21 氷原の間ですネ
……短いですね。
すいません。
しかもこれ一話で二十六回はクリアです。
いや、いつまでも引っ張ってもネ。サクッと進みましょう。
文章力なくてすいません。
【幻惑の塔】二十六階【氷原の間】
そこはまさしく、極寒の氷原である。
零下八十度。
すべてのモノを凍りつかせる、風さえ吹かぬ地。
見渡す限りの分厚い氷の床。そこここにあるたくさんの鋼鉄の壁もまた、凍っている。おそらく手をつけたら生皮がはがれるだろう。瞬時に凍って血さえもでないと思うが。その上に、雪さえも、この空間には存在しない。
「は~ヤダな~」
「……おい」
「ここの攻略単純だけどすっごく面倒なんだよな~」
「……おい」
「もう一つ上までショートカットできないかな」
「……おい!!!」
何やらぶつぶつぶやいていた秋良は、ようやくハウザーが呼び掛けているのに気づいた。
「ん?」
「無視するとはいい度胸じゃねえか」
その顔はまさに般若。秋良は若干引きつつ、とりあえず謝っておくことにする。
「えっと、ごめん。別に無視したわけじゃないよ?で、どうしたの?」
とりあえず聞いてみた。そして返答はごく簡潔なものだった。
「寒いぞ」
「そうだねぇ」
カチカチと、歯を鳴らして何気に青い顔をしたハウザーがいえば、顔色一つ変えぬ秋良が当然だよね、とうなずく。
「なんでお前は平気なんだ」
「え?だって魔法でカバーしてるからね」
この階にたどり着いとたんに発動させたのは、外気の影響をまったく受け付けぬ、かけられたものに纏いつかせるタイプの最強の結界「絶対守護」。物理、魔法、状態異常問わずあらゆる攻撃を防ぐある意味外道な結界である。しかも結界を展開している間は、外気の暑さや寒さなどといったものも一切遮断され、常に春の日差しの中にいるかのような状態が保たれる。
しかしこういったものには当然弱点もあるわけで、この結界を発動させている間は、秋良も攻撃ができない。殴る、蹴るすら相手にダメージを負わせるような【攻撃】はできないのだ。できてせいぜいなでる程度である。攻撃以外なら何でもできるのだが。
「ほう。ところで何で俺にはそういった魔法はかけてくれないんだ?」
にっこり笑って、ハウザーが秋良を見る。
「凍りそうに寒いんだがな」
笑顔ではあるのに、目が笑っていないし、こめかみがぴくぴく動いている。
「えー失礼な。俺だけが魔法の恩恵にあずかるわけないでしょ?ちゃんとハウザーにだって守りの魔法掛けてるさ。じゃなきゃ、今頃君は自分の水分で氷漬けだって」
はははは、と笑いながらあっさりという秋良。それにしてはハウザーと秋良の体感温度が明らかに違うように思えるのはなぜだろうか。疑わしげな眼で秋良を見るハウザーに、肩をすくめて説明する。
「こんな誠実な俺を疑うとか失礼じゃないかな?実際今君は氷漬けになってないわけだし素直に信じてくれればいいのに。……まあ、つまりハウザーにかけた魔法は俺にかけたのとは違うわけだけど」
「なんで。おなじモノかければいいだろ」
「?だって君にまで【絶対守護】かけたら攻撃が必要になっとき困るだろ」
なぜそんな当然なことを聞くんだと、さも不思議そうに秋良が言う。
「だからハウザーには【守護結界lev10】【外気緩和】と凍傷防ぐのに【状態異常無効】かけてるよ」
ばっちりでしょと得意げに胸を張る。
「・・・・・ちょっとまて」
「んん?」
「お前にかかってる【絶対守護】はあらゆる攻撃を防ぐんだろ」
「そうだよ」
「実害がないんだから、魔物に会ってもこっちからわざわざ攻撃する必要もない。適当にあしらっておけばいい」
「もちろん。そのうえこの【氷原の間】はエンカウント率めっちゃ低いからね~。はっきり言ってさっきの階の一割くらいのはずだよ」
つまり、運さえよければ全く敵に会うことなく次の階へ行けるというわけだ。ちなみにエンカウントすると、普通にドラゴンクラスの魔物が出てくる。このダンジョンの中で、最も死亡率の高い恐ろしいフロアである。
「……おい」
地を這うような重低音で秋良を呼び、その肩をがっしりつかむ。
「……えーと?」
「だったらなおさらだろうが!!何で俺にかけたのはその【絶対守護】じゃないんだ、寒いわ!!」
しかも敵に出会ったら今のハウザーでは攻撃をかすっただけでHPを半分は確実に持っていかれるだろう。それでも【守護結界lev10】をかけているだけましなのであるからして、何もなければ一撃であの世いきなのは確実だ。しかし勿論そんなことはいわないでおく。世の中には知らないほうがいいことだってあるよネ。いや、ほんと。
「いや、一応理由はあるんだよ。攻略の時に攻撃が必要になるんだよう。でもさ、悪魔族の君はいいけど単なる人間の俺は寒さに弱いからね~」
そういうと、本当に人間か、と非常に疑わしげに見られてしまった。確かに職業欄:神だけどね。
※ ※ ※ ※
しばらく問答(漫才?)した末ハウザーが諦めた。まさにその表情は、諦観という言葉こそがふさわしい。何か悟りを開いたようでもある。
「とにかくさっさと上へ行くぞ」
いつまでもこんなところにはいられない、と秋良を促す。
もちろん否やがあるはずもないので、秋良は早速攻略マップを開く。
「ここの攻略はとても簡単だよ。ある意味二十五階以上では最も簡単といえるかも」
「‥‥…本当であることを祈る」
先ほどから露骨に失礼なやつである。いいけど。
「攻略方法は一つ。たくさんの鋼鉄の壁が見えるだろう?あれをすべて、攻撃すればいい」
「‥‥…は?」
笑えるくらい間抜けな顔で、ハウザーが秋良を見ている。なぜかこの攻略方法、一番最初に見た人って必ずこういう顔するんだよなあ。
「言っとくけど本当に面倒だよ?あの壁、攻撃方法は自由で一発で崩壊するけど、500個あるからね」
「‥‥…500個?」
何の冗談だ、とその眼が雄弁に語っているが、もちろん冗談などではない。
「その中の200個くらいは隠蔽してあるから。【察知】スキルか【発見】持ってないと絶対に見つけられない」
かなりふざけた作りになっているのだ。ちなみにここを訪れて、どちらのスキルも持っていなかったプレイヤーはGMにクレームを送り、運営に呪いを吐きかけつつ泣く泣く退場していったという。再度ここを訪れるのに一回目の倍以上の苦労したとか。
ともかくも、二人は地道に(秋良は主に見物。ハウザーはのちに、あいつこそ魔王の中の魔王だ、と語ったとか)壁を壊していくのだった。
階段を見つけるまでにドラゴン三体とエンカウントしたのは余談である。
【映像特典2:世界に命を与えしは】




