悪魔な彼女と怠惰な彼氏
翌日の朝、川愛が待ち構えているのではないかという不安とは裏腹に松浦と二人で普段通り登校することができた。いつもの朝がこんなにもありがたいものだったとは・・・
「川愛、どうにかなんねぇかなぁ」
「なんだ藪から棒に」
俺の愚痴に即座に反応してくれる当たり松浦は仏なんじゃないかと思う。
「いやだってさ、考えてもみろよ、こっちはやめて欲しいって言ってんのにしつこくまとわりついてくるしさ」
「死ねば?」
「この前から親友に向かって辛辣すぎないかなぁ?!」
「え?」
「え?」
痛い・・・!親友からの何言ってんのこいつみたいな顔で見られるのすごい痛い・・・!
「いやさ!つらいんだって!隠してるのにオタク全開のやつに付きまとわれるのって!」
「わからなくはないけどもよ、いいじゃん、可愛くなったんだし」
そんな感じで平穏な朝を過ごしていた、だが平穏とはいつの世も続かないものである。
「あ、義昭~!やっと見つけた!」
50m先で悪魔が手を振ってるのが見えた。
「松浦、走ろう」
猛ダッシュした俺の50m8.2秒の健脚は見事に躍動する・・・知ってるか?運動音痴でもチャラ男にはなれるんだぜ?(いじられるのは必至)
俺の健闘空しく川愛の不満げな顔が目の前にはあった。
「なんで逃げるの?!」
「どうせお前一緒に行こうとか抜かすんだろ?嫌だよ!!」
「行ってやれよこの糞野郎死ね」
親友の冷たい視線と言葉で心がおれそうになりながらも抵抗しようと試みる、だがどうだろうか?完全にチャラ男1人と男オタク一人とこの前まで普通のやつなら避けていたやつのわちゃわちゃは、やばかろうそうだろう、そこで俺は、
「じゃあ二人とも仲良くな」
・・・二人を置いてほかの友達と行くことにした。遠くで二人の騒ぐ声が聞こえるが気にしていたらこちらが食われるので気にしない。
「美智子!助けて!いやマジで!!」
朝っぱらから女子に走って泣きつくチャラ男、いかがなものなのだろうか、俺はヤダ。
「え?ちょ!いきなり何?どうしたの?!」
「いや、ちょっと彼女(小声)に追われてさ」
すべてを察した憐みの表情でこちらを見てくる、こいつは察しがいいから助かる、今後もこの関係を保ちたいものだ。
「あー、川愛さんだっけ?いいじゃん、どうせ登校しろってせがまれたんでしょ?」
「あのノリ苦手なんだよ、そもそも、俺があんな奴とマジで付き合ったりすると思うか?きついって・・・」
「まぁ確かに二人が並んでるのは想像できないかなぁ(笑)、じゃああたしと一緒に行く?」
「マジで!?助かるわ、じゃあ行こうか」
あぁこういう会話だよ…この普通な会話が一番落ち着くんだ、あんな姦しい会話じゃなくて気楽な会話、実に落ち着く
「そもそもさ、なんで義昭は川愛さんと付き合うことにしたの?」
「・・・告られたのをダメなところ挙げて断ったら明日までに直すって言われてそれで・・・」
「直されちゃったんだ」
「いやだってよ?!直してくるとは思わねぇじゃん!一日だぞ?!」
愚痴をうんうんと返してくれるだけで心は落ち着くものだ、そうこうしているうちにうちの生徒の割合が増えてきた、やっぱり若い人たちが集まると五月蠅くなんなぁ、だなんてじじぃみたいなことを考えて教室につく、朝の教室ってのはクーラーがついてなくて暑いから嫌になる・・・
「え、じゃあ何?松浦君と川愛さん置いてきたの?」
「あの二人キャラ似てるから大丈夫だろ」
「不安だなぁあたしは、二人がくっついちゃうかもよ?」
