鈴の音
ベギーデはベンチに座り、足をプラプラと揺らしていた。
ここで待ち合わせをしているのだ。
どうやら、待ち人が来たらしい。
気絶した男が、ベギーデの目の前に投げ飛ばされる。
「お兄さん、怖いー」
ベギーデは男を見下ろしながら、楽しそうに声を上げた。
「害獣に怖がられるなら本望だな」
犬飼がベギーデの前に立つ。
彼はベギーデを狩りに来たのだ。
ベギーデの出没をきっかけに辞表を破られた犬飼は、現在、霧崎楓の支援を受けながら活動している。
「害獣だぞー。そのカッコいい銃でやっつけるの?」
ベギーデは犬飼の手元にある銃を指差した。
犬飼は銃を構えるため、両手を前に伸ばす。
――チリン。
鈴の音が鳴った。
直後、背後から手を回される感触がした。
「えへへ、いい匂いするー」
ベギーデが犬飼の背後に回り込み、おんぶされるような体勢になっていた。
犬飼の首元に顔を寄せ、匂いを嗅ぎながら足をパタパタと揺らしている。
「あれ? フェレ君のマーキングの匂いだ」
犬飼はベギーデから目を離していない。
それなのに、いつの間に背後に現れた?
――何故?
だが、そんな思考は今はどうでもいい。
どうせ、現段階の情報では答えに辿り着けない。
犬飼はベギーデの背後にあるマンションを指差した。
「あのマンションだったよな。お前が人を殺した場所は」
ベギーデは指差されたマンションへと視線を向ける。
その直後。
ベギーデの頭部に衝撃が走り、その身体が吹き飛ばされた。
狙撃したのは、約2キロ先にあるマンションの屋上に陣取っていた霧崎紬だった。
犬飼とベギーデが接触している状況での狙撃。
それを実行できたのは、自分の腕を信じているからこそだ。
犬飼は、吹き飛ばされたベギーデを自分の銃で蜂の巣にしようと、その方向へ銃口を向ける。
「凄いね! びっくりしちゃった!」
突然、犬飼の頭に手が置かれた。
ベギーデが、宙にプカプカと浮かびながら犬飼の頭を撫でていた。
その顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「じゃあね!」
――チリン。
鈴の音が鳴る。
その言葉を最後に、ベギーデの姿は消えた。




