価値観
「ここが新居かー。狭いね!」
部屋を見回した春が、率直な感想を口にした。
「春……そういうこと言わないの。せっかく用意してくれたんだから」
雨宮桜がたしなめると、春は部屋の外へ視線を向けた。
「んー……けど、ここら一帯は同種が餌場としてマーキングしてるなー」
「もしかして、危ない?」
「かもね! マーキングされた餌場に入るってことは、食料を横取りするのと同じだから。殺されても文句は言えないよ」
「えー……どうしよう」
雨宮桜が不安そうに呟くと、春はあっけらかんと答えた。
「ん? 襲ってきたら殺すよ」
「仲間なんじゃないの?」
「それが?」
「……殺すの?」
「襲いかかってきたらね。向こうが何もしなければ、僕も殺さないよ」
桜は返す言葉に迷い、黙り込んだ。
そんな桜を見て、春は不思議そうに首を傾げる。
「うーん……なんで不満なのか分からないなぁ」
春は少し考えてから、続けた。
「餌場を荒らされるのが不快だから殺すのも、殺されたくないから相手を排除するのも、別にどっちも悪いことじゃないでしょ?」
「えっと……私たちがいなくなればいいんじゃないかな」
「なんで?」
「いや、だって……私たちが我慢すればいいじゃん」
雨宮桜の言葉に、春はきょとんとした。
「ん? それなら、向こうが我慢すれば解決だね!」
「あー……うん。そうなのかな?」
雨宮桜は曖昧に頷いた。




