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ゲヒュール3  作者: スペクトラム


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4/20

なぜ殺すのか

「殺人事件かぁ……」

雨宮桜はニュースを眺めながら、ぽつりと呟いた。

「まぁ、同種がいるから当たり前かな」

春は特に興味もなさそうに答える。

「けど、春は人を殺さないじゃん」

「え?」

春は不思議そうに桜を見た。

「あ……ここ数年は、だけど」

「僕たちは感情を喰らうからねー。恐怖心を糧にして生きてるんだ」

「……あれ? 春は?」

「んー? 桜って、なんやかんや僕のことを怖がってるからね。最低限、生きていく分には困らないよ!」

「…………」

桜は何も答えなかった。

「ん? どうしたの?」

「あ……なんでもない。けど、感情なら何でもいいんじゃないの?」

「恐怖心以外の感情は嗜好品かな。調味料みたいなもので、主食にはならないんだ」

「そっか……だからゲヒュールは人を殺すんだ……」

「まぁ、殺さずに怖がらせることもできるけどねー。僕も基本的には、殺すのは相手の感情が麻痺して、味がしなくなってからかな」

「……私のことも、そのうち殺すの?」

「桜は特別だよ!」

春はいつものように、屈託のない笑顔で答えた。

しかし、雨宮桜は知っている。

春が自分を特別扱いするのは、自分が向ける愛情や、春の言動に喜ぶときの感情を気に入っているからだ。

それは人間が考えるような愛情とは違う。

だからこそ、雨宮桜は春の言葉を素直に喜べなかった。

「あれ? おかしいな」

春は首を傾げた。

いつもなら喜んでくれるはずなのに。

思い通りの感情が返ってこないことを、春は不思議に思っていた。

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