猫ちゃん!
「あ! 猫ちゃん可愛い!」
雨宮桜は、白くて人懐っこい猫を見つけると、嬉しそうに撫で始めた。
「ゴロゴロ言ってるー。お腹も見せてるし、可愛いなぁ」
猫は気持ちよさそうに喉を鳴らし、桜にお腹を見せている。
「飼おうかな……いや、ペットは禁止なんだった」
そんな桜の様子を見ていた春が、ふと口を開いた。
「桜、そいつ殺すから離れて」
「春ー、なになに? 嫉妬?」
雨宮桜が冗談めかして振り返った、その瞬間だった。
猫が突然牙を剥き、桜に襲いかかった。
しかし、春は慌てることなく、ナイフを振るうような動作を見せた。
次の瞬間、猫の体は弾き飛ばされた。
「え……え?」
雨宮桜は何が起きたのか分からず、呆然と立ち尽くす。
「こいつ、同種だよ。多分だけど、ペットとして飼われて、飼い主が油断したところで突然殺すんだろうね。そのときに向けられる感情が好きなんじゃないかな」
春は猫を見据えながら、淡々と説明した。
雨宮桜は逃げなければと思っていた。けれど、恐怖で足が動かない。
「まぁ……明らかに敵意を向けてるし」
春は楽しそうに笑った。
「殺し合おうか!」
猫は警戒するように春を睨みつけていた。
先ほど、何も持っていないはずの相手に弾き飛ばされた。しかも、額には切り傷までついている。
そんな猫を嘲笑うかのように、春は人差し指を猫へ向けた。
「バン」
乾いた音が響く。
猫の額には穴が空き、そのまま地面に倒れ込んだ。
「帰ろっか、桜」
春が振り返る。
しかし、雨宮桜は何も答えなかった。
「うーん……もう少し時間を置いてからかな」
春はそう呟き、雨宮桜の様子を窺った。




