彼女の変貌、俺の落胆
次の日、俺は友人の松浦と歩いてそのことを話していた。
「死ねばいいんじゃね」
「友人にそれはひどくないかなぁ?!」
こいつは中学からの友人、そして、俺の知られてはいけない秘密を知っている数少ない人物である。
「当たり前だろ、そんなギャルゲーみたいな告白のされ方しといてフルとか、だいたいお前彼女欲しいって言ってたんだから付き合えばいいじゃん、オタク趣味だってお前と会うかもよ?」
そう、俺は隠れオタクだ、アニメのDVDははまった奴なら全巻持ってるし、壁はポスターだらけという始末だ、スマホには隠れフォルダがあり萌え萌え系アプリで毎日ブヒブヒ言っている俺だ、だけどあれは・・・
「あれは断るってwあれと付き合ったら俺の今までの努力台無しじゃんw」
そんな会話をして教室に近づいて行くと教室から
「わかるーあの子かわいいよね!私も好きー」
と言う、聞いたとこもあるが聞いたこともない声が聞こえてきた。
・・・嫌な予感がする。
その嫌な予感的中のニュースは俺の入室とともに報道された。
「あ、義昭!おはよー!どうどう?髪切ったんだけど似合ってるかなぁ?」
走り寄って来た美しいアフガンハウンドのような女は・・・
奴だ、喋り方もちょいやんちゃ目で、髪を切り、セットしてある川愛の姿がそこにはいた。
「お、お前、マジで直してきたのかよ?!」
「うん!義昭が直したら付き合ってくれるって言ったから私、頑張って直したよ!」
マジでか?!一日だぞ?!たった一日で直してきたってのかよ?!
「これで付き合ってくれるよね?うれしいなぁ、よろしくね義昭!」
はきはきとした話し方で自分への好意を伝えてくる川愛
え、何こいつまじで川愛か?!髪を切って口調直しただけでこんなに可愛くなるものなのか人間って!
「お、おう、よろしくな・・・」
えへへ、と川愛はにやけている、こんなところは変わらないのかもしれないが。
「あ、チャイムなったから私席戻るね?後でいろいろお話しようね、義昭!」
そんなことを言って席に戻っていった。
昼飯時、俺は友達と飯を食っていた
「お前飯それで足りんのかよ(笑)」
「俺昼飯あんま食わないんだよね、ただそのせいでよく貧血になるんだけどさ(笑)」
「なにそれやばい(笑)ちゃんとご飯食べなよー」
なんてありきたりな会話をしていたら後ろから俺は腕への圧迫感とともにどす黒い区域を感じた。
「一緒にご飯食べよう?」
という疑問形と柔らかい口調に反比例して強い力で連れていかれていった・・・
「ちょ、ちょっと待てよ!なんなんだいきなり?最初は俺とあいつらで食ってたんだから飯なんて明日からでも・・・」
「義昭は・・・」
「あ?」
「義昭は私の彼氏でしょ?!最初に私の所きてよ!!」
・・・こいつはカップルをなんだと思っているのだろうか、そもそも一緒に食うカップルだなんて今日日少ないぞ?そんなんアニメでしか・・・
アニメ
アニメかぁ・・・!くっそこいつがキモオタということをついに忘れてしまっていた!
「んなアニメみてぇなこと出来るかっての!」
「あ!やっぱりアニメ知ってるんだね!あの義昭は元キモオタっていう噂は本当だったんうげぇ!」
あ、つい殴って気絶させてしまった・・・保健室行くか。
「うーん・・・はっ!!ここどこ?!」
「保健室だよ、お前が気絶したから連れてきてやったんだ」
まぁさせたのは俺なわけだが。
「ところでお前に質問がある、お前その情報どっからゲットした?人によっちゃぶん殴るが」
「?松浦君だよ」
「松浦くぅん?!」
「うん、教えてって言ったら、わ、わかりましたぁ↑あいつの秘密は隠れオタですぅ↑って」
・・・うん、俺はキモオタの恰好していた川愛にそんな返しをしちゃうお前が悲しいよ・・・
「おい、お前絶対ほかのやつにそれを言うんじゃないぞ!!言ったら別れっかんな!!」
「なんで?私もアニオタだし良いと思うけどなぁ」
「あのなぁ、俺の人種を見たらわかんだろ?ばれたらやばいの、あのグループにはいられなくなるんだよ!」
「・・・そんなことで友達じゃあなくなるのって友達なの?私がこんな格好で学校来ても友達はそのまま対応してくれたよ?」
こいつっ!!
