20 さらに謎増えましたネ
久しぶりの更新なのに、すっごく短いです。
でもきりがいいので、と言い訳してみる。
ほんとすいません。
お気に入り登録してくださっている皆様、見捨てずにいてくれてありがとうございます!!
そこは、もとは美しい森だったのだろう。
映像の中の木々は焼け焦げ、ところどころに大きなクレーターがあり、激しい戦闘の後を思わせる。
スクリーンの中心には、ログハウスの残骸と、血まみれの、少女。
もとは美しかっただろう彼女はけれど、今はどす黒い血にまみれ、かろうじて顔は判別できるが、四肢はちぎれ、頭蓋は陥没し、見るに堪えない状態になっていた。
『こんなはずじゃなかった』
少女を見下ろす青年のうち、一人がつぶやく。
ほんの少し、留守にしていただけなのに。
永遠に、彼女とここで過ごせるはずだったのに。
二度と、彼女が命ない【モノ】になるところなど、見なくてもいいはずだったのに。
『やり直さなければ』
もう一度。
彼女を取り戻すのだ。
強いその口調に、もう一人の青年が悲しげに首を振る。
『やり直す?そんなこと、無理に決まっている。過去はやり直せない、これは、現実なんだ』
いい加減に受け入れろと。失ったものは二度と取り戻せないのだと。
『そんなことはない』
実際に、彼は取り戻したのだ。【現実】では確かにやせ細って、息を引き取った彼女との日々を。ここで過ごした二十年の歳月は、決して幻なんかじゃない。だから、取り戻せるはず。
『そうだ。これもまた【現実】だ』
だからこそ、もう無理なのだと、なぜわからない、否、わかろうとしないのか、と青年は哀しげに親友を見やる。あの時は、もう一つの【現実】である仮想空間を創ることで、【彼女】の精神をここに接続し、成功した。彼女はここで生きながらえたのだ。その心だけが。けれど、今回は違う。もう彼女を逃がすべき先はなく、彼女は完全に【死んで】しまったのだ。そのことを、彼は理解しているのだろうか?
『失いたくないんだ』
たった一人の、特別で大切な家族なのだから。
『失われないものなんてない』
親友の思いはわかる。けれど、人は儚く、不死など夢のまた夢にすぎない。死とは、だれの上にも平等に訪れるものなのだ。
『わかってる。それでも俺より長く、生きてくれればいい。ただそれだけでいいんだ』
『‥‥…』
『お前は賛成してくれないのか?』
『賛成も何も…‥そもそもやり直すなんてできるわけないだろう。もう一度言う。これは【現実】なんだ。ゲームとは違う。リセットボタンなんてありはしない』
『リセットができたら?』
『‥……何だって?』
『やり直すことはできる。忘れたのか?俺たちはこの【世界】の【神】だ。世界は俺たちの思うままに変化する』
青年は、痛ましげに親友を見やる。とうとう狂ってしまったのか、と。
『馬鹿なことを。それはあくまで【設定】上の話だろう』
『‥‥‥…俺は【彼女】を取り戻す。たとえ、何を失ったとしても』
『待て!!』
白光が、青年の一人を包み、やがて、その惨劇の場には、青年が一人だけ、残された。
『俺はこんなモノを創るべきではなかたのか‥‥…』
彼はただ、今にも壊れそうだった親友に、余命のない少女にほんの少しでも幸福な時間が与えられればと思っただけだったのに。
※ ※ ※ ※ ※
突然スクリーンごと映像が消えて、ハウザーと秋良は眼を瞬かせる。
「今の、お前だよな?」
ハウザーがうろんな眼で秋良を見やるが、秋良としては首をかしげざるを得ない。
「……そうだよね?でも全然覚えがないんだけど」
今の映像にあったような会話は全く覚えがないのに、けれど、映像にあった親友の、酷く哀しげな顔と、強い意志を秘めた瞳を見たことがある、と彼は思った。あれはいつだっただろうか?
大切なことは、思い出せそうで、何一つ思い出せない。頭の中のもやは濃くなるばかりで、問題は何一つ解決されない。
「あーもーなんなわけ?さっぱりわけがわからないんだが。少しは説明してくれないか」
頭をガシガシかき回しながら、いい加減爆発しそうだ、とハウザーがのたまうが、秋良だって何が何だか分からないのは同じだ。
「いっとくけどさっぱりわけがわからないのは俺も一緒だから」
知るために、少しでも多くの情報を得るために、今【幻惑の塔】を攻略しようとしているのだ。そういうとハウザーは少し考えて、納得したようにうなずく。
「ふん、なるほどな。だったら早く最上階まで行こうぜ。こんなとこでもたもたしてても時間の無駄だ」
「‥‥…そうだね」
二人は早速、アイテムを必要な場所に配置し、階段を出現させる。階段はたやすく出現し、二人は二十六階、【氷原の間】へとたどり着いたのだった。
※ ※ ※ ※
「‥…寒い!!」
階段を上り、最初の扉を開けたとたん、ハウザーが叫ぶ。彼の息は真っ白で、さりげなく、髪に霜がおりている。
【氷原の間】
それは、零下八十度の極寒の世界なのである。




