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旅⑦

「カグラ様、ありがとうございます」

「カグラ様は本当に凄い方ですね」

 あれから『迷い人』のことを俺は調べ続けた。

 人を殺したことは恐ろしかった。自分はなんてことをしてしまったんだという気持ちに苛まれて、現実逃避してしまいたい気持ちになった。

 それでも俺はアレイシアさんのことを思って、ただ前に進もうと思った。

 アレイシアさんに再会するために、アレイシアさんの前で胸を張って立てるように。そのためにも俺はちゃんと結果を出したいと思った。だからこそ、俺はこの大陸で『迷い人』の情報を集めている。

 その中で、俺は自分が出来る限りのことを、自分がやりたいようにやることにした。もちろん、そんな風に友好的な人ばかりではない。エルフである俺が大陸内をうろつけば、それだけ嫌悪感を抱くような人たちもいるのだ。

 俺は一人を殺してしまってから、人を殺さないように行動はし続けた。とはいえ、それでも誰も殺さずに行動を起こすことは難しかった。

 何人か、殺さなければならなかった。そのことに胸は苦しかった。けれど、俺は『迷い人』の情報を集めることを諦めたくはなかったから。

 ――『迷い人』の情報は、中々集まらなかった。この大陸に、ハイエルフのような長命種はおらず、加えて『迷い人』という存在のことが、セイナさんのいる大陸よりも知られていなかったからというのもある。

 全然見つからない情報。

 そして幾ら学んでも転移の魔術で異世界を渡る目途はたたない。

 幾ら望んだとしても、そこまではいけない。寧ろ、知れば知るほど、世界を渡る魔術と言うものがどれだけ難しいのかというのがよく分かる。

 圧倒的に魔力量が足らない。それに加えて、短距離の魔術での移動でさえもその制御が難しい。短距離の移動でも俺は死にかけたことがあるのだ。だからこそ、それがどれだけ難しいのか分かる。

 でもそれで諦めるかといえば、諦めなど出来ない。

 俺は魔力量が少なくても、なんとか異世界に渡るために何か補えないかと考えた。その中で、アレイシアさんから聞いた、昔アキヒサさんが召喚された時の魔法陣を思い出した。国民の魔力を合わせてアキヒサさんを召喚したのだという話。それを応用することは出来るだろうか。

 もちろん、この世界の人たちを犠牲にしてまで戻りたいとは思っていない。本当に戻りたいのならそれだけなりふり構わず行わなければいけないかもしれないが、そんなふざけた真似をしたらセイナさんに殺されてしまいそうな予感さえもする。

 我儘なのだと思う。

 自分の手を汚す事なく生きていきたいと思ったことも、こうして誰の犠牲にせずに地球に帰りたいと思うことも。

 自分でもなんて欲張りなのだろうかというのは、分かっている。

 それでも望んでしまうから、時々立ち止まったとしてもなんとか、前に進みたい。

 ――この世界に来て、長い時が過ぎている。俺にとっては長い時。二つの大陸でずっと『迷い人』の情報を探していて、気づけば過ぎた時間。

 地球で過ごしていた時間よりもずっとずっと長い時間、俺はエルフとしてこの世界にいる。

 昔の記憶も、薄れてきている。忘れたくないと望んで、書き留めた記憶を読んで、ああ、こんなことがあったなと思い起こす。

 家族に会いたい。

 こんなに長い時間、家族に会えないなんて考えてもいなかった。たまに一人で旅をしていると、昔のことを思い起こして悲しい気持ちになる。こんなこと考えても仕方がないと思いながら感傷に浸ってしまうのだ。

 感傷に浸りながら、人の代わりに何かで魔力を補って、転移の魔法を使うことは出来るだろうかとそれを俺は考え続けた。とはいえ、簡単に異世界に渡れるような案が湧いてくるわけでもない。

 ずっとずっと考えていた、だけど代わりになる何かなんて中々思いつかなかった。人ではなく、魔力を帯びた何かで魔術を行使することは出来るのだろうかとも思ったが、それもどうしたらいいか分からなかった。

 そこで俺はようやくアレイシアさんのいる大陸に戻ろうと考えた。

 この大陸の様々な場所を長期間見た。けれど『迷い人』の情報はほぼ集まらなかった。集まったのは、各地の情報とか、『迷い人』と関係がない情報ばかりだった。

 ――アレイシアさんに会おう。

 そして、アレイシアさんと沢山話そう。異世界に渡る術についても相談しよう。

 そんなことを考えながら俺は、船に乗るのだった。




 ――アレイシアさんにまた会えると思うと、嬉しかった。胸の奥が熱くなり、ああ、俺はアレイシアさんが好きなんだと実感したのだ。



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