「うっせぇよ!こっちはそれが楽しいんだからいいんだよ!だいたい、そっちは嫌われ者の集団でもう下はないんだろうけどこっちはちげぇんだ!黙っとけよ!!」
チャイムが俺を怒りから覚まし、二人を教室へと返した。
放課後に松浦と歩いていると後ろから聞くには気まずい声が聞こえてきた。
「義昭一緒に帰ろー?」
「やだ」
「死ね!リア充爆発しろ!」
「痛い!松浦脛を的確に狙うな!!」
なんだろ、この空気はいけない、見られたら終わる気がする。
「なんで!?彼女なんだから帰ろうよ!」
「俺はいっつも松浦と帰ってるの!なんでそこまでお前優先にしなきゃいけないんだよ!」
「いいよ、なんだよお前彼女と帰ればいいじゃん」
「松浦ぁ?!なんでそんな薄情なのかなぁ?!」
「ほら!松浦君もいいって言ってるしさ、一緒に帰ろう?」
「・・・わかった、ただしたまにだけだ普段は松浦と帰るけどなんかあるときだけはお前と帰ってやるよ」
「・・・うん!!!」
ぱぁ!と顔が雨上がりの空のように明るくなり手を引っ張ってえへへと笑っている。
松浦と涙ぐましい別れを心から惜しみつつ川愛と帰ることにした。
気まずい雰囲気が場に満ちる、そんな空気に耐えられず俺は口を開いていた
「なぁ」
「なに?」
「お前なんで俺を好きになったんだ?悪いけどお前との面識なんてほとんどなかっただろ?」
「うーん、いやね?ブックオンで義昭が嬉しそう中古ゲームを抱えてるの見たときに私と同類なんだなぁってなって、怖いだけだったのがなんか面白くてかわいそうな人にみえちゃって、それから見てたら好きになっちゃった」
見られてたのかぁ・・・死にたい・・・それにしても
「かわいそう?」
「うん、みんなの前で隠してさ、こそこそしてるのにあんなに嬉しそうにできるんなら、堂々としたらもっと楽しめるんだろうになぁって」
「それだけで、その憐みの精神で俺を好きになって一日で口調も直して、髪切って、セットの仕方も覚えたのか?」
「うん!私好きになったことに妥協はしたくないんだ!」
・・・なんだこいつ、普通に
「可愛いじゃあねえか」
「・・・えへへ、義昭初めて褒めてくれた!」
口にでてたぁ!!くっそ恥ずかしい、ナニコレ、なんかもう死にたい
・・・ちょっと待てよ、これならこいつのオタク脱却もできるんじゃないか?そしたらただのいい彼女になるし、俺の地位も以前と変わらなくなる!
「あーあ、これでオタクじゃなかったらn「それは無理」
「え?」
「それは無理だよ、言ったでしょ?私好きなことには妥協したくないの」
俺の彼女、真っ直ぐだなぁ・・・なんだろう、オタクを隠してなかった頃の自分を思い出す。
あの頃は、自分が好きなものを高らかに掲げておおっぴらにして純粋に楽しんでいた。
なんか
「俺とお前、存外似てるのかもな」
「?そうかな、そうは思わないけど」
一蹴されてしまった…
「じゃあ俺の家、ここだから」
「そうなの?じゃあ私も帰るね」
「送るか?」
「うんうん、義昭も疲れてるでしょ?大丈夫」
こいつは案外、しっかり者なのかもしれない。気が利くし。
そう思った矢先に川愛は駅へ向かい改札を通って行った。
前言撤回、こいつは阿保だ。