それはそれで嬉しいのだが・・・まぁ松浦に女を取られるのは釈然としない。そういえば二人は大丈夫だろうか?川愛さんは知らんが松浦はコミュ障だぞ・・・
「義昭、なんで逃げたの・・・?」
皆さん、第六感・シックスセンスというのはご存知だろうか?まぁ虫の知らせみたいなことだと思っていただければいい、それが今世紀一番にざわついていた。
「あー、あのさやっぱり一人で歩きたい朝もあるっていうk「菊池さんと一緒に歩いてたよね」・・・はい」
後ろにいる赤い悪魔みたいな目をした川愛は昨日や今朝の目の輝きはなくなって完全に病み彼女見たくなっている、どうこの危機を回避するか・・・一緒に来た美智子にSOSのアイコンタクトを送ったら任せろ!みたいな目で見返してくれた、癒しだなぁほんとに・・・
「まぁまぁ、ごめんね?気が利かなくて、次からはちゃんと一緒に登校させるから」
「プリンカラコンデカ眼は黙っててください」
美智子ー!!くっそ、髪染め失敗したの気にしてたのにそこを的確に狙いやがって!!あぁ美智子が膝立ちでぴくぴくして。倒れないのは前髪命のJK特有のプライドからだろうか・・・
「大体、なんで義昭は私と一緒に登下校してくれないの!?」
「だってお前の評判地の底じゃん」
あ、膝から崩れ落ちた。やっぱ格好ちゃんとしたら地位が上がった気になるよなぁ・・・実のところ俺もワックスつけてピアスつけりゃリア充になれる気はしてたよ・・・うん・・・ただそうじゃあないんだ、違うんだよ川愛
「で、でもでも義昭と一緒にいたら私の地位も上がるかも!」
「ないな、ない」
「オタクも治るかも!」
オタクが治る、その言葉に俺は途轍もない魅力を感じた。それがほぼほぼの確立で不可能だし、こいつが治す気がないのもわかってる、でも、だとしてももしこいつのオタクを治すことができたのなら川愛玲奈はただの可愛い一途ないい彼女になるからだ。
「なあ、美智子」
「なに?」
「こいつをちょっとだけ俺らと一緒に行動させねぇか?」
「え”、あぁ・・・い、いいんじゃない、かな?」
最初のカエルがつぶされたときみたいな声から察するに嫌なんだろうなぁ・・・
「たのむ!ほら!もしかしたら川愛だってちゃんと話したら面白いやつかもしれないし、な!な?!」
「はぁ・・・わかったいいよあたしも嫌いなわけではないし、じゃあよろしくね?川愛さん」
「嫌ですプリンさん」
こいつ面倒くせぇ!!
「おい、じゃあこうしよう。プリンさんたちと仲良くできたら下校は一緒にしてやる」
「本当義昭?!・・・じゃあよろしくお願いしますプリンさん」
「プ、プリンさんはやめて欲しいかなぁ・・・ま、まぁよろしくね川愛さん!あ、玲奈って呼んだほうがいいよね!よろしく玲奈!」
「・・・はい、よろしくです。」
ゲロを飲み込めって言われた時くらいの顔をしていて本当にわかってるのか不安になるな…
「じゃあアドレスでも交換しよっか!」
アドレスかぁ・・・そういえば俺
「そういえば俺って川愛とアドレス交換してねぇな」
・・・え、何その冷たい目やめて?心折れるよ?
「玲奈はなんであの屑と付き合ってるの?」
「好きだからですかね?」
「義昭、あんたこんないい彼女に申し訳ないと思わないの?3回は死んだら?」
目の前では女子二人の会話に花が咲いてる、俺のファインプレーと心を犠牲にして仲良くなれたのならまぁ良しとしよう。
「わかった、俺とも交換しよう」
「「当たり前!」だよ-!」
なんだろう、中学のころアドレス交換渋ってた子ってこんな気分だったんだろうなぁ、ごめん、斎藤さん。




