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15 攻略開始ですネ

 二階は何事もなく、通り過ぎた。


 サクッと階段の小部屋だけ開けてさっさと上がってきたのだ。


 問題は、三階である。


 オルセイリュートの言葉を信じれば、ここに、行方不明者のうちの一人がいるはずだ。ということはもちろん階段の部屋だけをあけてさっさと上へ行く、ということはできない。しかも三階から上には手に入れておきたいアイテムがいくつもあるため、どうしても階段だけを見つけて上がる、というわけにはいかないのだ。


 「どのあたりにいるのかが問題だよな」


 うーん、とうなってとりあえず面倒の少ない部屋から開けていくことにする。


 「三階は七つ小部屋があるんだけど、右端の部屋、右から三番目、四番目はレベルの高い魔物が出てくるから後回しにしよう」


 そもそもその三つの部屋にいるなら生存確率はゼロだ。まだ生きているということなので、おそらくそれらの部屋にはいないだろう。


 ハウザーは任せる、と言いたげに肩をすくめて、視線で秋良を促した。


 方針がサクッと決まったので、秋良は、左側にある扉へと足を進めた。


 「この部屋は、中央に宝箱が三つあるんだ。ランダムで、三つのうち二つは開けると魔物が召喚される。確かここのはふたつともレッドドラゴンだったかな。一つだけ、あたりの宝箱があって、それにはアイテム【真実の鏡】が入ってる。これは九階で必要になるアイテムだからどちらにしてもとっておきたいところだね」


 このアイテムは、イベント専用アイテムなのだ。イベント時のみ(今回のような、特定ダンジョン内でのみ、とか)使用可能アイテムで、イベントが終了すると自動的に消えてしまうもので、秋良もその手のアイテムはさすがに持っていない。


 《オルテリア物語》にはこの手のアイテムも結構多く、それが手に入れられないためにクエストが先へ進まなかったというプレイヤーも実は結構いる。ちなみにこういったイベント専用アイテムは、課金アイテムとしてイベント挑戦期間中のみ売りだされたりもしていたため、お金のある人はそういったものを活用もしていたようだ。もっとも課金アイテムで手に入れてもイベントをクリアしたら消えてしまうアイテムなのは変わらないのだが。


 「何だ、その【真実の鏡】ってのは」


 「えーと・・…九階では階段が隠されていて、見つけるのに役立つアイテムなんだ。なくても見つけることは可能だけど、これを持ってないと階段を見つけるのに丸三日はかかると保証するよ。最短でね」


 「よく知っているな」


 「まあね。前に来たことあるから……?」


 ゲーム中は何度か訪れていたし、おかしくはないはずだ、が、やはり何かが引っ掛かる。誰ともパーティーを組んだことはないはずなのに、だれかとこの塔を登ったような気がするのだ。今、ハウザーと一緒に登っているように。


 しかし、そんなことがあるハズがない。誰かとともに行動するなんてそんなこと、今までしたことがない。ゲーム中では最強で、イベントクリアの必要もない彼には、だれかとともに行動する必要性がまったくないからだ。せいぜいが親友の夏樹と行動をしたことはあるが、それにしても家を離れることを極端に嫌がっていた彼とは森の近所くらいしかいったことはない。


 「どうした」


 「いや」


 秋良は一つ首を振って埒もない考えを頭から追い出すことにした。実際そんなことはあり得ないのだから。全く身に覚えがないのだから、きっと気のせいなのだろう。そうは思いつつ何となく釈然としない。どうも城に行った日、若き王ロートリックと話したあの時からなんだかおかしい。そうはいっても何がおかしいのかもよくわからない。だから考えても仕方がないだろう、と無理やり納得するしかない。


 「さっさと行こう」


 今は、できることからこなしていく。それが一番だ。解らないことを無駄に悩んでも仕方がない。少なくとも最上階に行けば、疑問のいくつかは解消するはずなのだから。ハウザーを促し、大切なことを言い忘れたとはたと思い出した。


 「あ、もう一つ」


 考え込んでいたと思えば、突然吹っ切れたような顔で扉を開けるよう促した秋良に、不思議そうな顔をしながらも、、無造作に扉を開けようとしたハウザーに秋良が声をかける。


 「この階の部屋は開けるとランダムで魔物が出現するから気をつけ‥‥‥‥ってもう遅かったみたい?」


 「もっと早く言えーーーーー」


 言葉の途中で、扉を開けてしまったハウザーが絶叫した。


 





 鷲のような顔に、見上げる様な巨体。力強い二対の翼に、鋭いカギヅメ。


 「‥‥‥…何でこんなとこにこんなモノが」

 

