↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/28

13 不可解ですネ

 「ところで気になってることがあるんだけど」


 もうすぐで湯屋が見えるというところで、隣を歩くハウザーをちらりと見る。


 「なんだ」


 「リャーナの歳、ハウザーは知ってた?」


 「お、何だ、聞いたのか?まああの【魔女】の年齢はここいらじゃ有名だぜ?最も暗黙の了解ってやつで誰も口にしないから新参者は絶対だまされるんだが」


 「‥‥…【魔女】?」


 聞き捨てならない言葉が出てきたような。


 「あだ名だよ、あだ名。もっとも本人の前でそれを言う勇気のある奴はいないがな。だが考えても見ろ。人族より多少だが老けるのが早いといわれる猫人族だぞ。おかしいだろう、あの外見は。三十歳以上サバよんでも違和感のない見た目とか、ないから。ありえないから」


 だが現実に存在している。だからこその【魔女】なのだ。


 「ちなみにあえて忠告しといてやるが彼女の年齢は心の内に秘めておけ。言いふらすととんでもないことになるぞ」


 もちろんヒトの年齢を言いふらすような趣味はないが、とんでもないこととは何だろう。


 「知らん」


 「なんだそれ」


 「噂だよ。昔、彼女を見せものにしようとした輩も何人かいたんだがな、いつの間にか姿を消しちまった。んで、そのころからまことしやかな噂が流れ始めたんだ。彼女の逆鱗に触れるとそれはもう、身の毛もよだつ様な恐ろしい報復がまってるんだと」


 猫人族なのに、三十歳くらいの時もやはり若く、どう見ても十四、五(つまり今とあまり変わっていない)にしか見えなかった彼女をさらって見せものにしようとした奴が何人かいたのだが、その後、廃人になったとか、行方不明になっとか、南の国で奴隷になったとか‥……。


 「誰も真相を確かめてないのか?」


 「お前は馬鹿か」


 心底あきれたような顔で、ハウザーが秋良を見る。


 「そんな恐ろしいことできるはずもないだろう。そもそも本当だったらどうするんだ。怖さ倍増だぞ?あえてたしかめたい奴なんかいるか」


 それもそうですネ。しかし、語るハウザーの顔色がやや蒼く、恐怖にひきつっているのは…‥…


 「そんなことより」


 やや強引にハウザーが話を変える。湯屋も近いし、この話題を続けていたくはないのだろう。


 「これからどうするんだ?行方不明者がどこに行ったか検討ついているのか」


 「ああ、まあ。大丈夫だよ」


 でも危険なところだから準備はしっかり(主にハウザーが)して行こう、というと、ハウザーもうなずいた。


 「最近は魔物もやたらと強くなってるからな。特に回復アイテムはしっかりそろえておかないと」


 睡蓮から行方不明者の名前と職業もきき出したし、あとはリャーナにしばらく出かける旨を話して、装備を整えるだけだ。準備がすべて終わったら、ハウザーに栞に触れてもらって【幻惑の塔】へ飛ばしてもらえばいいのである。


 しかしながら気になることもあるにはある。


 睡蓮は、【幻惑の花】を客の一人からもらったと言っていたのだ。いったい誰が、この危険なアイテムを彼女に渡したというのか。効果を何も知らなくて、ただ綺麗だから渡した?それとも………


 すくなくともゲームの中では、このアイテムはそう簡単に手に入るものではなかった。ゲームの後半、それもいくつものイベントとクエストをクリアした後、四枚の【幻惑の花】をそろえ、四つのダンジョンをクリアするとすべてのクエスト、イベントをクリアしたものにだけ開かれる八つの特殊ダンジョンのうちの一つ、【幻惑の砂迷宮】へのカギが手に入る。つまりは、かなり重要なアイテムなのである。


 そんな重要ではあるが、結局のところ、カギを手に入れる以外はたいして役には立たない微妙なアイテム。そういえば、睡蘭を組み込んだイベントで報酬アイテムが、【幻惑の花】ジャスミンだったが、それが何か関係があるのだろうか?だが、睡蓮は客の一人にもらったと言っていた……


 秋良は一つ頭を振って、考えるのをやめた。


 「絶対禿げるって……」


 「誰が禿げるって?」


 「いやいやいや、ハウザーのことじゃないから」


 実は気にしていたのか、秋良の小さなつぶやきに素早く反応した彼。そういえばてっぺんのほうが少し薄く…・…?


 「まじまじ見るのはヤメロ」


 苦々しい口調で、着いたぞ、と秋良を湯屋の中へと促したかれの不幸は、間違いなく、秋良と出会ってかかわりあってしまったことだろう。


 何気なく、頭に手をやって少しばかり肩を落としている彼を見て、秋良は心の底から同情したのだった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。