても俺が地球に帰りたい気持ちをずっと抱いて、帰ったのならば――アレイシアさんを置いていくことになるだろう?」
俺が例えばアレイシアさんと嬉しい事に結ばれて、俺の帰りたい気持ちが消失したとしても、俺がずっと帰ろうとしたとしても、そこに幸せが待っているとは思えない。
それに俺はエルフだし、アレイシアさんと同じだけの時を生きられるわけでもない。色んな不安があるから、俺はアレイシアさんに伝えない方がいいのではないかと思っている。
こういう気持ちを誰かに話すのは初めてだった。
……俺が異世界人だと知っていて、俺がアレイシアさんのことが好きだと知っているセーラさんへだからこそ言えた言葉だった。
「うーん、カグラは難しくなんでも考えているのね。別にカグラがお母さんと結ばれて、その後、異世界に帰ったとしても、別に構わないのよ。カグラは結ばれたらずっと一緒に居たいとか、いないと幸せになれないとか、そんな風に夢見がちなように見えるわ。でも一瞬のような出来事でも幸せを感じられたらそれでいいと思うわよ。
私はお母さんに孫を見せられるか分からないし、おばあちゃんたちはいるとはいえ、森から出てこないし、カグラとお母さんの間に私の弟か妹が出来たらなーって思ったのだけど」
「ぶっ……」
「あら、何かイケナイことでも想像した?」
「ち、違う! 何を突然そんなことを……」
「突然っていうか、カグラがお母さんに告白する勇気があるのならば、そんな未来もありかなと思うのよ。ほら、お母さんは『慈愛の賢者様』として表舞台に立っているでしょう。だからお母さんの顔を皆割と知っているし、お母さんはハイエルフなことを隠しもせずに過ごしているの。
お父さんが亡くなった後、お母さんは他の人と結ばれる道もあったと思うのだけど、そもそもお母さんってこの世界では特別な存在だし、エルフたちからしてみれば神のようなもので、他の種族からしてみても雲の上の存在で……お母さんと結ばれようって考える人が早々いないのよね。
おばあちゃんたちはさ、基本的に森に引きこもっていて、たまに町に出た時もハイエルフだとバレないようにしているの。そうすれば表に全然出てこないおばあちゃんたちはバレないもの。でもお母さんは違うもの。
この大陸の人たちと関わる道を自分で選んで、人々を助ける存在として過ごしているの。だからこそ、カグラみたいにお母さんのことをハイエルフだと知っても一人の人として扱うのって珍しいのよね。
異世界人だからこそ、この大陸の人たちとは価値観が違うのだと思うけれど……私はとても貴重だと思っているの。だからこそ、カグラならお母さんとそういう関係になれるかなーって」
セーラさんは軽くそんなことを言うが、そういう事は考えていなかったので確かになという気持ちになる。
ハイエルフという存在は何処までも特別な存在なのだ。
寿命がないにも等しく、永遠ともいえる時間を生きる、人知を超えた存在。そう考えると確かに同じ人として見れない人は多くいるだろうと想像できる。特にアレイシアさんのことを噂でしか知らない人には。
ただ俺は、アレイシアさんと話して、アレイシアさんのことを人として見ないなんて考えられない。
確かに長命種だし、凄い力を持っているのかもしれないけれど、アレイシアさんはその前にとても魅力的な女性だと思う。
「お父さんとのなれそめを聞いてて思ったけど、お母さんって多分、好き好きっていうのをちゃんと示せば大丈夫だと思うのよね!! おばあちゃんもだけど結構絆されて夫婦になってる感じだもの。おじいちゃんも素直に好き好き言っておばあちゃんの事落としたって言ってたし」
……何だか、俺が聞いていいのだろうかってことをセーラさんが言っている。
「だからね、私はお母さんに何かを残していきたいし、是非とも、カグラに――」
そう言ってセーラさんが続けようとした時、
「セーラ……なんて話をしているの」
呆れた顔のアレイシアさんがいつの間に扉を開けてこちらを見ていた。
……どこから聞いていたのだろうか、と俺は思わず焦ってしまう。