 それは一般的にグリフォンと呼ばれるものだ。


 レナート王国の七騎士団団長クラスが三人でかかってようやく一匹しとめられるかどうかという恐ろしく強い魔物。普段は森の奥深くを棲み処とし、ヒトの生息地にはほぼ出てはこない伝説の魔物である。それが、三匹もいる。


 「おい、どう、する、んだ、これ」


 三体で次々と繰り出してくるカギヅメの攻撃を右へ左へ受け流し、秋良に怒鳴るハウザー。


 はっきり言おう、彼の力量もまた群を抜いている。今まで侮っていた秋良も思わず感心して見てしまっていた。


 「そうだな、とりあえず邪魔だしどいてもらおうか」


 「ああ?!」


 「魔法技能スタンバイ【紅焔レベル七】【盾ver4レベル十】」


 ウインドウを立ち上げ、戦闘用魔法画面を開く。秋良の周りに赤い魔法円が一瞬にして描かれる。


 「ハウザー下がって!!」


 叫んで、ハウザーが後ろに下がった隙に、魔法を放った。


 「展開、発動」


 秋良の声に応え、魔法円が一瞬淡く光った後、グリフォンがまとめて半透明の縁に包まれ、二秒後、深紅の焔に包まれる。焔は円の外に出ることはなく、円の中のグリフォンを骨まで焼き尽くすと、すぐに消えた。


 ひゅう。


 小さな口笛が聞こえ振り返ると、ハウザーが笑って秋良の肩をたたいた。


 「やるな」


 「‥……もう、聞かないのか」


 「何をだ?」


 「なんでそんなに強いのか、とか何者なのか、とか」 


 「聞いても無駄だろ?」


 あっさり言われて、逆に秋良のほうがとまどう。


 「何回聞いても答えなかった癖に」


 それを言われると困るのだが、それにしても、だからと言って何も聞かないでいいものか?と思うのだが、ハウザーは特に秋良が何者だろうともう気にしないことにしたらしい。いや、もともとあまり気にしていなかった気もするが。


 ともかくも、聞くだけ無駄だし、どうでもいいと思いきることにしたらしいのだ。つまり、志筑秋良というヒトの少年は、そういう生き物なのだと。秋良としてもそのほうが面倒な説明をしなくて済むし助かるのだが。


 「あ、あそう」


 説明しようにもうまく説明できないし、秋良としても今の状況がよくわかていないからハウザーが気にしないならそれでいいか、と思うことにした。


 「それならそれでいいや。んじゃ、宝箱開けますか。この部屋には目当ての人はいないようだし」


 そもそも、まだこの階にいるかどうかすら定かではないのだが。大体小部屋を開けたらもれなく魔物が出てくるのだ。本当に生きているのだろうか。なんかもう、行方不明者なんてどうでもいいんじゃないだろうか。これからの階数を考えるとつい、ため息が出る。


 「どれから開けるんだ」


 三つある宝箱、そのうちの一つにしか用はない。残りの二つは、まず一般的に生活していればお目にかかることのない高レベルのドラゴンが出てきてしまうのだ。秋良とて、なるべくなら出会いたくはない。ドラゴンは魔法もなかなかきかないし、うろこも非常に固いから剣撃もあまり有効ではないのだ。そうなると、かなりレベルの高い魔法を連続して使うしかないわけで、はっきり言って相手にするのは面倒なのである。 


 「どうしようかな」


 なんとか一発であたりを引く方法を、と考えて気がついた。アイテム【幸運のダイス】を使えばいいのだ。


 【幸運のサイコロ】は、その名の通り幸運を引き寄せるサイコロだ。これを振って「大当たり」がでてから賭けをすれば必ず勝つし、今回のようにランダムな宝箱は必ずあたりを引ける。だが、ダイスには四か所「大当たり」があり二か所「大外れ」がある。「大当たり」を引けばさまざまな幸運が舞い込んでくるが(ただし一回の「大当たり」に対して幸運一つだ)「大外れ」を引いてしまうと、お金とアイテムをすべて失ってしまう上に、レベルも二つさがってしまう。


 しかし、今回の場合、ハウザーにはレベルはないし、お金もアイテムも秋良が預かっておけばいい。そうしておけばおそらく「大外れ」が出ても大した被害はないだろう、おそらく。しかも事前に秋良がハウザーに【幸運の女神の加護】という幸運を二十パーセントの確率で引き寄せる魔法をかけておけばさらにばっちり、完璧だ。


 ということで、早速実行に移す秋良であった。


 







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