フェレライ
「施設長、何故この二人を監視するんですか?」
雨宮桜と春が暮らしていた施設。その職員が、施設長に疑問を投げかけた。
「あー、やはり親を殺されているからね。心配でね」
施設長は笑顔で答えた。
しかし、その右腕は失われていた。
「…………分かりました」
職員は納得したように返事をしたものの、内心では疑問を抱いていた。
親を殺された子供なら、他にもいるはずなのに。
そう思いながら、職員は部屋を後にした。
職員が去ったのを確認すると、施設長は小さく呟いた。
「私に気づいているのに、施設に居続けていたとか。舐め過ぎじゃないかなぁ」
そして、かつての宿敵の名を口にする。
「フェレライ」
フェレライ。
三年前を境に、被害報告が途絶えたゲヒュール。
確認されている目撃情報は一つだけ。
何故なら、遭遇した者はほとんど生きて帰らないからだ。
そして、そのフェレライこそが、春のかつての呼び名だった。
「だが、謎だな。恐怖心を満足に喰えていない。明らかに弱体化している」
施設長は失われた右腕に目を向ける。
「右腕のない私でも殺せると思うが……」
少し考えた後、施設長は続けた。
「まぁ、潜伏されても厄介だ。狩るのは後だな」
彼はかつて英雄と呼ばれ、フェレライと遭遇しながらも唯一生き残った人間だった。
そして三日後。
雨宮春と桜を監視していた職員が、原因不明の死を遂げた。
それを受け、施設長は監視を打ち切り、フェレライを狩るための準備を始めた。




